三十六計逃げるに如かず

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ことわざ 故事成語
三十六計逃げるに如かず
(さんじゅうろっけいにげるにしかず)

16文字の言葉さ・ざ」から始まる言葉

勝ち目のない勝負に固執し、取り返しのつかない大損害を被ってしまう。
あるいは、苦手な相手と真っ向からぶつかり、精神的にすり減ってしまう。
そのような状況下で、あえて「引く」という選択ができるのは、一つの勇気ある決断です。
窮地に追い込まれた際、無理をせず身を引くことの有効性を説く知恵。
それが、「三十六計逃げるに如かず」(さんじゅうろっけいにげるにしかず)です。

意味・教訓

「三十六計逃げるに如かず」とは、多くの計略がある中で、勝ち目がないときは逃げて身の安全を保つのが最上の策であるという意味です。

単に責任を放棄して逃げ出すという卑怯な意味ではありません。
状況が不利であることを冷静に判断し、再起を図るために一旦引くという「戦略的な撤退」を勧める教訓が含まれています。

語源・由来

「三十六計逃げるに如かず」の由来は、中国の歴史書である『南史』に見られる、南北朝時代の逸話にあります。

南朝宋の将軍である檀道済(たんどうせい)が、北魏との戦いで圧倒的な不利に陥った際、無理な戦闘を避けて鮮やかに軍を退却させたことがもとになっています。
当時の人々は「檀公の三十六の計略の中でも、逃げるのが一番の見どころだ」と称賛しました。

本来は、敵が強すぎて打つ手がないとき、無駄な犠牲を出さずに逃げることで、次の機会に勝利を収めるチャンスを残すという兵法の考え方から生まれた言葉です。
現在では、ことわざとして広く親しまれています。

使い方・例文

「三十六計逃げるに如かず」は、対人関係、学業、投資、そして趣味の世界まで、あらゆる「引き際」の判断が求められる場面で使われます。

例文

  • 相手が感情的になっていて話が通じないときは、「三十六計逃げるに如かず」で一旦その場を離れるのが賢明だ。
  • これ以上負けを認めずに勝負を続けるのは危険だと判断し、「三十六計逃げるに如かず」とばかりに会場をあとにした。
  • 「無理をして体調を崩すより、今は三十六計逃げるに如かずで、ゆっくり休むことが大切だよ」と母に諭された。

文学作品・メディアでの使用例

『三四郎』(夏目漱石)
主人公の三四郎が、複雑な人間関係や都会の喧騒から距離を置こうとする文脈、あるいは友人との軽妙なやり取りの中で、この言葉が使われています。

「それじゃあ、三十六計逃げるに如かずだ」と言って、三四郎を連れて表へ出た。

類義語・関連語

「三十六計逃げるに如かず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 逃げるが勝ち(にげるがかち):
    無駄な争いを避けて逃げるほうが、結局は勝利や利益につながるということ。
  • 負けるが勝ち(まけるがかち):
    あえて相手に勝ちを譲ることで、争いを収めたり、最終的に自分の有利な結果に導いたりすること。
  • 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):
    面倒なことには関わらないほうが、災いに巻き込まれずに済むということ。

対義語

「三十六計逃げるに如かず」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 背水の陣(はいすいのじん):
    一歩も退けない絶体絶命の状況で、必死の覚悟で困難に立ち向かうこと。
  • 不撓不屈(ふとうふくつ):
    どんな困難に出会っても、決して意志を曲げず、くじけないこと。

英語表現

「三十六計逃げるに如かず」を英語で表現する場合、以下の表現がよく使われます。

He who fights and runs away may live to fight another day.

  • 意味:「戦って逃げる者は、また戦う日のために生き延びることができる」
  • 解説:一時的に逃げることは恥ではなく、将来の勝利のための戦略であるというニュアンスが、日本語の「三十六計」と非常に近いです。
  • 例文:
    I decided to withdraw from the deal. He who fights and runs away may live to fight another day.
    (取引から身を引くことに決めた。三十六計逃げるに如かず、だ。)

戦略的撤退という考え方

「逃げる」という言葉には、どこか消極的でネガティブな印象がつきまといます。
しかし、この言葉の背景にあるのは、状況を客観的に分析する「冷静さ」と、自分の心身や資源を守る「自己管理」の知恵です。

現代社会においても、無理なノルマや過剰な人間関係によって限界を感じることは少なくありません。
そんなとき、ただ耐え続けるのではなく、一旦距離を置いて自分を立て直すことは、決して弱さではありません。
この言葉を知っておくことで、いざというときに自分を守るための「選択肢」を一つ増やすことができるはずです。

まとめ

「三十六計逃げるに如かず」は、どうにもならない窮地に陥ったとき、最も賢明な判断は「逃げること」であると教えてくれる言葉です。
それは無責任な逃避ではなく、次の一歩を踏み出すための、前向きな決断と言い換えることもできます。

人生のあらゆる場面において、押してだめなら引いてみる。
そんな柔軟な思考を持つことで、より健やかに、そしてしなやかに困難を乗り越えていけるようになることでしょう。

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