泥船に乗る

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ことわざ 故事成語
泥船に乗る
(どろぶねにのる)

7文字の言葉と・ど」から始まる言葉
泥船に乗る 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

「絶対に儲かる」という甘い言葉に乗って投資をしたら、あっという間に破綻してしまった。
経営が傾いていると知りながら、情に流されてその会社に転職してしまった。

このように、崩壊することが目に見えている危険な組織や計画に関わってしまうことを、「泥船に乗る」(どろぶねにのる)と言います。

意味

「泥船に乗る」とは、いつ破綻してもおかしくない危険な組織や計画に身を置くことです。

泥で作った船は、水に浮かべるとすぐに溶けて沈んでしまいます。このことから、今は形を保っていても、近い将来必ずダメになることが分かっているものや、安心できない危うい状況に身を任せることを指します。

語源・由来

「泥船」の由来は、日本の有名な民話『カチカチ山』のエピソードです。

物語の後半、お婆さんを殺したタヌキを懲らしめるため、ウサギは次のような罠を仕掛けます。

  1. ウサギは「木の船」と「泥の船」を用意する。
  2. タヌキに「泥の船の方が、魚がたくさん釣れるよ」と嘘をつき、泥船を選ばせる。
  3. 沖に出ると、泥が水に溶けて船が崩れ始め、タヌキは沈んでしまう。

この「泥で作った船に乗って沈む」という結末から、破滅が約束された危険な状況にあえて身を投じることを「泥船に乗る」と言うようになりました。

使い方・例文

ビジネスシーンやニュースなどで、倒産寸前の企業や、失敗が確実視されているプロジェクトに参加してしまう人を指してよく使われます。

例文

  • 彼の怪しい儲け話に乗るのは、泥船に乗るようなものだから止めておけ。
  • 倒産寸前の会社だと知らずに転職し、まんまと泥船に乗ってしまった。
  • この無謀な計画に参加することは、全員で泥船に乗るのと同義だ。

文学作品での使用例

『お伽草紙』(太宰治)
太宰治が民話『カチカチ山』を独自の解釈で再構築した作品。タヌキ(好色な中年男)がウサギ(冷酷な美少女)に騙され、泥船に乗せられる瞬間の心理描写です。

狸は、泥船へ乗り込んだ。「ああ、いい気持だ。僕のこの船は、土だからね、座り工合が、やわらかくて、お尻が痛くない。」

類義語・関連語

「泥船に乗る」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 氷の上に座す(こおりのうえにざす):
    氷はいずれ溶けることから、非常に危険で不安な場所にいることのたとえ。
  • 累卵の危うき(るいらんのあやうき):
    卵を積み重ねた時のように、少しの衝撃で崩れてしまいそうな極めて不安定な状態。
  • 風前の灯火(ふうぜんのともしび):
    風の吹きさらす場所にあるロウソクの火のように、今にも消えてしまいそうな危ない状態。

違いのポイント

「泥船に乗る」は、自ら危険なものに「参加する・乗り込む」という選択や行為に焦点が当たります。一方、「累卵」や「風前の灯火」は、すでにその危険な状態にあることを表します。

対義語

「泥船に乗る」とは対照的な意味を持つ言葉は以下の通りです。

  • 大船に乗る(おおぶねにのる):
    大きく丈夫な船に乗った時のように、信頼できるものに任せて安心しきっている様子。
    「大船に乗った気持ち(大船に乗ったつもり)」と言うことが多い。
  • 盤石の構え(ばんじゃくのかまえ):
    巨大な岩のように、どっしりとして少しも揺るがない安定した態勢。

英語表現

「泥船に乗る」を英語で表現する場合、“sinking ship”(沈みゆく船)という比喩がよく使われます。

a sinking ship

  • 意味:「沈みかかった船(=破綻寸前の組織)」
  • 解説:日本語と同様に、失敗や倒産が確実視されている組織を指します。
    泥船に乗る(関わる)という動作を表す場合は “board” や “join” を使いますが、”leave a sinking ship”(泥船から逃げる)という文脈で使われることも多い表現です。
  • 例文:
    I realized I had boarded a sinking ship.
    (私は自分が泥船に乗ってしまったことに気づいた。)

まとめ

「泥船に乗る」は、一見すると船のように見えても、実は崩壊が約束された危険なものに身を委ねてしまうことを表す言葉です。

『カチカチ山』のタヌキのように、甘い言葉や目先の利益に惑わされて泥船を選んでしまわないよう、自分が乗ろうとしているものが「木の船」なのか「泥の船」なのかを冷静に見極める眼を持ちたいものです。

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