人生には、結果がどうなるか全く予測できないけれど、ここで勝負に出なければならないという局面が訪れます。成功すれば大金星、失敗すれば全てを失うかもしれない。
そんな、運を天に任せて大勝負に出る際の決意を「伸るか反るか」(のるかそるか)と言います。
意味
「伸るか反るか」とは、成功するか失敗するか結果は予測できないが、運を天に任せて思い切ってやってみることです。
- 伸る(のる):まっすぐに伸びること(成功)。
- 反る(そる):後ろへ曲がって反り返ること(失敗)。
「いちかばちか」「のるかそるか」というリズムの良さからよく使われますが、単なる賭け事だけでなく、進退窮まった状況を打開するための「覚悟を決めた挑戦」というニュアンスを含みます。
語源・由来
この言葉の由来は、武具である「矢」を作る工程にあります。
昔、矢を作る職人(矢師)は、材料となる竹を火で炙って柔らかくし、曲がった部分を矯正してまっすぐに伸ばす作業を行っていました。
これを「矯(た)める」と言います。
この時、竹の性質や炙り加減によって、竹がまっすぐに「伸びる(=良品となる)」か、乾燥して逆に「反り返る(=使い物にならなくなる)」か、やってみなければ分からないという緊張感がありました。
この、矢作りにおける「成功か失敗か」の瀬戸際が転じて、一か八かの勝負に出ることを「伸るか反るか」と言うようになったとされています。
使い方・例文
ビジネスにおける大きな投資や、人生の岐路となる決断など、失敗が許されないような緊迫した場面で使われます。
例文
- この新事業は、わが社の社運をかけた「伸るか反るか」の大勝負だ。
- 残り時間はあと僅か。「伸るか反るか」の覚悟で、全員攻撃を仕掛けるしかない。
- 彼は「伸るか反るか」で、長年温めてきた企画書を社長に直談判した。
文学作品での使用例
夏目漱石の『道草』では、主人公の心理描写として以下のように使われています。
彼は「伸るか反るか」その際どいところを、運命の手に任せて、危い橋を渡る気になった。
誤用・注意点
漢字表記について:「乗る」は間違い
よく「乗るか反るか」と書かれることがありますが、これは誤り(または当て字)です。
語源が「竹が伸びるか反るか」であるため、正しくは「伸る」という字を使います。
「波に乗る」や「賭けに乗る」という連想から「乗る」と書かれがちですが、本来の意味からは外れてしまうため注意しましょう。
類義語・関連語
「伸るか反るか」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 一か八か(いちかばちか):
結果はわからないが、運を天に任せてやってみること。「一」と「八」は、博打の「丁(偶数)」と「半(奇数)」の字の上の部分をとったものという説があります。 - 乾坤一擲(けんこんいってき):
運命をかけて、のるかそるかの大勝負をすること。「乾坤」は天と地、「一擲」はサイコロを一度投げること。よりスケールの大きい表現です。 - 運否天賦(うんぷてんぷ):
人の運・不運は天の意思によるものであること。また、運を天に任せて勝負すること。 - 出たとこ勝負(でたとこしょうぶ):
事前の準備や計画なしに、その場の成り行きで事を運ぶこと。「伸るか反るか」ほどの悲壮感はなく、やや無計画なニュアンスが含まれます。
対義語
「伸るか反るか」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。
- 石橋を叩いて渡る(いしばしをたたいてわたる):
用心の上にも用心を重ねて、慎重に物事を行うこと。 - 手堅い(てがたい):
危険を冒さず、着実に物事を行うさま。
英語表現
「伸るか反るか」を英語で表現する場合、以下のような言い回しがあります。
sink or swim
- 意味:「沈むか泳ぐか」
- 解説:助けのない状況で、自分の力で成功するか失敗するか、というギリギリの状態を表します。
- 例文:
It’s a sink or swim situation.
(まさに伸るか反るかの状況だ。)
make or break
- 意味:「成功するか壊れるか」
- 解説:その結果次第で、今後の運命が大きく左右される重要な局面を指します。
- 例文:
This deal will make or break our company.
(この取引は、わが社にとって伸るか反るかの勝負だ。)
まとめ
「伸るか反るか」は、矢を作る職人の手元から生まれた、成功と失敗の分かれ道を指す言葉です。
人生において、石橋を叩いて渡る慎重さは大切ですが、時にはリスクを承知で「伸るか反るか」の勝負に出なければ、手に入らないものもあります。
もしそのような局面が訪れたら、人事を尽くした上で、あとは竹が真っ直ぐに伸びることを信じて、思い切って飛び込んでみるのも一つの生き方かもしれません。





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