下手の道具調べ

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ことわざ 慣用句
下手の道具調べ
(へたのどうぐしらべ)

9文字の言葉へ・べ・ぺ」から始まる言葉
下手の道具調べ 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

新しい趣味に挑戦するとき、思うように上達せず「もっと良い道具を使えば上手くなるはずだ」と最新の機材を買い揃えたくなる。
あるいは、自分のミスを棚に上げて「この道具の使い勝手が悪いせいだ」と不満を漏らしてしまう。
そんな、実力が伴わない人ほど道具のせいにしたり、形から入ろうとしたりする滑稽な様子を、「下手の道具調べ」(へたのどうぐしらべ)と言います。

意味・教訓

「下手の道具調べ」とは、技術が未熟な人ほど、自分の腕前を省みずに道具の良し悪しを気にすることを意味します。

物事がうまく運ばない原因が自分自身のスキルの低さにあるにもかかわらず、それを認めようとせず、道具の品質や不備に責任を転嫁する様子を戒める教訓です。
また、実力が伴っていないのに、高級な道具ばかりを揃えたがる様子を揶揄(やゆ)する場合にも使われます。

  • 下手(へた):技術が未熟であること。
  • 道具調べ(どうぐしらべ):道具の品質を吟味したり、手入れをしたりすること。

語源・由来

「下手の道具調べ」の由来は、江戸時代の職人たちの仕事風景にあります。
腕の悪い職人が、仕事が捗らない理由を「ノミの切れ味が悪い」「金槌が使いにくい」などと道具のせいにして、仕事の手を止めて道具をいじってばかりいる様子を揶揄したことに由来します。

この言葉は、単なる職人の言い訳を指すだけでなく、「道具を整えること」で仕事をしているふりをする、人間の弱さを突いた言葉として広まりました。
その後、江戸いろはかるたの読み札の一つとして収録されたことで、特定の職業に限らず、日常生活全般で使われる教訓として定着しました。

使い方・例文

「下手の道具調べ」は、スポーツ、学習、仕事、趣味など、あらゆる上達の過程で使われます。
基本的には、自分や他人の「言い訳」や「過度な形からの入り」を批判的、あるいは自虐的に表現する際に用いられます。

例文

  1. スコアが伸びないのをラケットのせいにしたら、コーチから「下手の道具調べ」だと笑われた。
  2. 料理を始めたばかりの弟が最高級の包丁を欲しがるのは、まさに「下手の道具調べ」だ。
  3. 会議資料の出来が悪い理由をソフトのせいにするのは、「下手の道具調べ」で見苦しい。
  4. 「プロと同じ機材を揃えれば勝てる」と思い込むのは、「下手の道具調べ」に陥っている証拠だ。

誤用・注意点

「下手の道具調べ」は、道具を大切にすることや、準備を念入りにすることを否定する言葉ではありません。
一流のプロが最高のパフォーマンスを出すために道具を厳選することは、むしろ称賛されるべき行為です。

あくまでも、「自分の実力不足を隠すための言い訳」として道具を持ち出す場合にのみ使われる言葉です。
また、相手を「下手」だと決めつけるニュアンスが含まれるため、目上の人に対して使うのは失礼にあたるため注意が必要です。

類義語・関連語

「下手の道具調べ」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 下手の横好き(へたのよこずき):
    下手なくせに、そのことが非常に好きで熱心であること。
  • 下手な職人道具を恨む(へたなしょくにんどうぐをうらむ):
    腕の悪い職人に限って、失敗を道具のせいにするということ。
  • 下手の長談義(へたのながだんぎ):
    話が下手な人に限って、だらだらと長話をすること。

対義語

「下手の道具調べ」とは対照的な意味を持つ言葉には、実力者が道具を問わないことを示す言葉が選ばれます。

  • 弘法筆を選ばず(こうぼうふでをえらばず):
    本当の達人は道具の善し悪しにかかわらず立派に仕事を成し遂げるということ。
  • 能書筆を選ばず(のうしょふでをえらばず):
    字の上手な人は、どんな筆を使っても美しく書けるということ。

英語表現

「下手の道具調べ」を英語で表現する場合、以下の定型句が最も一般的です。

A bad workman quarrels with his tools.

  • 意味:「下手な職人は道具と喧嘩する」
  • 解説:自分の技術不足を棚に上げて、道具に不満を言う様子を表します。日本語の「下手の道具調べ」と完全に一致する英語のことわざです。
  • 例文:
    Stop complaining about the computer. A bad workman quarrels with his tools.
    (コンピューターの文句を言うのはやめなさい。下手の道具調べというものだよ。)

いろはかるたに見る地域性

「下手の道具調べ」は江戸いろはかるたの「へ」の札ですが、実は地域によってこの「へ」の札の内容は異なります。
江戸、京都、大坂(上方)でそれぞれ異なることわざが採用されていました。

  • 江戸:下手の道具調べ(へたのどうぐしらべ)
  • 京都:箆より団子(へらよりだんご)
  • 大坂:下手の長談義(へてのながだんぎ)

江戸では職人気質を反映した「道具」が、大坂では社交の場を反映した「談義(お喋り)」が選ばれている点に、当時の地域文化の違いが表れていて興味深いトリビアと言えます。

まとめ

道具にこだわることは、上達への意欲の表れでもあります。
しかし、そのこだわりが自分の努力不足を隠すための言い訳になっていないか、あるいは本質的な技術向上から目を逸らす手段になっていないか。

「下手の道具調べ」という言葉は、そんな私たちの弱い心に気づかせてくれる、古くも新しい教訓と言えるでしょう。
道具を新調したくなったとき、一度立ち止まってこの言葉を思い出すことで、今自分が本当に磨くべきものは何なのか、冷静に見つめ直すきっかけになることでしょう。

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