人情紙のごとし

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ことわざ 故事成語
人情紙のごとし
(にんじょうかみのごとし)

11文字の言葉」から始まる言葉

親しくしていたはずの人との関係が、ふとしたきっかけで驚くほどあっけなく壊れてしまった、そんな経験はありませんか。

人情紙のごとし(にんじょうかみのごとし)」とは、まさにそのような人間の心の移ろいやすさ、関係の儚さ(はかなさ)を鋭く指摘した言葉です。

「人情紙のごとし」の意味・教訓

「人情紙のごとし」とは、人の情愛や人間関係は、紙のように薄く、もろく、変わりやすいものだ、という意味です。

紙が簡単に破れたり、濡れると使い物にならなくなったりするように、人間の情愛や義理も、利害関係や時の流れによって簡単になくなってしまうという、世の中の冷たさや人間関係の浅薄さを表しています。

「人情紙のごとし」の語源

この言葉の明確な出典(いつ、誰が言い始めたか)は定かではありませんが、江戸時代のことわざを集めた「いろはかるた」の「京かるた」に含まれており、古くから庶民の感覚として定着していたとされます。

「人情」を「紙」にたとえたのは、その「薄さ」と「破れやすさ」からです。利益があるうちは親しくても、状況が変わればすぐに冷たくなる人間の性質を、紙の物理的なもろさに重ね合わせています。

「人情紙のごとし」の使い方と例文

お金の貸し借り、出世争い、あるいは単に疎遠になった時など、相手の冷たい態度や裏切りに直面し、人間関係の儚さを痛感した際に使われます。
やや皮肉的、あるいは諦観(ていかん)のこもったニュアンスで用いられることが多い言葉です。

例文

  • 「彼にお金を貸した途端に連絡が取れなくなった。まさに人情紙のごとしだ。」
  • 「社長が交代した途端、あれほど前社長を慕っていた幹部たちが手のひらを返した。人情紙のごとしとはこのことか。」
  • 「落ち目になったとたん、人が離れていくのは寂しいものだ。人情紙のごとしを実感するよ。」

類義語・関連語

  • 世態炎涼(せたいえんりょう):
    世間の人情は、権力や富がある時は炎のように熱心に近づき、それがなくなると水のように冷たくなること。「人情紙のごとし」とほぼ同じ状況を指す四字熟語。
  • 金の切れ目が縁の切れ目(かねのきれめがえんのきれめ):
    お金が人間関係をつないでいるだけで、お金がなくなれば関係も終わるということ。より金銭関係に特化した表現。
  • 去る者は日々に疎し(さるものはひびにうとし):
    親しかった人でも、遠ざかってしまうと次第に関係が薄れていくこと。関係の「もろさ」よりも「風化」に焦点がある。
  • 昨日の友は今日の敵(きのうのともはきょうのてき):
    昨日まで親友だった人が、今日は敵になってしまうこと。人情の変わりやすさを端的に示す言葉。

対義語

  • 管鮑の交わり(かんぽうの交わり):
    互いを深く理解し合った、きわめて親密な友情のこと。
  • 水魚の交わり(すいぎょのまじわり):
    水と魚のように、切り離せない親密な関係のこと。
  • 金石の交わり(きんせきのまじわり):
    金や石のように堅く変わることのない、強固な交友関係。

英語での類似表現

Fair-weather friend

  • 意味:「都合の良い時だけの友人」
  • 解説:直訳すると「良い天気(fair weather)の時の友人」。つまり、自分が順調な時や楽しい時にはそばにいるが、困難な状況(bad weather)になると去っていく人を指します。「人情紙のごとし」という状況を作り出す、薄情な人間関係を象徴する表現です。
  • 例文:
    When I lost my job, I realized how many fair-weather friends I had.
    (職を失った時、私にはいかに「都合の良い時だけの友人」が多かったかを思い知らされた。)

People are fickle

  • 意味:「人は移り気だ」
  • 解説:「fickle」は「(考えや愛情が)変わりやすい、気まぐれな」を意味する形容詞です。「人情紙のごとし」の「変わりやすさ」という側面に焦点を当てた、直接的な表現です。
  • 例文:
    Popularity is temporary because people are fickle.
    (人の人気は一時的なものだ。なぜなら人は移り気だから。)

使用上の注意点

この言葉は、人間関係の冷たさや儚さを指摘する、ややシニカル(皮肉的)でペシミスティック(厭世的)な響きを持ちます。

そのため、他人の人間関係を軽々しく論評したり、相手を非難したりする文脈で使うと、冷たい印象や不快感を与える可能性があります。主に、自分自身の経験を省みたり、世の常として客観的に述べたりする際に使うのが適しています。

まとめ – 「人情紙のごとし」から学ぶ知恵

「人情紙のごとし」は、人間関係の冷たい一面を切り取った、やや寂しい言葉です。

しかし、この言葉は「だから人を信用するな」と言っているだけではありません。
紙のように薄い関係が多い世の中だからこそ、そうではない「金石の交わり」のような、誠実で強固な関係がいかに貴重であるかを教えてくれる、処世術(しょせいじゅつ)の知恵とも言えるでしょう。

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