これまで費やした時間や労力、お金が頭をよぎると、「今やめたらすべてが無駄になる」という執着から引き際を見失ってしまうことがあります。
しかし、見込みがないと分かった時点で潔く手を引くことにこそ、大きな価値がある。
そのような教えを「見切り千両」(みきりせんりょう)と言います。
意味
「見切り千両」とは、見込みのない物事に早めに見切りをつけることは、千両にも値する賢明な判断だという意味の言葉です。
もともとは株式や商品取引において、損失が小さいうちに手放す、いわゆる損切りの重要性を説いた格言です。
現在では投資の世界にとどまらず、仕事のプロジェクトや人間関係など、あらゆる場面で固執せず早めに決断することの大切さを表す言葉として広く使われています。
語源・由来
江戸時代の米相場(取引)の世界で生まれた格言です。
相場において、買った時よりも価格が下がってしまった場合、「いつかまた上がるだろう」と期待して持ち続けると、さらに価格が下落して取り返しのつかない大損をしてしまうことがあります。
そのため、損失が小さいうちに潔く見切りをつけて売却することが、結果的に千両(大金)を得るのと同じくらい価値がある、という厳しい教訓から生まれました。
のちに「見切り千両、損切り万両」という言葉へと派生し、損切りの重要性をさらに強調する形でも広まりました。
使い方・例文
ビジネスにおける撤退の決断から、日常の片付けや悪習慣を断ち切る場面まで幅広く使われます。
- 赤字続きの事業から見切り千両で撤退する。
- 読まない本を見切り千両で思い切って処分した。
- 修理費がかさむ古い車を手放し、見切り千両とする。
- いつまでも上達しない趣味に見切り千両をつける。
誤用・注意点
「見切り千両」は、状況を冷静に見極めた上での「戦略的な撤退」を肯定する言葉です。
単なる飽きっぽさや、少し上手くいかないからといってすぐに投げ出すような、忍耐力のなさを正当化するために使うのは誤りです。
類義語・関連語
「見切り千両」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 損して得取れ(そんしてとくとれ):
一時的には損をしても、将来的に大きな利益を得るようにせよということ。 - 三十六計逃げるに如かず(さんじゅうろっけいにげるにしかず):
形成が不利なときは、あれこれ策を練るよりも、潔く逃げるのが最善の策であるということ。
対義語
「見切り千両」とは対照的に、諦めずに待つことや続けることの価値を説く言葉は以下の通りです。
- 石の上にも三年(いしのうえにもさんねん):
冷たい石の上でも三年座り続ければ暖かくなるように、辛抱すれば必ず成功することの例え。 - 待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり):
今は状況が悪くても、焦らずに待っていればそのうち良い機会が巡ってくるということ。
英語表現
「見切り千両」を英語で表現する場合、投資の世界でも日常でも使われる以下の定型句が適しています。
cut one’s losses
意味:損切りをする、早めに見切りをつける。
これ以上の損失を防ぐために、見込みのないものから手を引くというニュアンスを持ちます。
- 例文:
We should cut our losses and move on.
見切り千両で次に進むべきだ。
相場が生んだ、もう一つの知恵
「見切り千両」が生まれた相場の世界には、人生やビジネスにも通じる含蓄のある格言が数多く残されています。
「休むも相場」もその一つで、常に動き続けるのではなく、時には市場から離れて冷静に状況を見極めることも立派な戦略だという教えです。
引くべき時に引く勇気が、長期的な成功につながるという考え方は、現代にも色褪せず生きています。
まとめ
「見切り千両」は、見込みのない物事に早めに見切りをつけることの価値を説く言葉です。
これまで費やした時間やお金、いわゆるサンクコストに引きずられてしまうのは人間の自然な心理です。
しかしそこから手を引く決断こそが、これ以上の損失を防ぎ、新たな一歩を踏み出すための力を生み出してくれるのではないでしょうか。









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