職場や学校、地域社会において、自分とは異なる考え方や背景を持つ人と接する機会は多いものです。
「あの人とは合わない」と悩むこともあれば、「自分にはない発想だ」と刺激を受けることもあるでしょう。
現代社会で重要視される「多様性」(たようせい)。
古くから伝わる言葉の中には、個々の違いを認め、それを力に変えるための知恵がたくさん詰まっています。
本記事では、多様な個性のあり方や、違いを尊重して共に生きるヒントとなる四字熟語、ことわざ、慣用句を紹介します。
- 個々の違いを表す言葉
- 十人十色(じゅうにんといろ)
- 三者三様(さんしゃさんよう)
- 各人各様(かくじんかくよう)
- 千差万別(せんさばんべつ)
- 多種多様(たしゅたよう)
- 百人百様(ひゃくにんひゃくよう)
- 蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき)
- 所変われば品変わる(ところかわればしなかわる)
- 違いを認め合い、力に変える言葉
- 和而不同(わじふどう)
- 三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ)
- 殊途同帰(しゅとどうき)
- 適材適所(てきざいてきしょ)
- 清濁併せ呑む(せいだくあわせのむ)
- 百花繚乱(ひゃっかりょうらん)
- 馬には乗ってみよ人には添うてみよ(うまにはのってみよひとにはそうてみよ)
- 議論百出(ぎろんひゃくしゅつ)
- 視点の違い・多様性の難しさを説く言葉
- 井の中の蛙大海を知らず(いのなかのかわずたいかいをしらず)
- 類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ)
- 出る杭は打たれる(でるくいはうたれる)
- 群盲象を評す(ぐんもうぞうをひょうす)
- 多様性の対極・注意すべき言葉(画一性・同調)
- 付和雷同(ふわらいどう)
- 千篇一律(せんぺんいちりつ)
- 判で押したよう(はんでおしたよう)
- 色眼鏡で見る(いろめがねでみる)
- 多様性を表す世界の格言・英語表現
- 一本の指ではノミはつぶせない
- 大同小異(だいどうしょうい)
- 英語表現
- 現代の関連キーワード
- まとめ
個々の違いを表す言葉
「人それぞれ違って当たり前である」という事実や、好みの多様さを示す言葉です。他者との違いに戸惑ったとき、この言葉を思い出すと心が軽くなるかもしれません。
十人十色(じゅうにんといろ)
十人の人がいれば、その好み、考え方、性格も十通りあり、それぞれ異なっていること。
多様性を語る上で最も基本的で、広く使われる言葉です。「みんな違って、みんな良い」という個性の肯定につながります。
三者三様(さんしゃさんよう)
三人の人がいれば、やり方や意見も三通りあること。
それぞれの立場や性格によって、物事へのアプローチが異なる様子を表します。
各人各様(かくじんかくよう)
一人ひとり、すべてやり方や考え方が違うこと。
「三者三様」とほぼ同義ですが、より多くの人を対象にする際にも使われます。
千差万別(せんさばんべつ)
多くのものが、それぞれ比較できないほどに違っていること。
「千」や「万」という数字を使って、違いの幅広さや種類の多さを強調しています。
人だけでなく、物事の状況や結果がさまざまである場合にも使われます。
多種多様(たしゅたよう)
種類や性質がさまざまであること。
単に数が多いだけでなく、バリエーションが豊かであることを示します。
百人百様(ひゃくにんひゃくよう)
人が百人いれば、百通りの姿やあり方があること。
「十人十色」と同様に、人間がきわめて多様であることを示す四字熟語です。
蓼食う虫も好き好き(たでくうむしもすきずき)
辛くて苦い蓼(たで)の葉を好んで食べる虫がいるように、人の好みはさまざまであるというたとえ。
他人の趣味や嗜好が理解できなくても、「好みは人それぞれだ」と受け入れる際に使われます。
所変われば品変わる(ところかわればしなかわる)
土地や環境が違えば、そこでの習慣、言葉、価値観、産物なども異なるということ。
