知らぬが仏

スポンサーリンク
ことわざ
知らぬが仏
(しらぬがほとけ)

7文字の言葉し・じ」から始まる言葉

SNSの通知には目もくれず、好きな本に没頭する静かなひととき。
もしその通知を確認して、自分への辛辣な言葉を目にしてしまったら、その穏やかな時間は瞬く間に失われてしまうでしょう。
真実を知らずにいるからこそ守られる心の平穏を、「知らぬが仏」(しらぬがほとけ)と呼びます。

意味・教訓

本当のことを知れば腹が立ったり悩んだりするが、知らなければ仏のように穏やかな気持ちでいられるということ。

また、周囲で起きている悪い事態や、隠された真実を知らずに、のんきに構えている人を皮肉る際にも使われます。

語源・由来

「知らぬが仏」の語源は、仏教的な平穏な境地を「知らないこと」に結びつけた江戸時代の俗言にあります。

この言葉は、江戸時代に普及した「江戸いろはかるた」の「し」の札に採用されたことで、庶民の間へ広く定着しました。

特定の出典となる物語があるわけではありませんが、人間が苦しむ原因を「煩悩(知ることで生まれる執着や怒り)」と捉える仏教観が背景にあります。
嫌な事実を知らなければ心が乱されないという、逆説的な心理を言い当てた表現です。

使い方・例文

真実を知らない方が幸せであるという「処世術」として、あるいは事態を把握していない人を「冷やかし」たり「同情」したりする場面で使用されます。

例文

  • 裏での悪口を知らずに、彼と仲良く話しているのはまさに知らぬが仏だ。
  • 賞味期限が昨日までだったと気づかずに食べたが、腹も壊さず知らぬが仏だった。
  • 隠し味に嫌いなレバーが入っていると知らず、美味しいと完食した。
  • テストの平均点が予想よりずっと低いことを知らない弟は、今も上機嫌で遊んでいる。

文学作品での使用例

『吾輩は猫である』(夏目漱石)

猫である主人公の「吾輩」が、人間が自分の欠点や滑稽さに無自覚なまま、平然と生きている様子を観察して評する場面で登場します。

人間は角のある事を知らないで、角の御蔭で生きている。……知らぬが仏とはこの事であろう。

誤用・注意点

この言葉は「知識を得るための努力を怠ること」を推奨する意味ではありません。あくまで「知ると不幸になる情報」に対して使われるものです。

また、当事者に向かって直接「あなたは知らぬが仏ですね」と言うのは、「あなたは何の事情も分かっていない能天気な人だ」という侮辱になりかねません。
基本的には自分自身に言い聞かせるか、第三者の客観的な状況に対して用いるのが無難です。

類義語・関連語

「知らぬが仏」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 知らぬが花(しらぬがはな):
    実情を知らないからこそ、想像が膨らんで実際より美しく見えること。
  • 聞かぬが花(きかぬがはな):
    話を聞いて真相を知ってしまうより、知らないままの方が夢があって良いということ。
  • 寝耳に水
    全く予期していなかった出来事に驚くこと。

対義語

「知らぬが仏」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥
    知らないことを聞くのはその場だけ恥ずかしいが、聞かずにいれば一生恥をかくことになるという教え。
  • 後悔先に立たず
    事が終わった後に悔やんでも取り返しがつかないこと。知らないままでいたことが、後で致命的な失敗につながるような状況で使われます。

英語表現

「知らぬが仏」を英語で表現する場合、以下の定型句がよく使われます。

Ignorance is bliss

「無知は至福である」という直訳から、知らない方が幸せであるという意味で使われます。

  • 例文:
    I didn’t check the calories of this pizza. Ignorance is bliss.
    (ピザのカロリーは確認しなかったよ。知らぬが仏だね。)

What you don’t know won’t hurt you

直訳すると「あなたが知らないことは、あなたを傷つけない」となり、事実を知らない方が心穏やかでいられることを示唆します。

現代における背景

情報の溢れる現代社会において、この言葉は「デジタルデトックス」の重要性と重なる部分があります。
SNSで他人の贅沢な暮らしや自分への批判を容易に知ることができる今、あえて「情報を遮断する」ことが、心の平穏(仏の境地)を保つための処世術として見直されています。

まとめ

「知らぬが仏」は、すべてを知ることが必ずしも幸せにつながるわけではないという、人間心理の本質を捉えた教えです。

もちろん、学ぶべきことや身を守るために必要な情報は知っておかなければなりません。
しかし、心の安らぎを損なうだけの不要な情報については、むしろ「知らずにおく」という選択も、情報が溢れる今の時代を生きる上での一つの知恵と言えるでしょう。

スポンサーリンク

コメント