心配事や不安なことが頭をよぎり、なかなか寝付けない夜を過ごしたことはありませんか。逆に、やるべきことを全て終え、何の気がかりもなく安心して眠れる状態は、とても幸せなものです。
「高枕安眠」は、まさにそのような、心に憂いがまったくない安らかな状態を表す言葉です。
「高枕安眠」の意味
高枕安眠(こうちんあんみん)とは、枕を高くして(ゆったりと)安心して眠ることです。
転じて、心に何の心配事もなく、安らかに暮らしていることのたとえとして使われます。
大きな問題が解決したり、将来への備えが万全であったりして、憂いなく過ごせる状態を指します。
「高枕安眠」の語源 – 熟語の成り立ち
「高枕安眠」は、「高枕」と「安眠」という二つの熟語を組み合わせた言葉です。
- 高枕(こうちん):枕を高くすること。転じて、安心して構えていること。
- 安眠(あんみん):やすらかに眠ること。
この言葉は、中国の古典『戦国策(せんごくさく)』に見られる
「高枕無憂(こうちんむゆう)」または「高枕而臥(こうちんじが)」(枕を高くして臥す)という故事に由来するとされています。
戦国時代、策士たちが各国の王に対し、「私の策を用いれば、敵からの憂いもなくなり、王は枕を高くして安心して眠れます」と説いた場面で使われました。
ここから、憂い事がない状態を「高枕」と表現するようになりました。
「高枕安眠」の使い方と例文
「高枕安眠」は、大きな心配事が解決した時や、備えが万全で将来に不安がない時、または非常に平和で安定した状態を指す時に使われます。「高枕安眠できる」「高枕安眠の境地」といった形で用いられます。
例文
- 「長年の懸案だったプロジェクトが無事に成功し、今夜からようやく「高枕安眠」できる。」
- 「老後のための貯蓄や備えを万全にしたことで、彼は「高枕安眠」の心境で暮らしている。」
- 「犯人が捕まったと聞き、地域住民はようやく「高枕安眠」できると胸をなでおろした。」
類義語・言い換え表現
「高枕安眠」と似た意味を持つ言葉を紹介します。
- 高枕無憂(こうちんむゆう):
枕を高くして憂いがないこと。「高枕安眠」とほぼ同じ意味で、故事の出典により近い表現。 - 安眠高枕(あんみんこうちん):
「高枕安眠」の語順を変えた言葉。意味は同じ。 - 高枕(たかまくら):
安心して眠ること。また、そのような心配のない安楽な境遇。 - 無事息災(ぶじそくさい):
病気や事故などの災難がなく、元気で暮らしていること。 - 平安無事(へいあんぶじ):
変わりなく穏やかで、無事なこと。
対義語
「高枕安眠」とは反対に、心配事があって心が休まらない状態を表す言葉です。
- 輾転反側(てんてんはんそく):
心配事などのために眠れず、何度も寝返りをうつこと。 - 憂心忡忡(ゆうしんしょうしょう):
心に憂いを抱き、ふさぎこんでいるさま。 - 針の筵(はりのむしろ):
非難や緊張の中にいて、少しも心が休まらない苦しい境遇のたとえ。
英語での類似表現
「高枕安眠」の「安心して眠る」というニュアンスに近い英語表現です。
sleep soundly (peacefully)
- 意味:「ぐっすり眠る」「安らかに眠る」。心配事なく深く眠っている様子。
- 例文:
Now that the exams are over, I can finally sleep soundly.
(試験が終わったので、ようやくぐっすり眠れる。)
rest easy
- 意味:「安心して休む」「気楽にする」。
- 例文:
You can rest easy knowing that the problem is solved.
(問題は解決したので、もう安心していてください。)
sleep without a care in the world
- 意味:「何の心配もなく眠る」。
- 例文:
The child slept without a care in the world.
(その子どもは、本当に何の心配もないといった様子で眠っていた。)
「高枕安眠」に関する豆知識
「高枕安眠」の「高枕」とは、文字通り「物理的に高さのある枕」を使うことではありません。
故事の背景にあるように、敵の襲来を警戒する際は、物音を聞きやすくするために枕をしない(あるいは低くする)こともありました。
それに対し、枕を高くしてゆったりと構えて寝る姿は、警戒する必要がない「安心しきっている状態」の象徴とされました。
現代の健康法で推奨される「適切な高さの枕」とは意味が異なり、あくまで比喩的な表現です。
まとめ – 「高枕安眠」の境地を目指して
「高枕安眠」とは、心に憂いがなく、安心してゆったりと眠れること、またそのような安らかな暮らしぶりを指す四字熟語です。
日々の生活では、仕事や人間関係、将来のことなど、様々な気がかりが尽きないかもしれません。しかし、問題に真摯に向き合い、万全の備えをすることで、心からの「高枕安眠」の時を過ごせるようになります。心穏やかに休める時間を大切にしたいものですね。




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