自分の常識が他所では通用しないことを知り、異なる文化や風習を尊重する必要性を説いています。
違いを認め合い、力に変える言葉
ただ違うだけでなく、その違いを認め合い、協力することで良い結果を生み出す「調和」や「相乗効果」に関連する言葉です。
和而不同(わじふどう)
人とは協調するが、自分の主体性を捨ててむやみに同調はしないこと。
『論語』に由来する言葉で、「和して同ぜず」とも言います。異なる意見を持つ者同士が、互いを尊重しながら調和を保つ、自立した関係性を示します。
三人寄れば文殊の知恵(さんにんよればもんじゅのちえ)
凡人であっても、三人集まって相談すれば、知恵の神様である文殊菩薩のような優れた知恵が出るということ。
一人では解決できない問題も、異なる視点を持つ人々が協力することで、より良い解決策が見つかるという「多様性の強み」を表しています。
殊途同帰(しゅとどうき)
通る道は違っても、行き着く場所は同じであること。
方法や手段が異なっていても、目的や結論は一致することを指します。多様なアプローチを許容する言葉です。
適材適所(てきざいてきしょ)
その人の才能や性質によく合った地位や任務を与えること。
個々の「違い」を優劣ではなく「特性」として捉え、その力が最大限に発揮される場所で活かすという、組織づくりの基本となる考え方です。
清濁併せ呑む(せいだくあわせのむ)
善も悪も、清らかなものも濁ったものも、分け隔てなく受け入れること。
度量が大きく、多様な側面を持つ人や矛盾する状況さえもありのままに受け入れる、リーダーの資質として語られることが多い言葉です。
百花繚乱(ひゃっかりょうらん)
いろいろな種類の花が、色とりどりに咲き乱れること。
転じて、優れた才能や個性を持った多くの人々が一時期に現れ、活躍する華やかな様子を指します。
多様な個性が花開くポジティブなイメージです。
馬には乗ってみよ人には添うてみよ(うまにはのってみよひとにはそうてみよ)
何事も先入観で判断せず、実際に経験してみなければ本当のところは分からないという教え。
「食わず嫌い」を戒め、異なるタイプの人とも深く付き合ってみることで、理解が深まることを示唆しています。
議論百出(ぎろんひゃくしゅつ)
さまざまな意見が数多く出ること。
多様な視点から活発に議論が交わされる様子を表します。
視点の違い・多様性の難しさを説く言葉
見えている世界が人によって違うことや、多様性を阻害する心理についての言葉です。
井の中の蛙大海を知らず(いのなかのかわずたいかいをしらず)
狭い世界に閉じこもって、広い世界のことを知らないこと。
自分の知識や価値観だけが絶対だと思い込み、世の中には多様な考え方があることに気づいていない状態を戒める言葉です。
類は友を呼ぶ(るいはともをよぶ)
性質が似ている者同士は、自然と寄り集まるということ。
これは自然な心理ですが、裏を返せば「自分と似た人とばかり一緒にいると、多様な視点が得られにくい」という、同質性の落とし穴(サイロ化)への警告としても読み取れます。
出る杭は打たれる(でるくいはうたれる)
才能や手腕があってぬきんでている人は、とかく人から憎まれたり制裁を加えられたりすること。
また、さしでがましいことをする者は制裁を受けること。
日本の組織において、際立った「個性」が排除されやすい風潮を表す言葉として、多様性の文脈でしばしば課題として挙げられます。
群盲象を評す(ぐんもうぞうをひょうす)
目の見えない数人の人々が、一頭の象の異なる部位(鼻、牙、耳など)を触って、それぞれ「象とは柱のようなものだ」「いや、太鼓のようなものだ」と食い違う主張をする寓話。
転じて、凡人は物事の一部分だけを見て、全体像や本質を理解できないことのたとえ。
「人によって見えている世界(事実の側面)が違う」という多様性の本質を突いた言葉でもあります。
多様性の対極・注意すべき言葉(画一性・同調)
多様性を理解する上では、逆に「画一性」や「偏見」を表す言葉を知っておくことも大切です。
これらは、多様性を阻害する要因として反面教師にできます。
付和雷同(ふわらいどう)
自分の定見を持たず、むやみに他人の意見に同調すること。
