意味
「いずれ菖蒲か杜若」は、二つのものがどちらも優れていて優劣がつけがたいという意味です。
美しく咲き誇る菖蒲と杜若が、どちらも魅力的で選びがたい様子にたとえています。
語源・由来
室町時代成立の『太平記』に記された武将・源頼政の逸話に由来します。
鵺(ぬえ)退治の功績で鳥羽院から美女・菖蒲御前を賜る際、よく似た美女たちの中から本物を選ぶよう命じられました。
困惑した頼政が「五月雨に沢辺の真薦水越えていづれ菖蒲と引きぞ煩ふ(水かさが増し、どれが菖蒲か選べないように私にも分かりません)」と詠んだ和歌に院が感心し、無事に本物を与えられた故事に基づきます。
使い方・例文
「いずれ菖蒲か杜若」は、複数の対象がどれも優れており、評価や選択に迷う場面で使われます。
- 最終選考に残った二つの企画案はいずれ菖蒲か杜若で、審査員を悩ませた。
- 姉妹揃って見目麗しく、まさにいずれ菖蒲か杜若の姉妹である。
- 老舗旅館の海鮮料理と肉料理、いずれ菖蒲か杜若でどちらから箸をつけるか迷う。
誤用・注意点
双方のレベルが低く大差がない状況を指して「いずれ菖蒲か杜若」と用いるのは誤りです。
必ず「どちらも優れている」という肯定的な意味で使われます。
また、漢字表記において「燕子花」の字を当てるのは一般的ではなく、「杜若」とするのが通例です。
類義語・関連語
「いずれ菖蒲か杜若」と似た意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
- 春蘭秋菊(しゅんらんしゅうぎく):
春の蘭と秋の菊のように、どちらも美しく優劣がつけがたいこと。 - 兄たり難く弟たり難し(けいたりかたくていたりかたし):
双方の実力や才能が拮抗しており、優劣の順位を決められない状態。 - 甲乙つけがたい(こうおつつけがたい):
どちらが優れているか、第一席と第二席の判断を下すのが困難な様子。 - 伯仲(はくちゅう):
互いの力や能力が釣り合っており、はっきりとした差がないこと。
対義語
「いずれ菖蒲か杜若」と反対の意味を持つ言葉には以下のようなものがあります。
- 月とスッポン(つきとすっぽん):
二つのものを比較した際、価値や性質がかけ離れており全く釣り合わないこと。 - 雲泥の差(うんでいのさ):
天の雲と地の泥ほど、両者の間に極めて大きな隔たりがある状態。 - 提灯に釣鐘(ちょうちんにつりがね):
形は似ていても、重さや価値などが根本的に異なり比較にならない様子。
英語表現
Hard to choose between them
意味:複数の優れた選択肢があり、一つを選ぶのが困難な状況。
Both dresses look great on you. It’s hard to choose between them.
(どちらのドレスもよく似合っていて、選ぶのが難しい。)
Six of one and half a dozen of the other
直訳:一方が6つで、他方が半ダース
意味:二つのものに明確な違いや差がほとんど見られない状態。
Shall we take the bus or the train? It’s six of one and half a dozen of the other.
(バスにするか電車にするか。どちらも大差ない。)
美女の見分けを命じられた武将の和歌
「いずれ菖蒲か杜若」の由来は、南北朝時代に成立した軍記物語『太平記』に記された、武将・源頼政の逸話にあります。
頼政は宮中を騒がせていた鵺(ぬえ)という怪物を退治した褒美として、鳥羽院から美女・菖蒲前を賜ることになりました。
ところが院は、菖蒲前によく似た女性たちを何人も並べ、その中から本人を見分けるよう頼政に命じます。
困り果てた頼政は「五月雨に沢辺の真薦水越えて いづれ菖蒲と引きぞわづらふ」という一首の和歌を詠みました。
水につかった沢辺の真菰(水辺に生える草)と同じように見分けがつかず選びかねる、という意味を込めたこの歌に免じて、院は菖蒲前を頼政に与えたと伝えられています。
この故事から、優劣つけがたいものの中から一つを選びかねる様子を「いずれ菖蒲か杜若」と言うようになりました。










コメント