姑息

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ことわざ 故事成語
姑息
(こそく)

3文字の言葉こ・ご」から始まる言葉

日々の生活の中で、私たちは根本的な解決を後回しにして、目先の不都合をやり過ごそうとすることがあります。
このような「その場しのぎ」の振る舞いを、「姑息」(こそく)と言います。

現代では「卑怯だ」「ずるい」という道徳的な非難として使われがちですが、本来はこの言葉には、時間の猶予を稼ぐというニュアンスが込められていました。

意味

「姑息」とは、その場しのぎの間に合わせをすることを意味します。
本来は「卑怯」や「正々堂々としていない」といった性格や態度を指す言葉ではなく、一時的な処置であることを指す言葉でした。

  • (こ):しばらく。一時的に。
  • (そく):休む。やめる。

つまり、文字通りには「しばらくの間、一息つく」という構造を持っています。
根本的な解決には至っていないものの、とりあえず今の窮地を脱しようとする一時的な安息を表しています。

語源・由来

「姑息」の由来は、中国の古い礼法を記した書物『礼記』(らいき)の一節にあります。

孔子の弟子である曾子(そうし)が死の間際、自分が敷いているマットが身分にそぐわない豪華なものであることに気づきました。
「身分に合わないものを使ったまま死ぬわけにはいかない」と交換を命じる曾子に対し、周囲は「もうすぐ命が尽きるのだから、そのまま安らかに(姑息に)していてください」と引き止めます。
しかし曾子は、「立派な人間は、一時しのぎの安息(姑息)を求めない」と諭し、マットを替えさせた直後に息を引き取ったといいます。

この逸話から、「目先の安らぎを優先して一時しのぎをすること」を「姑息」と呼ぶようになりました。
現代日本で「卑怯」という意味で使われるようになったのは、「その場しのぎ=正々堂々としていない」というネガティブな連想が働いたためと考えられています。

使い方・例文

「姑息」は、物事の根本的な解決を避け、表面だけを繕う場面で使われます。
ビジネスの現場から、学校や家庭でのちょっとしたやり取りまで、幅広く用いられます。

例文

  • 雨漏りをバケツで受けるだけの姑息な対応では、根本的な解決にならない。
  • 叱られるのを恐れて姑息な言い逃れをしても、すぐに嘘だと露呈する。
  • 予算不足を補うために他から資金を一時的に流用するのは、姑息なやり方だ。

誤用・注意点

文化庁の調査によれば、現代では多くの人が「姑息」を「卑怯」という意味で捉えています。
しかし、本来の意味は「一時しのぎ」であることを忘れてはなりません。

※目上の人に対して「姑息な処置ですね」などと言ってしまうと、本来の意味であっても「その場しのぎの未熟な対応だ」という批判になり、誤用の方では「卑怯な対応だ」という侮辱になるため、使用には注意が必要です。

類義語・関連語

「姑息」と似た意味を持つ言葉には、切迫した状況や一時的な対応を指すものが多くあります。

  • 弥縫策(びほうさく):
    失敗や欠点を一時的に取り繕うための策のこと。「弥縫」とは、破れ目を縫い合わせることを意味します。
  • 泥縄(どろなわ):
    泥棒を見て縄を綯う」の略。事態が起こってから慌てて準備を始める、場当たり的な対応を指します。
  • 場当たり的
    その場の状況に合わせるだけで、一貫した計画や考えがない様子。

対義語

「姑息」とは対照的な意味を持つ言葉は、物事の根源から変えようとする姿勢を表します。

  • 抜本的(ばっぽんてき):
    物事の根本(根っこ)に立ち返って、原因を取り除くこと。
  • 恒久的(こうきゅうてき):
    一時的ではなく、いつまでもその状態が続くこと。

英語表現

「姑息」を英語で表現する場合、状況に応じて以下の表現が適切です。

makeshift

「間に合わせの」「一時的な」
その場にあるもので何とか対応する、といった形容詞的なニュアンスで使われます。

  • 例文:
    We used a makeshift umbrella to avoid the sudden rain.
    (突然の雨を避けるために、姑息な(間に合わせの)傘を使った。)

stopgap

「一時的な埋め合わせ」「風穴をふさぐもの」
より「欠損を一時的に埋めるための手段」という名詞的なニュアンスが強い表現です。

  • 例文:
    This measure is only a stopgap until the new system is ready.
    (この措置は、新システムが整うまでの姑息な(一時しのぎの)ものに過ぎない。)

「姑息」についての豆知識

「姑息」の「姑」という漢字は、現代では「夫の母(姑)」を指すのが一般的ですが、古語では「しばらく」という意味を持っていました。
また、「息」という字には「呼吸」の他に「休む」という意味もあります。
つまり、元々は「ちょっと一服して休む」という、どちらかと言えば穏やかな休息を指す言葉だったのです。

それが、死を目前にした聖人の厳しい倫理観によって、「安易な休息は、あるべき姿ではない」と批判的に語られたことで、現代のような「不十分な対応」を指す言葉へと繋がっていきました。

まとめ

「姑息」という言葉は、本来「卑怯」という人格否定の意味を持ちません。
しかし、その場しのぎの対応を繰り返せば、いずれは大きな問題に直面し、結果として周囲の信頼を損なうことにもなりかねません。

私たちは、急場をしのぐために「姑息」な手段を必要とすることもありますが、それが落ち着いた後には、曾子がそうしたように、しっかりと根本から向き合う誠実さを大切にしたいものです。
言葉の正しい意味を知ることは、私たちの行動をより深く見つめ直すきっかけになることでしょう。

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