意味
「錦を着て故郷へ帰る(にしきをきてこきょうへかえる)」は、出世したり成功したりして、立派な姿で故郷へ帰ることです。
錦とは、金糸や銀糸を用いて美しい模様を織り出した高級な絹織物を指します。
かつては富や高い身分の象徴であったため、それを身にまとって故郷へ戻る姿が成功の証とされています。
語源・由来
中国の歴史書『南史』に見える言葉に基づきます。
南朝梁の武帝が、臣下を故郷の地方長官に昇進させたとき、「錦の着物を着て故郷に帰り、母に孝行を尽くしなさい」という趣旨の言葉をかけたと伝えられます。
一方、楚の武将・項羽は「富貴を得て故郷に帰らないのは、着飾って暗い夜道を歩くようなもので、誰も気づいてくれない」と語ったとされ、こちらは反対の意味の「錦を衣て夜行くが如し」のもとになりました。
使い方・例文
「錦を着て故郷へ帰る」は、大きな目標を達成し、成功者として地元へ戻る場面で使われます。
- 都での厳しい修行を乗り越え、ついに錦を着て故郷へ帰る。
- 世界大会で優勝という素晴らしい結果を手に、錦を着て故郷へ帰る。
- 新たに立ち上げた事業を成功させ、錦を着て故郷へ帰る日が来た。
類義語・関連語
「錦を着て故郷へ帰る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 故郷へ錦を飾る(こきょうへにしきをかざる):
成功を収め、立派な姿で故郷へ帰るという意味です。 - 衣錦還郷(いきんかんきょう):
錦を着て故郷へ帰るという言葉を四字熟語で表したものです。 - 凱旋(がいせん):
戦いや競技などに勝利し、成功を収めて帰ることを指します。
「錦を着て故郷へ帰る」と「故郷へ錦を飾る」の違い
どちらも成功して地元へ戻ることを意味する同義語ですが、言葉の成り立ちとニュアンスに違いがあります。
| 語句 | 由来 | 焦点・ニュアンス |
|---|---|---|
| 錦を着て故郷へ帰る | 中国の故事 | 成功した本人の立派な姿 |
| 故郷へ錦を飾る | 日本で派生 | 故郷への恩返しや誉れを添えるニュアンスがより強い |
英語表現
return home in triumph
意味:大勝利のうちに故郷へ帰るというニュアンスを持つ表現です。
The victorious army returned home in triumph.
(勝利した軍隊は、意気揚々と故郷へ帰還しました。)
return in glory
意味:栄光のうちに帰るという、大きな名誉を得た状態を表します。
The champion returned in glory after winning the title.
(チャンピオンはタイトルを獲得し、栄光のうちに帰国しました。)
反対の語のもとになった項羽の言葉、『史記』では錦でなく繡
項羽のこの言葉は、『史記』項羽本紀では次のようになっています。
富貴不歸故鄉,如衣繡夜行,誰知之者!
(富貴になって故郷に帰らないのは、繡の衣を着て夜道を行くようなもので、誰も気づいてはくれない。)
着ているのは錦ではなく、刺繍をほどこした衣です。
同じ話を載せる『漢書』の陳勝項籍伝では、ここが「錦」の字になっています。
富貴不歸故鄉,如衣錦夜行。
(富貴になって故郷に帰らないのは、錦を着て夜道を行くようなものだ。)
「錦を衣て夜行くが如し」の「錦」は、この『漢書』の字と同じです。










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