「みんな違って、みんないい」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
「和而不同(わじふどう)」は、まさにその精神を古くから伝える、奥深い四字熟語です。
今回は、「和而不同」の基本的な意味から、その出典、現代での使い方、類語や英語表現まで、分かりやすく解説していきます。
「和而不同」の意味・教訓
「和而不同」とは、協調性は持つが、道理に反することや自分の信念に反することには同調しないという意味です。
表面的な仲良しグループのように、ただ周りに合わせる(同調する)のではなく、自分のしっかりとした考えを持ちつつ(不同)、他人とは穏やかに調和していく(和する)という、主体性を持った協調の大切さを示す言葉です。
「和而不同」の語源 – 孔子の言葉
この言葉は、中国の古典である『論語(ろんご)』の「子路(しろ)篇」が出典です。
孔子(こうし)が、優れた人物(君子)とそうでない人物(小人)の違いについて述べた、
「君子は和して同ぜず、小人は同じて和せず」
(=優れた人物は、他者と調和するが、むやみに同調はしない。つまらない人物は、むやみに同調するだけで、真の調和ができない)
という一節から来ています。
使用される場面と例文
個人のあり方を示す際や、組織・チームの理想的な関係性を表す際など、ポジティブな文脈で使われます。
単なる「仲良し」ではなく、互いの違いを認め合った「成熟した関係」を表現するのに適しています。
例文
- 「私たちは、互いの意見を尊重し合う「和而不同」の関係を目指すべきだ。」
- 「真の多様性とは、まさに「和而不同」の精神にこそあると思う。」
- 「彼は「和而不同」を体現した人で、誰とでもうまくやるが、決して自分の意見を曲げない。」
類義語・言い換え表現
「和而不同」と似た意味や、関連する概念を持つ言葉を紹介します。
- 付和雷同(ふわらいどう):
自分自身の考えがなく、他人の意見に安易に同調すること。
※「和而不同」が理想とするあり方の、正反対の行動(同じて和せず)を示す言葉です。 - 自主独立(じしゅどくりつ):
他からの干渉や助けを受けず、自分の力で行動すること。
※「不同」の側面(主体性)を強調した言葉です。
対義語
「和而不同」の「和」と「同」を逆転させた、対極の概念を示す言葉です。
- 同而不和(どうじふわ):
むやみに同調するだけで、真の調和ができていないこと。
※『論語』における「小人」の状態を指します。
英語での類似表現
「和而不同」の「違いを認めつつ調和する」というニュアンスに近い英語表現を紹介します。
Harmony without uniformity
- 意味:「均一性(画一性)のない調和」。
- ニュアンス:「和而不同」の直訳に近く、その精神性を的確に表現するフレーズです。
Agree to disagree
- 意味:「意見が異なることに同意する」。
- ニュアンス:互いの意見が違うことを認め、その上であえて議論を終結させる、という合意を指します。「和(調和)」よりも「不同(違いの容認)」に焦点が当たりますが、根底にある精神は近いです。
- 例文:
We’ll just have to agree to disagree on this issue.
(この問題については、お互い意見が違うということで手を打つしかないようだ。)
まとめ – 和而不同から学ぶ現代の知恵
「和而不同」は、自分の軸を持ちながらも、他者と柔軟に調和していくという、成熟したあり方を示す四字熟語です。
SNSなどで周りの意見に流されやすくなりがちな現代において、むやみに同調するのではなく、違いを認め合いながら穏やかにつながる「和而不同」の精神は、より良い人間関係を築くための大切な知恵と言えるでしょうね。




コメント