沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり

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ことわざ
沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり
(しずむせあればうかぶせあり)

13文字の言葉し・じ」から始まる言葉
沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

物事が思うようにいかない時期が続くと、つい悲観的になってしまうものです。
しかし、激しい雨がいつか上がるように、人生の苦境もまた永遠には続きません。
人の運命を絶え間なく流れる川にたとえ、不遇の時も希望を捨てないよう説いたのが、「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」(しずむせあればうかぶせあり)という言葉です。

意味

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」とは、人生には良い時もあれば悪い時もあるというたとえです。
世の中の状況は常に変化しており、不幸な時期の次には必ず幸運が巡ってくることを意味します。

単に「浮き沈みがある」という事実を示すだけでなく、今は苦しくてもいずれは浮かび上がれるという希望や励ましのニュアンスを込めて用いられます。

語源・由来

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」の由来は、川の流れの物理的な構造にあります。

川には、水が深く淀んでいて物が沈み込みやすい「淵(ふち)」のような場所がある一方で、水が浅く流れが速いために、沈んでいたものが再び水面に現れる「瀬(せ)」のような場所が存在します。
この自然の理を、予測できない人の一生や運勢の波に当てはめたものです。

江戸時代の浄瑠璃や歌舞伎など、近世以降の文学作品でも「人生の無常」を象徴するフレーズとして頻繁に使用され、民衆の間に定着しました。
なお、一部で「いろはかるた」が起源とされることがありますが、かるたはあくまで言葉を収録した媒体であり、起源そのものではありません。

使い方・例文

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」は、不運に見舞われている自分や他人に対し、現状が一時的なものであることを示唆する際に使われます。

例文

  • 第一志望に落ちて気落ちしていたが、「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」と言い聞かせて次の目標へ向かった。
  • 「商売が傾いて苦しいだろうが、沈む瀬あれば浮かぶ瀬ありだ。今こそ踏ん張りどころだよ」
  • 記録が伸びずに悩む後輩に、長い競技人生には沈む瀬あれば浮かぶ瀬ありだから焦るなと助言した。
  • 長年連れ添った夫婦が、「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」の波瀾万丈な日々を笑って振り返った。

文学作品・メディアでの使用例

『パンドラの匣』(太宰治)

戦後の混乱期を背景に、結核療養所での日々を綴った書簡体小説の中で、人生の機微を表す言葉として登場します。

沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり、と申しますから、どうか御大切に。
(太宰治『パンドラの匣』より引用。沈む瀬あれば浮かぶ瀬ありの部分を強調)

類義語・関連語

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」と似た意味を持つ言葉は、人生の多面性を説くものが中心です。

  • 禍福は糾える縄のごとし(かふくはあざなえるなわのごとし):
    幸福と不幸は、より合わせた縄のように表裏一体で交互にやってくるということ。
  • 人間万事塞翁が馬(じんかんばんじさいおうがうま):
    人生の何が幸いし、何が災いするかは予測できないということ。
  • 浮き沈み七度(うきしずみななたび):
    人生には、浮き上がる時も沈む時も何度もあるということ。
  • 楽あれば苦あり(らくあればくあり):
    楽しいことの後には苦労があり、苦労の後には楽しみがあるということ。

英語表現

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」を英語で表現する場合、以下の表現が適しています。

Life is full of ups and downs.

  • 意味:「人生は浮き沈みに満ちている」
  • 解説:最も日常的で、良い時(ups)と悪い時(downs)が交互に来るニュアンスを正確に伝えます。
  • 例文:
    Don’t give up so easily. Life is full of ups and downs.
    (そう簡単に諦めるな。人生には浮き沈みがあるものだ。)

Every cloud has a silver lining.

  • 意味:「どんな雲も裏側は銀色に光っている」
  • 解説:どんなに暗い状況(雲)でも、必ずどこかに希望の光があるという励ましの定型表現です。
  • 例文:
    I know things are hard right now, but remember, every cloud has a silver lining.
    (今は辛いだろうけれど、どんな困難にも明るい兆しはあるものだよ。)

語順のバリエーション

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」は、時代や作品によって「浮く瀬あれば沈む瀬あり」と逆の語順で使われることもあります。

近世の物語などでは、絶頂期にある者への戒め(=良い時は長く続かない)として「浮く瀬」から語られることが多くありました。
しかし現代では、不遇な状況からの脱却を願う文脈で使われることが多いため、「沈む瀬」から始める形が一般的になっています。
言葉は時代とともに、人々が求める「救い」の形に合わせてその姿を少しずつ変えてきたと言えるかもしれません。

まとめ

人生の波に飲まれ、深く沈み込んでしまったように感じる瞬間は誰にでもあるものです。
しかし、川の流れが止まらないように、私たちの運命もまた一箇所に留まることはありません。

今は不遇の「淵」にいたとしても、その先には必ず明るい光が差す「瀬」が待っています。
「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」という言葉を心に留めておくことで、困難な時期を乗り越えるための、静かな勇気が湧いてくることでしょう。

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