立っている者は親でも使え

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ことわざ 慣用句
立っている者は親でも使え
(たっているものはおやでもつかえ)

15文字の言葉た・だ」から始まる言葉
立っている者は親でも使え 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

年末の大掃除や、引っ越しの当日。
人手が足りなくて、猫の手も借りたいほど忙しい局面があるものです。
そんな時、たまたま近くにいる人を「誰でもいいから助けてほしい」と頼みたくなるのは自然な心理でしょう。
まさに「立っている者は親でも使え」(たっているものはおやでもつかえ)というわけです。

この言葉は、単に人をこき使うことを勧めているのではありません。
そこには、切羽詰まった状況を乗り切るための切実な生活の知恵が込められています。

意味・教訓

「立っている者は親でも使え」とは、急ぎの用事や非常に忙しい時には、たとえ親であっても遠慮せずに手伝ってもらうべきだという意味です。

本来、親は敬うべき存在であり、子が用事を言いつけるような相手ではありません。
しかし、その親ですら動員しなければならないほど、事態が切迫していることを強調した比喩表現です。
転じて、「利用できるものは何でも利用して急場をしのげ」という教訓としても使われます。

語源・由来

「立っている者は親でも使え」の由来は、日本の古い家庭倫理と実利的な考え方の対比にあります。

かつての日本では、親は絶対的な権威を持つ存在であり、子が親を「使う」ことは最大の不作法とされてきました。
しかし、農繁期や災害時などの非常事態においては、綺麗事を言っていられない瞬間があります。

この言葉における「立っている者」とは、たまたまその場に居合わせて、特に何もしていない人を指します。
どれほど目上の尊い相手であっても、緊急時には背に腹は代えられないという、庶民のたくましいリアリズムから生まれた言葉です。

なお、特定の出典がある故事成語ではなく、江戸時代から民衆の間で語り継がれてきた生活のことわざとして定着しました。

使い方・例文

非常に忙しく、人手が一人でも多く欲しい場面で、周囲に協力を仰ぐ際やその状況を説明する際に使われます。
基本的には親しい間柄や、ユーモアを交えて忙しさを伝える文脈で用いられる言葉です。

例文

  • 「文化祭の準備が終わらない。立っている者は親でも使えだ、廊下を通った先生にも手伝ってもらおう」
  • 「イベント当日は猫の手も借りたい。立っている者は親でも使えというし、手の空いているスタッフは全員配置についてくれ」
  • 「夕飯の支度中に急な来客があり、まさに立っている者は親でも使えの心境で夫に皿洗いを頼んだ」

文学作品での使用例

『坊っちゃん』(夏目漱石)

夏目漱石の代表作の一つにおいて、江戸っ子気質で真っ直ぐな主人公の坊っちゃんが、騒動の中でこの言葉を口にする場面があります。

「立っている者は親でも使え」という、いい伝がある。

明治時代の文学においても、この言葉が庶民の間に浸透していたことがうかがえる一節です。

類義語・関連語

「立っている者は親でも使え」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 猫の手も借りたい(ねこのてもかりたい):
    非常に忙しく、誰でもいいから手伝ってほしい様子。
  • 立っている者は仏でも使え(たっているものはほとけでもつかえ):
    親と同様に、尊い存在である仏様であっても遠慮せず頼るべきだという、同義の言葉。
  • 藁をも掴む(わらをもつかむ):
    苦しい状況から逃れようとして、頼りにならないものにまで必死に頼ること。

似ているけれど意味が違う言葉:「居仏が立ち仏を使う」

「立っている者は親でも使え」と形は似ていますが、全く異なるニュアンスを持つ言葉に
「居仏が立ち仏を使う」(いぼとけがたちぼとけをつかう)があります。

「立っている者は親でも使え」が「あまりの忙しさに誰にでも頼りたくなる切実な状況」を指すのに対し、こちらは「自分は座って楽をしていながら、用事で動いている人をこき使う図々しさ」を揶揄する言葉です。

どちらも「仏」や「立つ」というキーワードを含みますが、前者は「多忙ゆえの緊急避難」、後者は「怠慢ゆえの身勝手」という対照的な背景を持っています。
混同して使うと、自分の多忙さを訴えるつもりが「私は怠け者です」と言っていることになりかねないため、注意が必要です。

英語表現

「立っている者は親でも使え」を英語で表現する場合、状況に応じた以下の定型的な言い回しが近しいニュアンスを持ちます。

All is fish that comes to net.

  • 意味:「網に入るものはすべて魚だ」
  • 解説:網にかかったものは何でも利用価値があるという意味の諺です。
    人手に限らず、利用できる資源はすべて使うという文脈で使われます。
  • 例文:
    We need more people for the project. Remember, all is fish that comes to net.
    (プロジェクトにはもっと人が必要だ。利用できるものは何でも利用しよう。)

Any port in a storm.

  • 意味:「嵐の時の港ならどこでもいい」
  • 解説:緊急時には、たとえ不満足なものであっても、助けになるものなら何でも受け入れるべきだという意味です。
  • 例文:
    I didn’t want to ask him for help, but it’s any port in a storm.
    (彼に助けを求めたくはなかったが、背に腹は代えられない状況だった。)

まとめ

忙しさに追われると、つい一人で抱え込んでしまいがちです。
しかし、物事を円滑に進めるためには、時には周囲に甘え、助けを求めることも大切な知恵と言えます。

「立っている者は親でも使え」という言葉は、私たちの日常における「協力の重要性」を教えてくれます。
この言葉を思い出すことで、少し肩の力を抜き、周囲との協力を仰ぐきっかけになることでしょう。

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