地震や台風のニュースを見て、「怖いな」と防災グッズを買い揃えたものの、数ヶ月後には喉元を過ぎて、その存在すら忘れてしまっていた……。そんな経験はありませんか?
天災は忘れた頃にやってくるとは、災害は人々の恐怖心や警戒心が薄れた隙を突くように発生するものであり、常日頃からの備えがいかに大切かを説く戒めの言葉です。
「天災は忘れた頃にやってくる」の意味
自然災害は、過去の被害の記憶が薄れ、人々が油断しているタイミングで再び起こるものであるということ。
- 天災:地震、台風、洪水、噴火などの自然災害。
- 忘れた頃にやってくる:災害そのものの周期性だけでなく、「人間は時間が経てば恐怖を忘れて油断してしまう生き物だ」という性質を指摘しています。
単に「災害はいつ来るか分からない」という予測不可能性を説くだけでなく、「人間が対策を怠った時にこそ、被害は甚大になる」という防災意識への警告が含まれています。
「天災は忘れた頃にやってくる」の由来・語源
この言葉は、物理学者であり随筆家でもあった寺田寅彦(てらだ とらひこ/1878〜1935)の名言として広く知られています。
しかし、実は彼の全著作の中に、この「天災は忘れた頃にやってくる」という一文そのものは存在しません。
「寺田寅彦」の言葉とされる真相
寺田寅彦は、関東大震災(1923年)などの調査に関わり、自然災害に対する科学的な知見と防災の重要性を多くの随筆に残しました。
特に『天災と国防』という随筆の中で、以下のような主旨のことを繰り返し述べています。
文明が進めば進むほど、人間は自然を征服できたと錯覚し、かえって災害による被害は大きくなる。
災害は長い周期でやってくるが、人間の記憶は短いため、次の災害が来る頃には前の教訓を忘れてしまっている。
こうした彼の「防災哲学」を、後世の誰かがキャッチーな短文に要約して広めたというのが通説です。
彼の弟子である物理学者・中谷宇吉郎も、自身の随筆『天災』の中で、「この言葉は寅彦先生の警句として有名だが、著書には見当たらない」といった主旨の証言を残しています。
正確な出典はありませんが、言葉の真意は間違いなく寺田寅彦の思想に基づいています。
「天災は忘れた頃にやってくる」の使い方・例文
主に、地震や豪雨などの自然災害に対する「防災意識の低下」を戒めるために使われます。
また、転じて「トラブルや不祥事は、慣れて油断した時に起こる」というビジネスや日常の教訓として使われることもあります。
例文
- 避難訓練なんて意味がないと笑っていたが、天災は忘れた頃にやってくるという言葉通り、昨夜の地震では何もできなかった。
- 天災は忘れた頃にやってくる。非常持ち出し袋の中身は、定期的に点検しておくべきだ。
- システムトラブルも一種の災害だ。天災は忘れた頃にやってくると言うし、安定稼働している今こそバックアップ体制を見直そう。
「天災は忘れた頃にやってくる」の類義語
油断への戒めや、平時の準備の重要性を説く言葉です。
- 備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし):
普段から準備を整えておけば、いざという時に心配することはない。 - 治に居て乱を忘れず(ちにいてらんをわすれず):
平和で安全な時であっても、戦乱や万一の事態に対する備えを忘れてはならない。 - 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
苦しい経験も、過ぎ去ってしまえばその辛さを忘れてしまうこと。(※「忘れる」という人間の性質を指す部分で共通)
「天災は忘れた頃にやってくる」の英語表現
Natural disasters strike when you least expect them.
- 意味:「自然災害は、最も予期していない時に襲ってくる」
- 解説:日本のことわざとほぼ同じニュアンスで使われます。
“when you least expect it”(一番予想していない時に)というフレーズは、災害に限らずトラブル全般でよく使われます。
Disaster comes when we forget.
- 意味:「災害は忘れた頃に来る」
- 解説:ことわざの意味をそのまま直訳的に伝えた表現です。
「天災は忘れた頃にやってくる」に関する豆知識
現代版:天災は「忘れる前に」やってくる?
寺田寅彦が生きた時代に比べ、現代は気候変動の影響もあり、豪雨や大型台風などの災害が頻発しています。
「数十年に一度」と言われた規模の災害が数年おきに発生するケースも増えており、かつてのように「記憶が風化するほど長い期間(=忘れた頃)」が空かないことも珍しくありません。
この状況を受け、近年の防災啓発の現場では、「天災は忘れる間もなくやってくる」という、より危機感を強めた表現が使われることもあります。
まとめ – 「忘れる」ことへの自己防衛
「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉は、自然の脅威そのものよりも、「私たち人間は忘れる生き物である」という弱点を指摘しています。
人間が恐怖を忘れるのは、精神の平穏を保つための防衛本能でもあります。
しかし、こと防災に関しては、その本能が仇となります。「自分は忘れる生き物だ」と自覚し、カレンダーに防災点検の日を書き込むなど、記憶に頼らない仕組みを作ることが、現代における最良の「備え」と言えるでしょう。




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