頭隠して尻隠さず

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ことわざ 慣用句
頭隠して尻隠さず
(あたまかくしてしりかくさず)

13文字の言葉」から始まる言葉

自分では完璧に隠したつもりでも、周囲からはその「ほころび」が丸見えになっている。
そんな滑稽な状況は、日常のいたる所で見受けられるものです。
自分自身の視界から消えただけで安心し、客観的な視点を忘れてしまった詰めの甘い様子。
まさに「頭隠して尻隠さず」(あたまかくしてしりかくさず)という言葉がぴったりの場面です。

意味・教訓

「頭隠して尻隠さず」とは、自分の欠点や悪事の一部だけを隠して、すべてを隠し通したつもりになっている愚かな様子を指します。
本人は安心していますが、周囲からは隠せていない部分がはっきりと見えているという、皮肉の混じった教訓を含む言葉です。

語源・由来

キジ

「頭隠して尻隠さず」の由来は、日本の国鳥としても知られるキジの習性にあります。
キジは敵に追われると、草むらの中に頭を突っ込んで隠れる性質があります。
しかし、キジには非常に長い尾羽があるため、頭を隠しても長い尾(尻)が草むらから外に大きく突き出したままになってしまいます。

自分から敵が見えなくなったことで「もう大丈夫だ」と安心しているキジの姿。
その様子が、浅はかな知恵で不祥事や失敗を隠そうとする人間の姿に似ていることから、このことわざが生まれました。
江戸時代に定着した「江戸いろはかるた」の読み札としても広く採用されており、古くから日本人の鋭い観察眼によって親しまれてきた表現です。

使い方・例文

日常会話では、子どもの可愛らしい隠し事から、大人の深刻な隠蔽工作まで、幅広く使われます。
単に「バレている」というだけでなく、その隠し方が不完全で滑稽であるというニュアンスが含まれるのが特徴です。

例文

  • 隠したテストの端が見えており、まさに「頭隠して尻隠さず」だ。
  • 禁煙中と言いつつカバンからタバコが覗き、「頭隠して尻隠さず」だと笑われた。
  • 不祥事を隠しきれず公文書が露見した、「頭隠して尻隠さず」な末路だ。
  • 猫がこたつに潜ったが尻尾が外に出ており、「頭隠して尻隠さず」の姿が愛らしい。

文学作品・メディアでの使用例

江戸時代の浮世草子作家、井原西鶴の代表作の一つに、商人の成功と失敗を描いた短編集があります。

『日本永代蔵』(井原西鶴)
当時の商売人たちが、目先の利益や浅はかな知恵で失敗する様子が描かれており、現代で言うところの「頭隠して尻隠さず」に通じる、人間の滑稽な本質が鋭く風刺されています。

日本永代蔵

類義語・関連語

「頭隠して尻隠さず」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 雉の隠れ(きじのかくれ):
    キジが頭だけを隠して尾を出している様子。転じて、隠し事が不完全なことのたとえ。
  • 耳を掩うて鐘を盗む(みみをおういてかねをぬすむ):
    鐘を盗む際、その音が自分に聞こえないよう耳を塞いだという故事。
    自分さえ気づかなければ他人も気づかないと思い込む愚かさを表す。
  • 露見(ろけん):
    隠していた悪事や秘密が表面化すること。

対義語

「頭隠して尻隠さず」とは対照的な意味を持つ言葉は、準備や隠蔽が万全であることを示す言葉です。

  • 用意周到(よういしゅうとう):
    準備に手抜かりがなく、細かなところまで配慮が行き届いていること。
  • 天網恢恢疎にして漏らさず(てんもうかいかいそにしてもらさず):
    天の張る網は広く、目は粗いようだが、悪人を決して逃さない。不完全な隠蔽など通用しないという戒め。

英語表現

「頭隠して尻隠さず」を英語で表現する場合、キジではなく別の大きな鳥が例えに使われます。

Bury one’s head in the sand

  • 意味:「現実逃避する」「見て見ぬふりをする」
  • 解説:ダチョウが危険を察知したときに、砂の中に頭を埋めて安心するという俗説に由来します。
    日本のことわざが「他人からバレている」点に注目するのに対し、英語では「自分から現実を見ていない」という現実逃避のニュアンスが強くなります。
  • 例文:
    Stop burying your head in the sand and face the financial problem.
    (現実に目をつぶるのはやめて、金銭問題に向き合いなさい。)

キジとダチョウにまつわる裏話

「頭を隠せば安心」と人間に笑われてきたキジとダチョウですが、これには生物学的な誤解もあります。
実際のキジは非常に警戒心が強く、敵が来れば鋭い羽音を立てて飛び去るか、低く身を伏せて周囲に溶け込もうとします。

ダチョウも砂に頭を埋めることはありません。
地面に首を長く伸ばして横たわり、遠くから見ると岩や土の塊に見えるように擬態しているのです。
人間から見れば「頭だけ隠している」ように見えるその姿も、鳥たちにとっては生き残るための必死の戦略。
私たちはその姿を借りて、「自分に都合の悪いことから目を背けていないか」と、自らの姿勢を省みる知恵を得てきたのかもしれません。

まとめ

自分一人で抱え込んだつもりでも、周囲の目にはその不自然さが映っているものです。「頭隠して尻隠さず」という言葉は、安易なその場しのぎや、自分本位な安心感の危うさを、ユーモアをもって教えてくれています。

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