雷が鳴ると物がそれに響いて音を立てるように、ただ周りに合わせるだけの態度。「和而不同」の対極にあり、多様性を失わせる態度です。
千篇一律(せんぺんいちりつ)
多くの詩や文章がどれも似たり寄ったりで、変化や面白みがないこと。
転じて、物事が形式的で個性がなく、退屈な様子を指します。
判で押したよう(はんでおしたよう)
その場にいる全員が同じような言動をしたり、同じような物が並んでいたりして、個体差が全くない様子。
個性が埋没している状態を指します。
色眼鏡で見る(いろめがねでみる)
先入観や偏見を持って人や物事を見ること。
ありのままの姿を見ようとせず、フィルターを通して勝手に評価してしまう態度です。多様性を認めるためには、この「色眼鏡」を外す必要があります。
多様性を表す世界の格言・英語表現
世界中で、違いを認め合うことの大切さは語られています。
一本の指ではノミはつぶせない
アフリカの格言として知られる言葉。
一人では小さな力でも、異なる指(人々)が協力し合うことで目的を達成できるという意味。個の違いを前提とした協力の重要性を説いています。
大同小異(だいどうしょうい)
小さな違いはあっても、大筋では同じであること。
違いばかりに目を向けて対立するのではなく、「共通点」を見出すことで合意形成を図る際に役立つ視点です。
英語表現
- It takes all sorts to make a world.
- 直訳:世界を作るにはあらゆる種類の人が必要だ。
- 意味:「世の中にはいろいろな人がいるものだ」「十人十色」
- 解説:変わった人や自分と合わない人がいても、そういう人も含めて世界は成り立っているのだと、多様性を肯定的に、あるいは諦念を持って受け入れる際に使います。
- 例文:
I don’t understand his fashion sense, but it takes all sorts to make a world.
(彼のファッションセンスは理解できないが、世の中にはいろいろな人がいるものだ)
- Variety is the spice of life.
- 意味:「変化は人生のスパイスである」
- 解説:毎日が同じ繰り返しではつまらないように、人生には多様性や変化があるからこそ面白い、というポジティブな表現です。
現代の関連キーワード
ことわざではありませんが、現代において「多様性」を語る上で欠かせないキーワードを簡単に紹介します。
- ダイバーシティ(多様性):
- 人種、性別、年齢などの外見的な違いだけでなく、経験や価値観などの内面的な違いも含めた多様さのこと。
- インクルージョン(包摂):
- 多様な人々が、それぞれの個性を活かして組織や社会に参加し、一体感を持っている状態。
「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」としてセットで語られます。
- 多様な人々が、それぞれの個性を活かして組織や社会に参加し、一体感を持っている状態。
- アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見):
- 「普通はこうだ」といった、無意識のうちに持っている思い込みのこと。
これが多様な個性の活躍を阻む原因になることがあります。
- 「普通はこうだ」といった、無意識のうちに持っている思い込みのこと。
まとめ
私たち人間は、一人として同じ人はいません。
「十人十色」や「三者三様」という言葉が示すように、違いがあることは自然の摂理です。
時にはその違いが摩擦を生むこともありますが、「三人寄れば文殊の知恵」のように、異なる個性が集まることで一人では到達できない高みへ行けることもまた事実です。
自分とは異なる意見や文化に出会ったとき、「所変われば品変わる」と柔軟に受け止め、「和して同ぜず」の精神で対話を重ねる。
そうした姿勢が、多様な人々が共に生きる豊かな社会を作る第一歩になることでしょう。




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