藪をつついて蛇を出す

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ことわざ 故事成語
藪をつついて蛇を出す
(やぶをつついてへびをだす)
短縮形:藪蛇(やぶへび)
異形:藪を突いて蛇を出す

12文字の言葉」から始まる言葉
藪をつついて蛇を出す 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

良かれと思ってやったことが、かえってトラブルの引き金になってしまった。
そっとしておけば問題なかったのに、余計な一言で相手を怒らせてしまった。

そんな「やらなきゃよかった」と後悔する状況を、
「藪をつついて蛇を出す」(やぶをつついてへびをだす)と言います。

一時の不注意が招く災難への戒めとして、古くから親しまれている言葉です。

意味

余計なことをして、かえって自分にとって悪い結果を招くことの例え。

「藪」とは草木の生い茂った場所のことです。何もしなければ安全だったのに、わざわざ棒などで藪をつついたせいで、潜んでいた蛇が出てきて噛みつかれるという愚かな行動を指しています。

現代では略して「藪蛇(やぶへび)」とも呼ばれ、日常会話ではこちらの形で使われることの方が多い言葉です。

語源・由来

「藪をつついて蛇を出す」の由来は、日本の里山における生活の実感から生まれたと言われています。

昔の人々にとって、草むら(藪)は身近な場所であり、同時にマムシなどの毒蛇が潜む危険な場所でもありました。「用もないのに不用意に草むらを刺激してはいけない」という、生活の知恵から自然発生した教訓です。

「打草驚蛇」との関係

日本独自の表現とは別に、中国の兵法書『兵法三十六計』にある「打草驚蛇(だそうきょうだ)」(草を打って蛇を驚かす)という言葉が元になっているという説もあります。

ただし、元の意味は少し異なります(後述の「豆知識」で解説)。
日本ではこの「打草驚蛇」が「藪蛇」と同じ意味(余計なことをして失敗する)で解釈され、混同されて定着したという側面もあります。

使い方・例文

自分や他人の「余計な行動」をたしなめたり、失敗を悔やんだりする場面で使われます。
特に「解決しかけている問題」や「静かにしている相手」に対して、わざわざ波風を立てるような行為に対してよく用いられます。

ビジネスシーンでも使われますが、友人関係や家庭内での「余計なお節介」に対して使われることも多い、生活に密着した言葉です。

例文

  • 彼が忘れていた借金の話題をわざわざ出してしまい、まさに「藪蛇」だった。
  • 機嫌が悪い上司に有給の相談をするなんて、「藪をつついて蛇を出す」ようなものだ。
  • 掃除を手伝おうとして皿を割ってしまい、母に「藪蛇」だと叱られた。

誤用・注意点

目上の人への使用リスク

自分自身の失敗に対して「藪蛇でした」と使うのは問題ありません。
しかし、目上の人の行動に対して「それは藪蛇ですよ」と指摘するのは、「余計なことをしましたね」という意味になるため失礼にあたります。使用する相手や状況には十分な注意が必要です。

類義語・関連語

「藪をつついて蛇を出す」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 寝た子を起こす(ねたこをおこす):
    静かに収まっている物事に余計な手出しをして、再び問題(騒ぎ)を起こしてしまうこと。最も意味が近い表現です。
  • 雉も鳴かずば撃たれまい(きじもなかずばうたれまい):
    余計なことを言わなければ、災難を招かずに済んだということ。こちらは「不用意な発言」に焦点を当てています。
  • 草を打って蛇を驚かす(くさをうってへびをおどろかす):
    「藪蛇」の同義語として使われる言葉。「打草驚蛇」の書き下し文です。

対義語

「藪をつついて蛇を出す」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 触らぬ神に祟りなし(さわらぬかみにたたりなし):
    余計な手出しをしなければ、災いに関わり合いになることはないということ。「何もしない」ことを推奨する処世術です。
  • 君子危うきに近寄らず(くんしあやうきにちかよらず):
    教養のある徳の高い人は、危険な場所や行動を慎み、自ら災いを招くようなことはしないということ。

英語表現

「藪をつついて蛇を出す」を英語で表現する場合、以下のフレーズがよく使われます。

Let sleeping dogs lie.

  • 直訳:寝ている犬は寝かせておけ
  • 意味:「寝た子を起こすな」「藪蛇になるようなことはするな」
  • 解説:最も一般的な表現です。静かにしている問題を蒸し返すな、という意味で使われます。
  • 例文:
    Don’t mention his ex-girlfriend. Let sleeping dogs lie.
    (彼の元カノの話はするな。藪をつついて蛇を出すな。)

兵法としての「藪蛇」

日本のことわざとしては「余計なことをして失敗する」という意味ですが、
語源の一つとされる中国の「打草驚蛇(だそうきょうだ)」には、実は全く逆の賢い使い方が存在します。

本来は「偵察テクニック」

中国の『兵法三十六計』における「打草驚蛇」は、「あえて草むらを叩いて、隠れている敵(蛇)の反応を見る」という高度な偵察戦術を指します。

つまり、「不注意で蛇を出してしまう(失敗)」のではなく、「相手の正体がわからない時は、挑発して動きを見極めよ(成功のための作戦)」という意味なのです。

言葉は海を渡るうちに意味が変化することがありますが、「藪蛇」もその一つ。
本来は「将軍の知恵」だったものが、日本では「庶民の失敗談」として定着したというのは面白い変遷です。

まとめ

余計な手出しをして災いを招く「藪をつついて蛇を出す」。

良かれと思ってやったことでも、タイミングや状況を見誤れば、かえって事態を悪化させてしまうことがあります。
何か行動を起こす前には、一度立ち止まって「これは藪蛇にならないか?」と自問する冷静さも、時には必要と言えるでしょう。

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