溺れる者は藁をも掴む

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ことわざ
溺れる者は藁をも掴む
(おぼれるものわらをもつかむ)

13文字の言葉」から始まる言葉
溺れる者は藁をも掴む 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

どうしても叶えたい願いがある時や、絶体絶命のピンチに陥った時。
普段なら非科学的だと笑い飛ばすような迷信や、頼りない情報にさえすがってしまった経験。
そんな切迫した心理状況を、「溺れる者は藁をも掴む」(おぼれるものはわらをもつかむ)と言います。

意味

「溺れる者は藁をも掴む」とは、生命の危険や破滅の危機に直面した人は、助かりたい一心で、全く頼りにならないものにまで頼ろうとするという意味です。

水に溺れてパニックになった人が、目の前に流れてきた「藁(わら)」のような、つかまっても浮くはずのない小さなものにさえ無我夢中でしがみつく様子にたとえられています。
そこから転じて、切羽詰まった状況下では、人は冷静な判断力を失い、役に立たないと分かっているようなわずかな可能性にもすがってしまう、という人間の弱さや必死さを表しています。

語源・由来

「溺れる者は藁をも掴む」の語源は、英語のことわざであると考えられています。

イギリスの政治家であり思想家でもあったトマス・モアの対話篇(1528年)など、古くから英語圏では
「A drowning man will catch at a straw.」という表現が使われていました。
これが明治時代以降に日本に伝わり、翻訳されて定着したという説が有力です。

日本独自の古い文献にはこの表現が見当たらないため、西洋からの翻訳ことわざの一つとして分類されます。
洋の東西を問わず、極限状態における人間の心理や行動は共通していることがうかがえます。

使い方・例文

「溺れる者は藁をも掴む」は、必死に解決策を模索する様子や、追い詰められて冷静さを欠いた行動をしてしまう場面で使われます。

日常会話では「それほど必死だった」という比喩として使われますが、詐欺被害や非合理的な行動の言い訳、あるいは他者の危うい様子を客観的に描写する際によく用いられます。

例文

  • ずっと片思いをしていた彼は、「溺れる者は藁をも掴む」思いで、雑誌の裏に載っていた怪しげな恋愛成就グッズを購入してしまった。
  • 無くした結婚指輪が見つからず、母は「溺れる者は藁をも掴む」心境で、評判の占い師の元へ走った。
  • 「溺れる者は藁をも掴む」と言うが、倒産寸前の彼が手を出したその融資話は、あまりにも条件が悪すぎた。
  • 絶体絶命の状況だった私にとって、その古い資料に残されたわずかな手がかりは、まさに「溺れる者は藁をも掴む」思いでたぐり寄せた希望だった。

文学作品・メディアでの使用例

『人間失格』(太宰治)
主人公が自分の苦悩や絶望的な状況を回想する中で、ふとことわざを思い出すシーンで使われています。

その時、わたしは、溺れる者は藁をも掴むという諺を思い出しました。

類義語・関連語

「溺れる者は藁をも掴む」と似た心理状況や、危機的状況を表す言葉には以下のようなものがあります。

  • 苦しい時の神頼み(くるしいときのかみだのみ):
    普段は信仰心がないのに、困った時だけ神仏に祈って助けを求めること。
    ご都合主義な面が強調されますが、頼りないもの(神頼み)にすがる点は共通しています。
  • 窮鼠猫を噛む(きゅうそねこをかむ):
    追い詰められたネズミが猫に噛みつくように、弱者でも絶体絶命の時は強者に反撃すること。
    「すがる」のではなく「反撃する」点が異なりますが、追い詰められた状況の行動として関連しています。
  • 背に腹はかえられぬ(せにはらはかえられぬ):
    差し迫った苦痛や危険を避けるためには、他のことを犠牲にしても仕方がないということ。
  • 窮すれば通ず(きゅうすればつうず):
    最悪の事態まで行き詰まると、かえって活路が開けるということ。
    こちらは「なんとかなる」という結果論に近い言葉です。

対義語

「溺れる者は藁をも掴む」とは対照的に、余裕を持って行動することや、危険を避ける慎重さを表す言葉です。

  • 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
    安全そうな場所でも、念には念を入れて用心深く行動すること。
  • 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
    賢明な人は、危険な場所や物事には最初から近づかないということ。
  • 急がば回れ(いそがばまわれ):
    危険を含む近道をするよりも、安全で確実な遠回りをするほうが、結果的に早く目的を達せられるということ。

英語表現

「溺れる者は藁をも掴む」を英語で表現する場合、語源となったフレーズそのものが使われます。

A drowning man will catch at a straw.

  • 意味:「溺れる者は藁をもつかむ」
  • 解説:動詞は catch のほかに clutch(ぐいと掴む)や grasp(握る)が使われることもあります。straw は「わら」や「麦わら」のことです。
  • 例文:
    He knew it was a risky bet, but a drowning man will catch at a straw.
    (危険な賭けだと分かっていたが、溺れる者は藁をも掴むというやつだ。)

藁(わら)にまつわる豆知識

ちなみに、この言葉に出てくる「藁(わら)」ですが、実際には中空構造になっているため、茎の中に空気を含んでおり多少の浮力はあります。
しかし、人間一人の体重を支えるには到底足りず、すぐに沈んでしまいます。

英語の “catch at a straw” は、「(助けにはならない)つまらない物」の象徴として straw を用いています。
日本語でも「藁」は、役に立たないものの代名詞として使われることがありますが、このことわざにおいては「役に立たないと分かっていても、手を伸ばさずにはいられない」という人間の生存本能の悲しさが強調されています。

まとめ

「溺れる者は藁をも掴む」は、窮地に立たされた人間が、どんなに頼りない希望にでもすがりつこうとする心理を表したことわざです。
その背景には、冷静さを失うほどの必死さと、諦めない生存本能があります。

この言葉は、他者の無謀な行動を戒めるときに使われることもあれば、自分自身の切迫した状況を説明するときにも使われます。
いざという時に「藁」を掴んでしまわないよう、日頃から準備をしておくことの大切さを、逆説的に教えてくれている言葉とも言えるでしょう。

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