好事家

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三字熟語
好事家
(こうずか)

4文字の言葉こ・ご」から始まる言葉
好事家 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

誰も見向きもしないような古い機械の内部構造に魅了されたり、地図にも載らないような辺境の廃村を巡ることに情熱を注いだりする。
周囲からは「変わった趣味だ」と不思議がられることもありますが、本人にとってはそれが何物にも代えがたい至福の時間なのです。
そんな、風変わりな物事や風流な趣味を好み、熱心にたしなむ人のことを、
「好事家」(こうずか)と言います。

意味

「好事家」とは、物好きな人、あるいは風流な事柄を好んで熱中する人を指します。
単に趣味を持っているだけでなく、一般的ではないニッチな分野や、芸術・骨董といった奥深い世界に精通している人に対して使われます。
「好事」という言葉自体が「物好き」や「風流な事柄」を意味しており、そこに人を表す「家」がついて成立した言葉です。

語源・由来

「好事家」の語源は、古代中国の言葉である「好事者(こうずしゃ)」にあります。

もともと中国では、他人のことに口を出したり、余計な世話を焼いたりする「お節介な人」を指す、やや否定的な意味で使われていました。
しかし、日本に伝わってからは意味が変化し、平安時代以降、和歌や茶の湯などの「風流な世界」にのめり込む人を指すようになりました。

世俗的な利害や損得を忘れ、ただ自分の「好き」という感情に従って、美しいものや珍しいものを追求する。
そのような江戸時代の文人や茶人たちの生き様が投影され、現在ではこだわりを持つ趣味人を指す肯定的なニュアンスを含んだ言葉として定着しました。

使い方・例文

世間一般の流行とは一線を画し、独自のこだわりを持って物事を楽しんでいる人を形容する際に使われます。

例文

  • 全国の珍しいマンホールの蓋を撮影して回るとは、彼もなかなかの好事家だ。
  • 採算を度外視して作られたこの奇妙な時計は、一部の好事家の間で高く評価されている。
  • その古書店には、絶版になった稀覯本(きこうぼん)を求める好事家たちが集まってくる。
  • 世間的には無価値に見える石ころでも、好事家の目から見れば宝の山に見えることもある。

文学作品・メディアでの使用例

『草枕』(夏目漱石)
都会の喧騒を離れ、美学を追求する旅を描いた漱石の代表作です。
風流を解し、趣のある場所を訪れる人々の様子を表現する際に用いられています。

好事家は昔から、この辺を眼に着けて、折々は杖を引いたものと見える。

誤用・注意点

「好事家」を使う際には、読み方とニュアンスに注意が必要です。

  • 読み方は「こうずか」が一般的です。
    「こうじか」と読み間違えられることが多いですが、熟語の慣用読みとして「ず」となる点に注意しましょう。
  • 本来は「風流な趣味人」を称える言葉ですが、文脈によっては「物好きな人」「変わった人」という皮肉混じりのニュアンスで使われることもあります。
    目上の人に対して使う場合は、相手がその趣味に誇りを持っていることを前提とし、敬意を込めて用いるのが無難です。

類義語・関連語

「好事家」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 数寄者(すきしゃ):
    茶の湯や生け花など、風流な芸道に深く傾倒している人。
  • 物好き(ものずき):
    変わったことや、普通は好まないようなことに興味を持つこと。
  • (つう):
    ある特定の分野に非常に詳しく、その道の機微(きび)を解している人。
  • マニア
    ある一つの物事に熱狂し、専門的な知識や収集欲を持っている人。

対義語

「好事家」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 俗物(ぞくぶつ):
    名誉や金銭などの世俗的な利害にしか関心がなく、風流を解さない人。
  • 無関心(むかんしん):
    物事に対して興味や注意を払わない様子。
  • 凡俗(ぼんぞく):
    ごく平凡で、高尚な趣味や志を持たないこと。

英語表現

「好事家」を英語で表現する場合、愛好家や専門的な審美眼を持つ人を指す言葉が使われます。

Dilettante

イタリア語の「楽しむ」に由来する言葉です。
「芸術愛好家」
専門家ではないものの、芸術や学問を深く愛する人を指します。

  • 例文:
    He is known as a dilettante of ancient coins.
    (彼は古銭の好事家として知られている。)

Connoisseur

深い知識と優れた鑑識眼を持っている人を指します。
「(芸術や食の)鑑定家・目利き」
単に好きなだけでなく、その分野に対して高い審美眼を持っているニュアンスです。

  • 例文:
    A connoisseur like him would appreciate this rare painting.
    (彼のような好事家なら、この珍しい絵画の価値がわかるだろう。)

読み方に残る古い響き

「好事家」をなぜ「こうずか」と読むのでしょうか?
通常、「事」という漢字は「じ」や「こと」と読みますが、この言葉においては伝統的に「ず」と濁って発音されます。

これは「連濁(れんだく)」の一種ではなく、平安時代から続く「呉音(ごおん)」と呼ばれる古い読み方が定着したものです。
仏教用語や古い慣用句には、このように現代の標準的な読み方とは異なる響きが残っていることが多く、「好事魔多し」(こうじまおおし)ということわざでは「じ」と読みますが、人を指す「好事家」の場合は「ず」と読むのが一般的です。

こうした読み方の微細な違いにまでこだわること自体が、ある種の「好事家」的な楽しみと言えるかもしれません。

まとめ

「好事家」は、効率や損得が優先されがちな現代において、あえて「無用の用」を楽しむ余裕を持つ人を指す言葉です。
誰も見向きもしないものに価値を見出し、自分の感性を信じて追求するその姿は、ある意味で非常に贅沢で豊かな生き方と言えるでしょう。
もしあなたが周りから「物好きだね」と言われるような趣味を持っているなら、それは立派な好事家への第一歩かもしれません。
自分の「好き」を突き詰めることは、人生に彩りを添える大切な要素なのです。

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