人の行いや心のあり方を映し出す「善」という言葉。
それは思いやりや誠実さとなって現れ、時には目に見えないかたちで報われるとも言われます。
昔から多くの言葉が、善い行いの大切さや、その積み重ねの力を語り継いできました。
この記事では、「善」にまつわることわざや慣用句、四字熟語を通して、その意味と想いをひもといていきます。
ことわざ
- 善は急げ(ぜんはいそげ):
良いと思ったことは、ためらわずにすぐ実行に移すべきであるということ。 - 善き事は門を出でず(よきことはもんをいでず):
良い行いや評判は、なかなか世間に知れ渡らないものであるということ。「悪事千里を走る」と対比される。 - 善を責むるは朋友の道なり(ぜんをせむるはほうゆうのみちなり):
友人が正しい道を踏み外さないように、善い行いを勧めるのが真の友情であるということ。孟子の言葉。 - 善の家には必ず余慶あり(ぜんのいえにはかならずよけいあり):
善い行いを積み重ねている家には、必ず子孫にまで及ぶ良い報いがあるということ。『易経』の言葉。「積善の家には必ず余慶あり」とも言う。 - 天道は善に福し、淫に禍す(てんどうはぜんにふくし いんにわざわいす):
天の道、すなわち道理は、善い行いをする者には幸福を与え、道に外れた行いをする者には災いを与えるものであるということ。(※画像とは一部表現が異なりますが、一般的に使われる形で記載しています) - 小善は大悪に似たり(しょうぜんはたいあくににたり):
目先の小さな親切や同情が、かえって相手のためにならず、結果的に大きな害悪をもたらすことがあるという戒め。
慣用句
- 最善を尽くす(さいぜんをつくす):
その時点でできる限り、最も良いと思われる方法で全力を尽くすこと。 - 善処する(ぜんしょする):
状況に応じて、うまく適切な処置をとること。穏便に処理すること。 - 善根を施す(ぜんこんをほどこす):
仏教で、善い報いをもたらす原因となる行いをすること。功徳を積むこと。
四字熟語
- 一日一善(いちにちいちぜん):
一日に一つだけでも、何か善い行いをしようと心がけること。 - 善因善果(ぜんいんぜんか):
善い行い(原因)は、必ず善い結果をもたらすということ。
仏教の因果応報の考え方。(ことわざとしても扱われる) - 勧善懲悪(かんぜんちょうあく):
善い行いを勧め、悪い行いを懲らしめること。(「悪」の項目で既出) - 積善余慶(せきぜんよけい):
善行を積み重ねた家には、その報いとして子孫にまで慶びごとが及ぶということ。「善の家には必ず余慶あり」を四字熟語にしたもの。 - 善男善女(ぜんなんぜんにょ):
仏教を篤く信仰している善良な男女のこと。転じて、善良な人々のこと。 - 善隣友好(ぜんりんゆうこう):
隣国や近隣の人々と、互いに親しく付き合い、友好関係を保つこと。 - 尽善尽美(じんぜんじんび):
この上なく善であり、この上なく美しいこと。完璧な状態。 - 善始善終(ぜんしぜんしゅう):
物事を、初めも終わりも良く行うこと。最後まで気を抜かず、立派にやり遂げること。
まとめ – 心に響く「善」の言葉
善をめぐる言葉には、すぐに動くことの大切さや、善意がすぐに報われるとは限らない現実、そしてそれでも続ける意味が込められています。
たとえ目に見える結果がすぐに現れなくても、善き行いは、いつか自分や周囲に巡ってくる。
そんな信念が、私たちの背中をそっと押してくれるのかもしれません。
見返りを求めず、ただ善くあろうとすること。
それこそが、人生を少しずつ照らしていく力になるのでしょう。
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