意味
「門前市を成す(もんぜんいちをなす)」とは、訪問客が非常に多くて賑わっている様子のたとえです。
家の門の前が市場(いち)のように混雑し、活気に溢れている状態を指します。
単に人が多いだけでなく、その場所や人物の人気が高いこと、あるいは商売や権勢が極めて盛んであることを肯定的に評価する際に使われます。
語源・由来
「門前市を成す」のもとになった表現は、中国の古典に見られます。
『漢書』鄭崇伝には、前漢の鄭崇が、家に人が多く出入りしていることを皇帝に責められて答えた、次の言葉があります。
臣門如市、臣心如水
(私の家の門は市場のようですが、私の心は水のように清らかです。)
『戦国策』斉策にも、門の前が市場のようににぎわった話があります。
斉の威王が、「自分の過ちを指摘した者には褒美を与える」という布告を出しました。
すると、最初は王に意見を述べようとする人々が宮廷に殺到し、門の前が市場のように賑わったという話です。
また、前漢の翟公の逸話では、勢いがある時には客が門を埋め、失脚すると門の外に雀を捕る網が張れるほどになったと記されています。
門前の賑わいは、古くから栄枯を測るものさしとして使われてきました。
使い方・例文
「門前市を成す」は、評判の店や施設、あるいは実力者のもとへ人々が絶え間なく押し寄せる様子を表現する際に用いられます。
例文
- 「話題のパン屋は開店前から門前市を成す賑わいだ」
- 「名医と噂される診療所は連日門前市を成す混雑ぶりだ」
- 「大臣就任後、実家は陳情客で門前市を成す有様だ」
類義語・関連語
「門前市を成す」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
対義語
「門前市を成す」とは反対に、訪れる人が絶えて寂れている様子を表す言葉には、次のようなものがあります。
英語表現
「門前市を成す」を英語で表現する場合、以下の言い方があります。
be thronged with visitors
多くの人々が押し寄せ、ひしめき合っている状態を表す標準的な表現。
店や施設に人が殺到している状態を客観的に説明する際に向く。
The store is thronged with visitors looking for the new product.
(新商品を求める客で、その店は門前市を成す賑わいだ。)
be bustling with people
「活気に満ちて、せわしなく動いている」という賑わいを強調する表現。
場所全体の活気や、絶え間なく人が出入りする様子を伝える際に使う。
The clinic is bustling with people from early morning.
(その診療所は、朝早くから門前市を成す活気がある。)
『戦国策』の門前の市、発端は臣下の美男比べ
『戦国策』のこの話は、斉の臣下鄒忌の美男比べから始まります。
鄒忌は妻と妾と客に、斉で美男子として知られた徐公と自分のどちらが美しいかを尋ねました。
三人とも、鄒忌のほうだと答えました。
ところが徐公本人に会ってみると、とてもかないませんでした。
妻はひいきから、妾は恐れから、客は頼みごとがあるから、そう答えたのだ、と鄒忌は考えます。
そして、王の周りの者も同じで、王は本当のことを聞けていない、と威王を諫めました。
威王が過ちを指摘した者に褒美を出すと布告すると、次のようになったと書かれています。
令初め下り、群臣進諫し、門庭市の若し。
(命令が出てすぐは、多くの臣下が諫言に訪れ、門や庭は市場のようであった。)
話には続きがあり、数か月たつと意見を言いに来る人はときどきになり、一年たつと、もう言うべきことがなくなったといいます。
門前の市のようなにぎわいは、王が意見を聞き入れ始めたばかりの頃のことでした。










コメント