故郷を離れて努力を重ね、いつか成功して胸を張って帰りたい。そう願ったことはありませんか?
「錦を着て故郷へ帰る」は、まさにそんな夢が叶った瞬間の、輝かしい姿を表す言葉です。
この言葉は、単に豪華な服を着て帰るという意味だけでなく、努力が報われ、名誉や地位を得て故郷の人々にその成果を報告するという、深い達成感と誇りを含んでいます。
「錦を着て故郷へ帰る」の意味・教訓
「錦を着て故郷へ帰る(にしきをきてこきょうへかえる)」とは、出世したり、大きな成功を収めたりした人が、立派な姿になって故郷へ帰ることを意味します。
「錦(にしき)」とは、金糸や銀糸、様々な色糸で美しい模様を織り出した高級な絹織物のことです。古くは富や高い身分の象徴でした。
このことから、立派な「錦」の衣装を着て帰る姿は、成功して富や名誉を手に入れたことの証とされ、故郷の人々への何よりの報告となる、という教訓や願望が込められています。
「錦を着て故郷へ帰る」の語源
この言葉は、中国の歴史書『史記』にある故事に由来します。
秦を滅ぼした後、楚の武将・項羽(こうう)は故郷の江東に帰ろうとしました。しかし、部下は都に留まるよう進言します。それに対し項羽は「富貴(ふうき)にして故郷に帰らずんば、錦を着て夜行くがごとし(成功して故郷に帰らないのは、錦を着て暗い夜道を歩くようなもので、誰も気づいてくれない)」と言いました。
この言葉が元になり、成功して故郷へ帰ることを「錦を着て故郷へ帰る」または「衣錦還郷(いきんかんきょう)」と言うようになりました。
「錦を着て故郷へ帰る」の使い方と例文
現代では、オリンピック選手がメダルを持って故郷に凱旋したり、有名なアーティストが地元でコンサートを開いたりするなど、分野を問わず大きな成功を収めた人が故郷に戻る際に使われます。また、そこまでの大成功でなくとも、都会での就職や事業が軌道に乗り、自信を持って帰省する際などにも、比喩的に使われます。
例文
- 「彼は医者になるという夢を叶え、とうとう『錦を着て故郷へ帰る』ことになった。」
- 「オリンピックで金メダルを獲得した彼女は、まさに『錦を着て故郷へ帰る』凱旋パレードを行った。」
- 「若き日の苦労を知る祖母は、彼が『錦を着て故郷へ帰る』日を誰よりも待ち望んでいた。」
類義語・関連語
- 衣錦還郷(いきんかんきょう):
「錦を着て故郷へ帰る」を四字熟語にしたもので、意味は全く同じ。 - 故郷へ錦を飾る(こきょうへにしきをかざる):
「錦を着て故郷へ帰る」とほぼ同じ意味で使われる、日本で生まれた表現。「錦を故郷に飾る」とも言います。 - 凱旋(がいせん):
戦いなどに勝って、意気揚々と帰ること。
対義語
「錦を着て故郷へ帰る」の直接的な対義語となる定型の故事成語はありませんが、状況や心境が反対の言葉としては以下のようなものがあります。
- 面目ない(めんぼくない):
恥ずかしくて顔向けできないさま。成功とは逆に、失敗したり期待を裏切ったりして故郷に帰れない心境。 - 合わせる顔がない(あわせるかおがない):
申し訳なさや恥ずかしさから、相手に会うことができない状態。 - 失意の帰郷(しついのききょう):
夢や目標が叶わず、がっかりした気持ちで故郷に帰ること。
英語での類似表現
return home in triumph
- 意味:「大勝利のうちに故郷へ帰る」
- 解説:”triumph”(勝利、大成功)という言葉が、「錦を着る」に相当する成功の度合いを表します。
- 例文:
The victorious army returned home in triumph.
(勝利した軍隊は、意気揚々と故郷へ帰還した)
return covered in glory
- 意味:「栄光に包まれて帰る」
- 解説:”covered in glory”(栄光に覆われて)という表現で、大きな名誉を得て帰る様子を示します。
- 例文:
The champion returned covered in glory after winning the world title.
(チャンピオンは世界タイトルを獲得し、栄光に包まれて帰国した)
まとめ – 「錦を着て故郷へ帰る」から学ぶ知恵
「錦を着て故郷へ帰る」は、単なる成功物語ではなく、自分を育ててくれた故郷や人々への感謝、そして自分の成長を報告したいという人間の自然な感情を表した言葉です。
故郷を離れて何かに挑戦する時、この言葉は「いつか胸を張って帰るんだ」という強いモチベーションを与えてくれるかもしれません。努力が実を結び、大切な人々に良い報告ができる日は、何物にも代えがたい喜びをもたらしてくれるものですね。








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