意味
「一寸先は闇(いっすんさきはやみ)」とは、ほんのわずか先でさえ闇に閉ざされて見通せないように、ごく近い将来に何が起こるか、誰にも予測できないという意味です。
「一寸」はわずかな距離や時間を指し、「闇」は先が見えない不透明な状態を象徴しています。
どれほど順調に見える時でも、常に不測の事態が起こりうるという人生の不確実性を説く言葉です。
そのため、決して油断をせず、万が一の事態に備えておくべきだという戒めとして用いられます。
語源・由来
「一寸先は闇」は、古くから庶民の間で人生の無常を言い表す言葉として親しまれてきました。
「一寸」は昔の長さの単位で約3センチメートルを指し、ここでは転じて「ほんのわずかな時間や距離」のたとえとして使われています。
「一寸(約3センチ)」という極めて短い距離ですら、何が潜んでいるか分からない暗闇であるという、当時の人々の普遍的な実感が込められています。
使い方・例文
「一寸先は闇」は、将来の不確実性について語る時や、予期せぬトラブルに見舞われた際の心境を表す時に使われます。
成功している最中の油断を戒める文脈や、事態の急変を嘆く場面で多く用いられます。
- 順調な時こそ一寸先は闇だと心得て、気を引き締める。
- 本番直前の怪我で、一寸先は闇だと痛感した。
- 完璧な計画を立てても、一寸先は闇で何が起きるか分からない。
類義語・関連語
「一寸先は闇」と似た意味を持つ言葉には、人生の移り変わりの激しさや予測不能な幸福・不幸を指す言葉があります。
- 人間万事塞翁が馬(にんげんばんじさいおうがうま):
人生の幸福や不幸は予測できず、何が幸いするか分からないという意味。 - 禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし):
災いと幸福は、より合わせた縄のように交互にやってくるものだという意味。 - 明日は明日の風が吹く(あしたはあしたのかぜがふく):
未来のことは考えても仕方がないという楽観的な言葉。
対義語
「一寸先は闇」とは対照的に、未来を見通す力や、事前に備える姿勢を示す言葉です。
英語表現
「一寸先は闇」を英語で表現する場合、未来の不透明さを強調する以下の表現が使われます。
The future is a closed book
「未来は閉ざされた本(未知のもの)だ」という言い回し。
将来のことは誰にも読めないという意味の表現。
Don’t worry too much; the future is a closed book.
(未来は何が起こるか分からないものだ。)
No one knows what tomorrow will bring
「明日何が起こるかは誰にも分からない」という、日本語の意味に近い表現。
You should prepare for the worst, as no one knows what tomorrow will bring.
(一寸先は闇だから、最悪の事態に備えておくべきだ。)
「一寸先は闇」は上方いろはかるたの「い」
「一寸先は闇」の古い例は、江戸前期の仮名草子『東海道名所記』(1659〜61年ごろ)にあります。
「一寸先は闇、命は露の間、あすをもしらぬうき世なるに」という一節で、少し先も見えず、命は露のようにはかなく、明日のことも分からない世の中なのに、という意味です。
この言葉は、上方(京都・大坂)のいろはかるたで「い」の札になりました。
ただし、上方のかるたの「い」で一番多いのは「いやいや三杯」(= 口では遠慮しながら、勧められるといくらでも飲み食いすること)で、「一寸先は闇」は上方のかるたの中でもどちらかというと古いものに多く見られます。
江戸のいろはかるたの「い」は「犬も歩けば棒に当たる」です。

昭和の政界では、自民党副総裁を長く務めた川島正次郎の「政界一寸先は闇」が名言として知られています。
今も、政局が急に動いた場面で、政治家が「政界の一寸先は闇」と口にすることがよくあります。
ほんの少し先のことも分からない、という「一寸先は闇」の意味を、政治の世界に当てはめた言い方です。














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