犬も歩けば棒に当たる

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ことわざ 慣用句
犬も歩けば棒に当たる
(いぬもあるけばぼうにあたる)

13文字の言葉」から始まる言葉
【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

何か新しいことを始めようと、一歩外へ踏み出してみる。
すると、思いもよらなかった素敵な出会いがあったり、反対に予想外のトラブルに巻き込まれたりすることがあります。
このように、行動がきっかけで偶然の出来事に遭遇することを、
「犬も歩けば棒に当たる」(いぬもあるけばぼうにあたる)と言います。

何もしなければ何も起きませんが、動き出すことで運命が回り始める。
この言葉には、古くから日本人が大切にしてきた「行動」への期待と、時として向けられる「戒め」の二つの側面が込められています。

意味・教訓

「犬も歩けば棒に当たる」とは、何か行動を起こせば、予期せぬ出来事に遭遇することのたとえです。

もともとは「災難」を指す言葉でしたが、現在では「幸運」の意味でも広く使われています。
具体的には、以下の二つの相反するニュアンスを持ちます。

  • 災難に遭うことの戒め
    出しゃばった真似をしたり、不用意に動き回ったりすると、思いがけない被害を受けるという警告。
  • 幸運を掴むことの励まし
    何事もじっとしていないで行動してみれば、思いがけないチャンスや幸運に巡り合えるという期待。

現代では、後者の「行動すれば良いことがある」というポジティブな意味合いで使われるのが一般的です。

語源・由来

「犬も歩けば棒に当たる」は、江戸時代の庶民の暮らしの中から生まれた言葉であり、「江戸いろはかるた」の読み札として採用されたことで、日本中に広く定着しました。

この言葉の風景は、江戸の町に溢れていた野良犬の姿を反映しています。
当時は犬が町中をうろつくのが当たり前で、不用意に歩き回る犬は、人間に棒で叩かれたり、追い払われたりすることがよくありました。
この日常的な光景から、本来は「出しゃばった真似をすれば、棒で叩かれるようなひどい目に遭う」というネガティブな警告として使われていました。

しかし、長い年月を経て庶民の間で使われるうちに、「棒に当たる」の「当たる」という言葉の響きが、富くじ(宝くじ)の当せんなどの「的中」を連想させるようになりました。
その結果、「動いていれば、いつか良いことにも突き当たる」という肯定的な解釈が加わり、現在のような「災難」と「幸運」の両方の意味を持つ言葉へと進化していったのです。

使い方・例文

「犬も歩けば棒に当たる」は、何らかの行動をした結果、意図しない出来事が起きた際に用いられます。
主に「たまたま動いた結果、ラッキーなことが起きた」という文脈で使われます。

例文

  • 散歩ついでに寄った古本屋で、探していた希少本を見つけた。まさに「犬も歩けば棒に当たる」だ。
  • 犬も歩けば棒に当たると言うし、まずは会場に行ってみなさい」と母に勧められた。
  • 偶然テレビで見た内容が試験に出て、「犬も歩けば棒に当たる」で高得点を取れた。
  • 余計な発言をして、面倒な係を引き受ける羽目になった。これでは「犬も歩けば棒に当たる」で災難だ。

文学作品・メディアでの使用例

『吾輩は猫である』(夏目漱石)

明治時代を代表するこの名作でも、主人公の猫がこのことわざを口にしています。
猫の視点から人間社会を冷ややかに、かつユーモラスに観察するシーンで登場します。

犬も歩けば棒に当たるなどと云うが、吾輩のごとき猫は歩いたって決して棒になどなそこない。第一棒と云うものを見た事がない。」

類義語・関連語

「犬も歩けば棒に当たる」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 歩く足には泥がつく(あるくあしにはどろがつく):
    行動をすれば何かしらの汚れも伴うが、何もしないよりは前進しているということ。
  • 怪我の功名(けがのこうみょう):
    失敗や過失だと思ったことが、偶然にも良い結果を生むこと。
  • 瓢箪から駒(ひょうたんからこま):
    思いもよらないところから、意外な良い結果が飛び出すこと。

対義語

「犬も歩けば棒に当たる」とは対照的な意味を持つ言葉は、以下の通りです。

  • 待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり):
    あちこち動き回らずに待っていれば、必ず良いチャンスが訪れるということ。
  • 果報は寝て待て(かほうはねてまて):
    幸運は自力で掴むものではなく、準備を整えたらあとは天命に任せて待つのが良いということ。
  • 動かざること山の如し(うごかざることやまのごとし):
    情勢を見極めるまでは、軽々しく動かずにどっしりと構えているべきだという考え。

英語表現

「犬も歩けば棒に当たる」を英語で表現する場合、ニュアンスに合わせて以下の定型表現が使われます。

A flying crow always catches something

  • 意味:「飛んでいるカラスは、常に何かを掴む」
  • 解説:活動的に動き回っている者には、何かしらの収穫があることを示します。
  • 例文:
    Don’t give up; a flying crow always catches something.
    (諦めないで。犬も歩けば棒に当たると言うからね)

Even a blind squirrel finds a nut once in a while

  • 意味:「目の見えないリスでも、たまには木の実を見つける」
  • 解説:特に狙っていなくても、行動を続けていれば偶然の幸運に巡り合うことがあるという意味です。
  • 例文:
    I didn’t expect to win the raffle, but even a blind squirrel finds a nut once in a while.
    (福引きに当たるとは思わなかった。犬も歩けば棒に当たる、だね)

豆知識:棒の正体と「い」の札

「犬も歩けば棒に当たる」の「棒」については、単なる道端の棒切れではなく、当時「犬追い」に使われていた「天秤棒(てんびんぼう)」や、夜回りの際に鳴らす「拍子木(ひょうしぎ)」を指していたという説があります。
いずれも、犬にとっては近づくと叩かれる危険な道具でした。

また、この言葉が「江戸いろはかるた」の最初である「い」の札に選ばれた理由は、諸説ありますが「非常に身近で、誰にでも情景が浮かびやすかったから」と言われています。
一方で、京都を中心とした「上方いろはかるた」では「い」の札が「一寸先は闇」となっており、地域によって最初に選ばれる教訓が異なっていたのも非常に興味深い点です。

まとめ

「犬も歩けば棒に当たる」は、行動することの不確実性と、そこから生まれる可能性を教えてくれる言葉です。
災難を恐れて立ち止まるのか、それとも幸運を信じて一歩を踏み出すのか。

どちらの解釈を選ぶにせよ、私たちの生活に変化をもたらすのは、いつだって具体的な「アクション」です。
何げない散歩の途中で拾った小さな幸運を「棒に当たった」と笑って受け入れられるような軽やかさこそが、この言葉の持つ本当の知恵と言えるかもしれません。

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