「運否天賦」の意味 – 運命は天にあり
「運否天賦」とは、人の運の良し悪し(運否)は、すべて天からの授かりもの(天賦)であり、人間の力ではどうすることもできない、という意味の四字熟語です。
幸運も不運も、成功も失敗も、全ては天の配剤、あるいは自然の成り行きによるものであり、個人の努力や才能を超えたところで決まる、という運命観を表しています。
そこから転じて、結果がどうなろうとも運を天に任せるしかない、という諦めや開き直りの心境を示す際にも用いられます。
「運否天賦」の語源・由来 – 言葉の成り立ち
「運否天賦」は、二つの熟語「運否」と「天賦」を組み合わせた言葉です。
- 運否(うんぷ):「運」は幸運、「否(ひ)」は不運や災いを意味します。合わせて、人の幸運と不運、運の良し悪しのことを指します。
- 天賦(てんぷ):「天」は天命や天の意志、自然の摂理などを意味します。「賦」は割り当てる、授けるという意味です。合わせて、天から与えられるもの、天命によって定まることを指します。
つまり、「運否天賦」とは、「幸運か不運かは、天から与えられるものだ」という意味になります。
特定の故事や古典を出典とするものではなく、このような言葉の組み合わせと、背景にある仏教的な無常観や、人知を超えた運命を受け入れる東洋的な思想などから、使われるようになったと考えられます。
「運否天賦」の使用場面と例文 – 人知を超えた運命
人間の努力や能力だけでは結果を左右できない、偶然性や不可抗力が大きい事柄に対して使われます。
例えば、くじ引きの当落、ギャンブルの勝敗、自然災害の遭遇、予測不能な病気などについて語る際に用いられることがあります。
また、自分の力ではどうしようもない状況に直面した際の、諦めの気持ちや、逆に「あとは運任せだ」と開き直る心境を表すこともあります。
例文
- 「宝くじの当選なんて、まさに運否天賦の世界だ。」
- 「どれだけ対策しても、自然災害に遭うかどうかは運否天賦としか言いようがない。」
- 「試験に向けてできる限りの勉強はした。あとは運否天賦、結果を待つだけだ。」
- 「人生、何が起こるかわからない。良いことも悪いことも運否天賦だと割り切るしかない時もある。」
- 「もうじたばたしても仕方ない。こうなったら運否天賦、この流れに身を任せてみよう。」
「運否天賦」の類義語 – 運任せや宿命
運に任せるしかない状況や、定められた運命といった考え方を示す言葉があります。
- 運次第(うんしだい)/ 運任せ(うんまかせ):結果が運によって決まること。
- 人事を尽くして天命を待つ(じんじをつくしててんめいをまつ):人間としてできる最大限の努力をしたら、あとは静かに天の定めた運命を待つこと。(努力を前提とする点が異なるが、最終的に天に任せる点で類似)
- 天命(てんめい):天から与えられた命令や運命。人間の力では変えられないもの。
- 宿命(しゅくめい):前世から定まっている運命。避けることのできない運命。
- 一か八か(いちかばちか):結果はどうあれ、運を天に任せて思い切ってやってみること。(行動を伴う点が異なるが、運に任せる点で関連)
- 他力本願(たりきほんがん):本来は仏の力に頼ることだが、俗に自分の努力ではなく他人や運に頼ること。(人任せ・運任せのニュアンスで関連)
- ケセラセラ (Que Sera, Sera):「なるようになる」という意味のスペイン語由来の言葉。運命を受け入れる態度。
「運否天賦」の対義語 – 自力や計画性
運命に身を任せるのではなく、自らの力で道を切り開こうとする考え方や、計画性を持って物事を進める態度が対照的です。
- 人事を尽くす(じんじをつくす):人間としてできる限りの努力をすること。
- 自力本願(じりきほんがん):他者の助けを借りず、自分の力で目的を達成しようとすること。
- 自らの手で切り開く:運命などに頼らず、自分の努力で未来や道を創り出すこと。
- 計画的:あらかじめ計画を立てて物事を行うさま。
- 主体的:自分の意志や判断に基づいて行動するさま。
「運否天賦」の英語での類似表現
英語で、「運命に任せる」「なるようになる」といったニュアンスを表す表現です。
- leave it to chance / fate / destiny
意味:それを偶然/運命/宿命に任せる。 - it’s in the lap of the gods
直訳:それは神々の膝の上にある。
意味:結果は神のみぞ知る、人間の力ではどうにもならない。 - Que Sera, Sera (Whatever will be, will be)
意味:なるようになる。(スペイン語由来だが英語圏でも使われる) - what will be, will be
意味:起こるべきことは起こる、なるようになる。
まとめ – 運命を受け入れる心
「運否天賦」は、人生における幸運も不運も、全ては天の采配によるもので、人間の力ではコントロールできない、という運命観を示す四字熟語です。
この言葉は、時として「どうせ運命なら努力しても無駄だ」という諦めや、「結果は天に任せよう」という開き直りの心境を表すことがあります。
そのため、使う場面によっては、努力を放棄したり、責任から逃れたりしているように受け取られる可能性もある点には注意が必要です。
しかし、一方で、自分の力ではどうにもならないことがあるという事実を受け入れ、人事を尽くした後は、過度に結果に執着せず、天の意志に身を委ねるという、ある種の心の平穏や強さにつながる考え方とも言えます。
人生における不可抗力と向き合う際の、一つの捉え方を示唆する言葉と言えるでしょう。
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