何度言っても右から左へ受け流されてしまう、暖簾に腕押しで張り合いがない。
そんな徒労感を感じたことはないでしょうか。
人の忠告や意見を聞いても、全く気にせず聞き流してしまう態度を、
「馬の耳に風」(うまのみみにかぜ)と言います。
相手に響かない虚しさを表す際によく使われる言葉です。
意味
「馬の耳に風」とは、人の意見や批評を全く心に留めず、聞き流してしまうことのたとえです。
他人が一生懸命に忠告したり評判を立てたりしても、当の本人は一向に気にかけず、反応がない様子を指します。
語源・由来
「馬の耳に風」の由来は、中国の有名な詩人・李白(りはく)の詩にあります。
李白が詠んだ『答王十二寒夜独酌有懐(王十二の寒夜独酌懐い有るに答う)』という詩の中に、「東風(春風)が馬の耳を吹き抜けていっても、馬は何も感じない」という意味の一節が登場します。
人間であれば春の訪れに何らかの感慨を抱くものですが、馬は何の感動も示さず平然としている。
この情景から、人が何を言っても何も感じず、聞き流す態度のたとえとなりました。
この詩の一節は、四字熟語の「馬耳東風(ばじとうふう)」の語源としても知られており、「馬の耳に風」はその意味を分かりやすく日本語にした表現と言えます。
使い方・例文
「馬の耳に風」は、主に「忠告を聞かない人」や「反省の色が見えない態度」に対して使われます。
学校や家庭、友人関係など、コミュニケーションが一方通行になっている場面で用いられることが多いです。
例文
- 母が何度「勉強しなさい」と言っても、弟には「馬の耳に風」で、漫画ばかり読んでいる。
- 健康のためにとお酒を控えるよう言っているが、父は「馬の耳に風」とばかりに晩酌を楽しんでいる。
- 彼に何をアドバイスしても「馬の耳に風」だから、もう何も言うまいと決めた。
類義語・関連語
「馬の耳に風」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 馬耳東風(ばじとうふう):
意味も由来も全く同じ言葉。「馬の耳に風」の四字熟語版。 - 蛙の面に水(かえるのつらにみず):
どんな仕打ちを受けても、全く平気でいること。厚かましい様子にも使われる。 - 右の耳から左の耳(みぎのみみからひだりのみみ):
聞いたことを端から忘れてしまうこと。「右から左」とも言う。 - 暖簾に腕押し(のれんにうでおし):
力を入れても手応えがなく、張り合いがないこと。
「馬の耳に念仏」との違い
よく似た言葉に「馬の耳に念仏」がありますが、こちらは「ありがたい教え(念仏)を聞かせても、その価値が分からない」という意味です。「猫に小判」に近く、「価値を理解できない」点に重きが置かれます。
一方、「馬の耳に風」は、「聞こえているのに気にしない、聞き流す」という「態度の無反応さ」に重きが置かれるという違いがあります。
対義語
「馬の耳に風」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。
- 肝に銘じる(きもにめいじる):
心に深く刻みつけて、決して忘れないようにすること。 - 傾聴(けいちょう):
耳を傾けて、熱心に聞くこと。
英語表現
「馬の耳に風」を英語で表現する場合、以下のようなフレーズが使われます。
In one ear and out the other
- 直訳:片方の耳から入って、もう片方の耳から出ていく
- 意味:「右の耳から左の耳へ」「聞き流す」
- 解説:日本語の「右から左」と同じ発想で、最も一般的によく使われる表現です。
- 例文:
I told him to be careful, but it went in one ear and out the other.
(彼に気をつけるよう言ったが、馬の耳に風だった。)
Like water off a duck’s back
- 直訳:アヒルの背中から落ちる水のように
- 意味:「何の影響も受けない」「平気だ」
- 解説:アヒルの羽が水を弾く様子から、批判や忠告を受けても全く気にしない(効き目がない)ことを表します。「蛙の面に水」に近いニュアンスもあります。
- 例文:
Criticism rolls off him like water off a duck’s back.
(批判は彼にとって、馬の耳に風のようだ。)
まとめ
「馬の耳に風」は、人の意見や忠告を聞いても心に留めず、右から左へ受け流してしまう態度を表す言葉です。
由来となった李白の詩の情景を思い浮かべると、風が吹き抜けるように言葉が通り過ぎていく様子がより鮮明にイメージできるのではないでしょうか。
「馬耳東風」と言い換えることもできますので、相手や場面に合わせて使い分けてみてください。





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