意味
「一粒万倍(いちりゅうまんばい)」とは、一粒の種籾が成長して万倍もの米を実らせるという意味です。
転じて、わずかな元手や努力で非常に大きな利益や結果を得る状態を表します。
主に仕事での成功や、新しい挑戦を後押しするような前向きな感情とともに使われます。
- 一粒(いちりゅう):ひと粒の種。
- 万倍(まんばい):数が一万倍に増えること。
語源・由来
「一粒万倍」は、仏典の一節に由来するとされる言葉です。
もとは、一粒の種を蒔けば万倍に実るという、田を耕して得られる利益をそのまま言ったものです。
出典は仏典『報恩経』巻四で、財を得るにはどの仕事が最も優れているかを問われた大臣の一人が答えた、次の言葉です。
世間求利、莫先耕田者、種一萬倍
(世間、利を求むるに、田を耕す者に先んずるは莫し。一を種ゑて万倍す)
使い方・例文
「一粒万倍」は、小さな投資や地道な努力が将来の大きな成功に繋がると期待する場面で使われます。
- あの少額の投資が成長し、まさに一粒万倍の利益を生み出した。
- 日々の地道な努力が、やがて一粒万倍の成果となって表れるはずだ。
- 一粒万倍を信じて、まずは毎朝一冊の本を読むことから始めるのだ。
誤用・注意点
この言葉は「利益が増える」という良い意味で使われることがほとんどですが、少しのものも粗末にしてはいけないという戒めや、もったいないという気持ちを表す際にも使われます。
また、「一粒万倍」は稲の別名でもあります。
暦としての「一粒万倍日」
現代において、この言葉はカレンダー上の選日である「一粒万倍日(いちりゅうまんばいび)」として広く親しまれています。
「何かを始めるのに最適な日」とされ、開業や仕事始め、財布の新調、宝くじの購入など、前向きな行動を起こすきっかけとして定着している風習です。
類義語・関連語
「一粒万倍」と同様に、少ない元手や労力で大きな結果を得ることを表す言葉には以下のようなものがあります。
- 一本万利(いっぽんばんり):
わずかな元金で大きな利益をあげる様子。 - 海老で鯛を釣る(えびでたいをつる):
わずかな労力や品物で大きな利益を得る例え。 - 濡れ手で粟(ぬれてであわ):
苦労せずに多くの利益を得る様子。
「一粒万倍」と「濡れ手で粟」の違い
どちらも大きな利益を得る点では共通していますが、そこに労力が伴うかどうかに決定的な違いがあります。
| 語句 | 労力の有無 | 言葉の印象 |
|---|---|---|
| 一粒万倍 (いちりゅうまんばい) | 種まき等の努力や投資が必要 | 前向きな期待や成果 |
| 濡れ手で粟 | 努力や苦労を一切伴わない | 不労所得やずるい儲け |
英語表現
「一粒万倍」の持つ、わずかな努力が大きな結果を生むというニュアンスに近い英語の表現を紹介します。
Great oaks from little acorns grow
小さなどんぐりからカシの大木が育つという意味から、すべての偉大な結果は小さな始まりから生じることを表すことわざ表現。
Don’t underestimate small efforts. Great oaks from little acorns grow.
(小さな努力を侮ってはいけない。一粒万倍、大木も小さなどんぐりから育つのだから。)
「一粒万倍」の出典で、太子は耕作の案を選ばなかった
『報恩経』の物語では、大臣が「種一萬倍」と答える場面より前に、善友太子が城の外で、耕された土から出てきた虫をカラスがついばむ様子を見て、「苦しいことだ」と嘆く場面があります。
その後、人々に施す財を自分の力で得ようとした太子が大臣たちに尋ね、最初の大臣が「種一萬倍」と答えました。
しかし太子が「唯此為快耳」(これこそ望むところだ)と応じたのは、耕作の答えではなく、海に入って摩尼宝珠という宝の玉を取れば、すべての人に望むだけ施せるという、別の大臣の答えでした。
「一粒万倍」のもとになった「種一萬倍」は、太子が選ばなかったほうの答えに出てくる言葉です。















コメント