意味
「多勢に無勢(たぜいにぶぜい)」とは、人数の多い方が圧倒的に有利で、少人数では太刀打ちできない状況を意味します。
単に相手が強いというだけでなく、軍勢の規模に絶望的な差があり、勝負の結果が戦う前から明らかであるという冷徹な事実を指す言葉です。
個人の能力や精神力ではどうにもならない物理的な物量の壁を前にした、諦めや無力感といったニュアンスが含まれます。
語源・由来
「多勢に無勢」は、鎌倉時代の軍記物語『平家物語』で、合戦での兵の数の差を語る言葉として使われています。
古くから武士の合戦における兵力の不均衡を表現する実務的な言葉として定着しました。
近代の小説では、中勘助『銀の匙』(1913〜15年)に、仲間はずれにされた子どもが大勢にからかわれる場面で「多勢に無勢でたうとう泣きだして机につつぷしてしまつた」とあります。
合戦の言葉が、子ども同士のいさかいにも使われています。
使い方・例文
「多勢に無勢」は、自らの努力や正当性とは無関係に、単に相手の数が多いという理由で状況が詰んでいる場面で使われます。
- 多数決で意見を押し切られ、多勢に無勢で引き下がる。
- 小さな商店が大企業に挑むのは、多勢に無勢な戦いだ。
- 十人の相手に一人で挑んでも、多勢に無勢で勝ち目はない。
読み方の注意点
「無勢」を「むぜい」と読むのは間違いです。
この場合は「ぶぜい」と濁って読みます。
また、「多勢」も「たせい」ではなく「たぜい」と濁って読むのが一般的です。
類義語・関連語
「多勢に無勢」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 衆寡敵せず(しゅうかてきせず):
少人数は大人数にどうしてもかなわない様子。 - 蟷螂の斧(とうろうのおの):
弱者が実力も考えず強者に立ち向かう無謀な様子。 - 卵を以て石に投ず(たまごをもって いしにとうず):
自分から破滅するような無謀で報われない状態。
「多勢に無勢」と「衆寡敵せず」の違い
| 言葉 | ニュアンスの違い | 主な使用シーン |
|---|---|---|
| 多勢に無勢 | 相手が多人数で、少人数では勝ち目がない | 日常会話、ビジネス、スポーツ |
| 衆寡敵せず | 少数は多数にかなわない(漢文訓読の言い回し) | 公的なスピーチ、文章、学術的解説 |
対義語
「多勢に無勢」と反対の意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
英語表現
be outnumbered
意味:数で圧倒されている状態。
We were outnumbered by the opponents.
(私たちは相手に数で圧倒されていた。)
「多勢に無勢」の「勢」は軍勢のこと
現代では「大勢(おおぜい)」のように単に人の多さを表す言葉として使われますが、この熟語に含まれる「勢」という漢字は、もともと軍勢、つまり兵の集まりを指していました。
「多勢」は人数の多い軍勢、「無勢」は人数の少ない軍勢を指します。
この場合の「無」は存在がゼロという意味ではなく、「極めて少ない」「微力である」という限定的なニュアンスを含んでいます。
「加勢(かせい)」という言葉も、単に勢いをつけることではなく、具体的に「兵員を補充する」という実利的な援軍を意味していました。










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