災害や大きなトラブルに見舞われ、誰もが動揺して立ち尽くしているとき。
一人毅然(きぜん)として前を向き、的確な指示を飛ばして周囲を鼓舞する女性がいます。
そんな、心がしっかりしていて男性に負けないほどの気概(きがい)や頼もしさを持つ女性を、
「女丈夫」(じょじょうふ)と言います。
意味
「女丈夫」とは、気性がしっかりしていて、男性に負けないほど勇ましく頼もしい女性を指す言葉です。
「丈夫(じょうぶ)」という言葉が本来「立派な成人男性」を意味することから、それに匹敵するほどの精神的な強さや決断力、実行力を持つ女性を称えて用いられます。
単に気が強いだけでなく、周囲を安心させるような安定感やリーダーシップを伴う場合に使われる肯定的な表現です。
語源・由来
「女丈夫」の語源は、古代中国における「丈夫(じょうぶ)」という言葉の成り立ちにあります。
「丈」は長さを表す単位であり、周の時代には約225センチメートルを一丈としていました。
それほどの身長を持つ立派な成人男性を「丈夫(じょうふ)」と呼び、そこから「強くてしっかりした人」を指すようになりました。
これに「女」をつけることで、男性に劣らぬ精神的・身体的な力強さを持つ女性を形容する言葉として成立しました。
中世から近世にかけての武家社会や、明治・大正時代の文学においても、自立した芯の強い女性(烈女など)を称賛する言葉として広く浸透しました。
使い方・例文
困難な状況下でリーダーシップを発揮する女性や、家庭や組織を力強く支える女性に対して用いられます。
例文
- 倒産寸前の会社を一人で立て直した彼女は、業界でも有名な女丈夫だ。
- 祖母は十人の子供を育て上げた女丈夫で、今でも家族の精神的支柱だ。
- 混乱する現場を落ち着かせたのは、若い女性リーダーの女丈夫な振る舞いだった。
- 彼女は女丈夫として知られ、不当な要求には決して屈しない強さを持っている。
文学作品・メディアでの使用例
『金色夜叉』(尾崎紅葉)
明治時代に爆発的な人気を誇った小説です。登場人物の性格や、困難に立ち向かう女性の気性を表現する際にこの言葉が使われています。
「その代わりにお前さんは、また大変な女丈夫におなりだね。」
誤用・注意点
「女丈夫」は優れた精神性を称える言葉ですが、現代の文脈では以下の点に留意が必要です。
- 「男性に負けない」という比較が前提にあるため、相手によっては「女性であることを特別視されている」と受け取られる可能性があります。
- 現代のビジネスシーンでは、性別を問わない「リーダーシップがある」「芯が強い」といった表現が選ばれることも増えていますが、伝統的な美学や敬意を表す際には依然として重みのある言葉です。
また、「お転婆(おてんば)」のように「騒がしい」「落ち着きがない」という意味は含まれず、あくまで精神的な自立心や安定感を指す言葉です。
類義語・関連語
「女丈夫」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 女傑(じょけつ):
知恵と勇気に優れ、男性をも凌(しの)ぐほどの活躍をする女性。 - 烈女(れつじょ):
節操が固く、自分の信念を貫くために命を懸けるほどの強い女性。 - 巾幗(きんかく):
女性が用いる頭巾(ずきん)のこと。転じて、女丈夫の雅(みやび)な表現。 - 鉄の女(てつのおんな):
意志が非常に強く、妥協を許さない毅然とした女性リーダーの比喩。
対義語
「女丈夫」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 弱女(よわめ):
弱々しく、自分一人では決断や行動ができない女性。 - 弱気(よわき):
心が弱く、物事にひるみやすい様子。 - 嬌娘(きょうじょう):
なよなよとしていて、か弱く美しい女性(古風な表現)。
英語表現
「女丈夫」を英語で表現する場合、精神的なタフさや勇ましさを表す言葉が選ばれます。
A strong-minded woman
「意志の強い女性」「芯のしっかりした女性」
現代英語で最も一般的に、自立した強い女性を指す際に使われる表現です。
- 例文:
She is a strong-minded woman who built her own business.
(彼女は自らの事業を築き上げた女丈夫だ。)
Amazon
「女戦士」「勇ましい女性」
ギリシャ神話に登場する部族アマゾネスに由来し、身体的、精神的に非常に逞しい女性の比喩として使われます。
- 例文:
In the crisis, she acted like a true Amazon.
(危機の中で、彼女は真の女丈夫のように振る舞った。)
巾幗(きんかく)の気概
「女丈夫」の類義語に「巾幗」という言葉があります。
これは古代中国で女性が被った髪飾りのついた頭巾を指しますが、面白い逸話があります。
三国時代の諸葛孔明(しょかつこうめい)が、戦いを避けようとするライバルの司馬懿(しばい)に対し、「戦わないのは女と同じだ」と挑発するために、この「巾幗(女性の服飾)」を送りつけたというエピソードです。
当時の男性社会では侮辱の意味もありましたが、後に「巾幗の英(きんかくのえい)」と言えば、男性に勝る才能や勇気を持った立派な女性を指す高潔な言葉へと変化しました。
「女丈夫」という言葉もまた、歴史の中で女性が果たしてきた力強い役割への敬意が凝縮されたものと言えるでしょう。
まとめ
「女丈夫」という言葉は、性別を超えて一人の人間として「芯が通っていること」の尊さを教えてくれます。
周囲が不安に揺れるとき、静かに、しかし力強く立ち上がるその姿は、いつの時代も人々に勇気を与えてきました。
自分の中に譲れない信念を持ち、しなやかに困難を乗り越えていく。
そんな現代の「女丈夫」たちの存在は、私たちの社会をより明るく、頼もしいものへと変えていく原動力になることでしょう。





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