人の噂も七十五日

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ことわざ
人の噂も七十五日
(ひとのうわさもしちじゅうごにち)
異形:人の噂も四十九日

15文字の言葉ひ・び・ぴ」から始まる言葉
人の噂も七十五日 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

どれほど世間を賑わせた話題であっても、時が経てば驚くほど静かに霧散し、やがて次の関心事へと上書きされていくものです。
そんな人々の記憶の儚さを、「人の噂も七十五日」(ひとのうわさもしちじゅうごにち)と言います。

意味

「人の噂も七十五日」とは、世間の噂話はやがて忘れ去られるという意味です。

どれほど激しく非難されたり、あるいは熱狂的に称賛されたりした話題であっても、およそ二ヶ月半も経過すれば人々の関心は別の対象へと移り、自然と消えていくという真理を説いています。
主に、悪い噂に悩む人を「時が解決してくれる」と励ます際や、世間の無責任さを皮肉る際に使われます。

語源・由来

「人の噂も七十五日」の由来は、日本の暦における「季節の移り変わり」にあるという説が有力です。

かつての暦では一つの季節は約九十日(三ヶ月)とされていました。そのうちの「七十五日」が過ぎれば、季節はすっかり次のステージへと入れ替わります。
「季節が変わるほどの時間が経てば、前の季節に起きた騒動など誰も覚えていない」という、農耕社会での生活実感に基づいた目安の数字が定着したと言われています。

使い方・例文

噂の渦中にいる人への助言や、ブームの短さを評する場面で使われます。

例文

  • 人の噂も七十五日と言うから、今は静かに時が過ぎるのを待とう。
  • 酷い中傷を受けたが、人の噂も七十五日、いずれ忘れ去られるはずだ。
  • あんなに行列ができていたのに、人の噂も七十五日でもう閑古鳥が鳴いている。
  • 騒動が収まり、人の噂も七十五日とばかりに表舞台へ復帰した。

類義語・関連語

「人の噂も七十五日」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 世間の噂も三月(せけんのうわさもみつき):
    世の中の噂は三ヶ月(九十日)もすれば消えてしまうということ。
  • 去る者は日々に疎し(さるものはひびにうとし):
    親しかった人でも、離れて日が経つと次第に記憶が薄れ、忘れられていくこと。
  • 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
    苦しいことも過ぎてしまえば、その苦しみや恩義を簡単に忘れてしまうこと。

対義語

「人の噂も七十五日」とは対照的に、不名誉や記憶が長く残ることを指す言葉です。

  • 末代までの恥(まつだいまでのはじ):
    死んだ後や子孫の代まで語り継がれるような、決して消えることのない不名誉。
  • 石に刻む(いしにきざむ):
    忘れないように深く心に留めること。
  • 人の恨み骨に徹す(ひとのうらみほねにてっす):
    人から受けた恨みは、骨身に染みるほど深く、一生忘れられないということ。

英語表現

「人の噂も七十五日」を英語で表現する場合、関心の短さを強調するフレーズを用います。

A nine days’ wonder

「九日間の驚き」
英語圏での定番表現です。日本語の「七十五日」よりも期間が短く設定されていますが、人々の関心がいかに一時的で移ろいやすいかというニュアンスを的確に表しています。

  • 例文:
    The scandal was all over the news, but it turned out to be just a nine days’ wonder.
    (あのスキャンダルは連日ニュースになったが、結局は一時的な騒ぎに過ぎなかった。)

変化する「関心の寿命」とデジタルタトゥー

情報の伝達スピードが劇的に加速した現代において、この「七十五日」という期間の捉え方は、二つの相反する側面を持つようになりました。

一つは、情報の消費サイクルが極端に短くなったことです。SNSが普及した現代では、一つのスキャンダルや話題が数時間で世界中に拡散され、数日後には次の新しいトレンドに押し流されます。
かつての「七十五日(約二ヶ月半)」という期間は、今や「数日」あるいは「数週間」という感覚にまで短縮されており、世間の飽きっぽさは加速していると言えます。

一方で、もう一つの側面は「記録の永続性」です。
かつての噂は人々の記憶から消えれば終わりでしたが、現代ではインターネット上の情報が「デジタルタトゥー」として半永久的に残り続けます。
人々の関心が他へ移り、一見「忘れられた」ように見えても、検索サイトやアーカイブには過去の不名誉な記録が刻まれ続け、何年経っても掘り起こされるリスクを孕んでいます。

つまり現代においては、「人々の『関心』は七十五日より遥かに早く冷めるが、ネットワークの『記録』は七十五年経っても消えない」という、極端な二面性の中に私たちは生きています。
この言葉を「時間がすべてを消し去ってくれる」という全幅の信頼として受け取るのではなく、情報の奔流から一時的に身を隠し、人々の視線が逸れるのを待つための「精神的な避難場所」としての知恵と捉えるのが、現代的な解釈と言えるかもしれません。

まとめ

人々の関心が移ろいやすく、時とともに噂が霧散していくという真理を説く「人の噂も七十五日」。
情報が絶え間なく流れ去る現代において、この言葉は、他人の評価や一時的な騒音に振り回されないための「心の防波堤」となってくれます。

たとえ今、冷たい視線に晒されていたとしても、季節が一つ変わる頃には、世界はまた新しい表情を見せているはずです。
時の流れがもたらす浄化の力を信じることで、静かに自分を取り戻すきっかけになることでしょう。

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