門前雀羅を張る

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ことわざ 慣用句 故事成語
門前雀羅を張る
(もんぜんじゃくらをはる)

11文字の言葉」から始まる言葉

かつては多くの人で賑わっていた場所が、今ではすっかり静まり返っている。そんな光景を見て、一抹の寂しさを感じたことはないでしょうか。

門前雀羅を張る」は、まさにそのような、かつての繁栄が嘘のように寂れてしまった様子を表す言葉です。

「門前雀羅を張る」の意味・教訓

「門前雀羅を張る(もんぜんじゃくらをはる)」とは、訪ねてくる人がまったくなく、門の前には雀(すずめ)を捕らえる網(羅=ら)を張ることができるほど、ひっそりと寂れている様子を意味します。

単に人がいない状態というよりも、かつては権力や富があり多くの人が訪れていたのに、今では落ちぶれて誰も寄り付かなくなったという、栄枯盛衰の「衰」の部分や、世の無常さを強調するニュアンスで使われることが多い言葉です。

「門前雀羅を張る」の語源

この言葉は、中国の歴史書である司馬遷の『史記』や、班固の『漢書』にある故事に由来します。

前漢の時代、翟公(てきこう)という役人がいました。彼が高い地位にあった時は、屋敷の門が壊れるほど多くの訪問客で溢れていましたが、彼が職を失い権力をなくした途端、客はぱったりと来なくなり、門の前に雀を捕る網を張れるほど閑散としてしまいました。

その後、彼が再び高い地位に復帰すると、人々はまたぞろ集まり始めました。
翟公は、この経験から世態炎涼(世間の人情の移ろいやすさ)を嘆き、門に「盛衰の移り変わりを身をもって知った今、二度と客は断らない」という趣旨の貼り紙をしたと伝えられています。

「門前雀羅を張る」の使い方と例文

かつては繁栄していた家、店、組織などが、今ではすっかり寂れてしまった状況を描写する際に使われます。特に、権力や人気を失ったことによる変化を強調する場合に効果的です。

例文

  • 「あれほど流行っていたレストランも、近くに新しい店ができてからは「門前雀羅を張る」状態だ。」
  • 「彼が社長を退任した途端、あれだけひっきりなしだった訪問客が途絶え、屋敷は「門前雀羅を張る」ありさまだという。」
  • 「一世を風靡したあの大物政治家の事務所も、今や「門前雀羅を張る」寂しさだ。」

類義語・関連語

「門前雀羅を張る」と似た、寂れた様子を表す言葉です。

  • 閑古鳥が鳴く(かんこどりがなく):
    人が来なくて商売がはやらず、寂しいさま。特に商売の不振について使われます。
  • 閑散(かんさん):
    ひっそりと静まりかえっていること。
  • 世態炎涼(せたいえんりょう):
    権力や富がある時はもてはやし、なくなると冷たくあしらうという、世間の人情の移り変わりやすさ。「門前雀羅を張る」状況を生む原因とも言えます。

対義語

繁盛している、多くの人が集まっている様子を表す言葉です。

  • 門前市を成す(もんぜんいちをなす):
    門の前が市場(いち)のように賑わっていること。訪問客が非常に多いことのたとえ。「門前雀羅を張る」の直接的な対義語とされます。
  • 千客万来(せんきゃくばんらい):
    ひっきりなしに多くの客が訪れること。
  • 殷賑(いんしん):
    賑やかで栄えていること。

英語での類似表現

「門前雀羅を張る」の「訪問客が誰もいない、寂れている」という状況を表す英語表現です。

gather dust

  • 意味:「ほこりを集める(=ほこりが積もる)」
  • 解説:長い間使われず、あるいは放置されて、ほこりが積もっている様子。転じて、人から忘れ去られている、人気がない状態を指します。
  • 例文:
    The once-popular theater is now closed and just gathering dust.
    (かつて人気だったその劇場も、今や閉鎖され、ほこりをかぶっているだけだ。)

have few visitors

  • 意味:「訪問者がほとんどいない」
  • 解説:文字通り、訪れる人が少ないことを示す直接的な表現です。
  • 例文:
    Since the new bypass opened, the old shop has few visitors.
    (新しいバイパスが開通して以来、その古い店には訪問者がほとんどいない。)

まとめ – 「門前雀羅を張る」から学ぶ世の常

「門前雀羅を張る」は、かつての繁栄が嘘のように、訪れる人もなく寂れてしまった様子を表す故事成語です。

この言葉の由来となった翟公の物語は、権力や富といった目に見えるものに集まってくる人々の移ろいやすさ、すなわち「世態炎涼」を私たちに教えてくれます。

人の世の無常さや栄枯盛衰の厳しさを、わずか七文字で鮮やかに切り取った言葉と言えるでしょう。

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