自分の子供や、指導している後輩が、自分よりも優れた才能を発揮したり、素晴らしい成果を上げたりする姿を見て、驚きと共に深い喜びを感じたことはありませんか。
「竹の子の親勝り(たけのこのおやまさり)」は、まさにそのような状況を表すことわざです。
この言葉には、次世代の成長を喜び、頼もしく思う温かい眼差しが含まれています。

「竹の子の親勝り」の意味・教訓
「竹の子の親勝り」とは、子が親よりも才能や能力、地位などが優れていることのたとえです。
親の世代を乗り越えて、子供の世代がより大きく成長し、活躍することへの期待や、それを成し遂げたことへの賞賛と喜びを示す言葉です。単なる優劣比較ではなく、次世代へのバトンタッチがうまくいったことへの肯定的な感情が込められています。
「竹の子の親勝り」の語源
このことわざの語源は、竹の生態に由来します。
筍(たけのこ)は、親である竹(親竹)から地下茎を通じて栄養をもらいながら成長しますが、その成長速度は驚異的です。発芽してからわずか数ヶ月で親竹と同じか、時にはそれ以上の高さにまで達します。
この、親をあっという間に追い越していく筍の力強い成長ぶりを、子が親を超える姿になぞらえて「竹の子の親勝り」と言うようになりました。
使用される場面と例文
主に、子供の才能や成果が親よりも優れていると判明した時、またはそう感じた時に、親自身が謙遜と喜びを込めて使ったり、第三者が賞賛して使ったりします。
家庭内での会話、学校や習い事の場、あるいはビジネスシーン(師弟関係に近い場合)などでも比喩的に用いられます。
例文
- 「息子が私より先に部長に昇進するとは。まさに「竹の子の親勝り」で、父親として鼻が高いよ。」
- 「彼女の描く絵は、画家の父親を凌ぐ独創性がある。「竹の子の親勝り」とはこのことだ。」
- 「お父さんも将棋が強かったが、娘さんは女流タイトルを獲得した。見事な「竹の子の親勝り」ですね。」
- 「私の若い頃より、今の新入社員の方がよほど優秀だ。「竹の子の親勝り」を期待している。」
類義語・言い換え表現
「竹の子の親勝り」と似た意味を持つ言葉を紹介します。
- 鳶が鷹を生む(とんびがたかをうむ):
平凡な親から、非常に優れた子供が生まれることのたとえ。
※「竹の子の親勝り」は親が平凡かどうかを問わない点が異なります。 - 出藍の誉れ(しゅつらんのほまれ):
弟子がその師匠よりも優れることのたとえ。「青は藍より出でて藍より青し」とも言います。
※師弟関係が基本ですが、親子関係になぞらえて使われることもあります。
対義語
子が親を超える「竹の子の親勝り」とは反対に、子は親に似るものだ、という意味合いの言葉です。
- 瓜の蔓に茄子はならぬ(うりのつるになすびはならぬ):
平凡な親からは平凡な子が生まれ、血筋は争えないというたとえ。
※「蛙の子は蛙(かえるのこはかえる)」もほぼ同じ意味で使われます。 - 親に似ぬ子は鬼の子(おやににぬこはおにのこ):
親に似ない子はいない、子は親に似るものだ、という意味。
英語での類似表現
「竹の子の親勝り」と全く同じニュアンスを持つ決まった英語のことわざは多くありませんが、近い状況を表す表現を紹介します。
The pupil has surpassed the master.
- 意味:「弟子が師匠を超えた」。
- 「出藍の誉れ」の英訳としてよく使われますが、文脈によっては親子関係で「子が親を超えた」という意味でも通じます。
- 例文:
Watching my daughter win the national competition, I felt the pupil has surpassed the master.
(娘が全国大会で優勝するのを見て、弟子が師匠を超えたと感じたよ。)
The son (or daughter) has outdone his (or her) parents.
- 意味:「息子(娘)が両親を凌駕した」。
- ことわざではありませんが、状況を直接的に説明する表現です。
- 例文:
He became a CEO at 30, while his father was a manager. The son has truly outdone his parents.
(彼は30歳でCEOになったが、彼の父は管理職だった。息子はまさに両親を超えたのだ。)
「竹の子の親勝り」に関する豆知識
語源となった竹の成長速度は、植物の中でも群を抜いています。
例えば、日本に多いマダケ(真竹)は、成長期には1日に120cm以上も伸びることが記録されています。
この驚異的なスピードが、「あっという間に親を追い抜く」という比喩の説得力を高めています。
また、「筍」という漢字は、「竹」かんむりに「旬(じゅん)」と書きます。これは、筍が地上に出てから「旬(=10日間)ほどで竹になる」ことから来ているとされています(諸説あり)。
この漢字の成り立ちからも、竹の成長の早さがうかがえます。
まとめ – 「竹の子の親勝り」に込められた願い
「竹の子の親勝り」は、子が親を超えるという喜ばしい現象を表すことわざです。
これは単に能力の優劣を示すだけでなく、親が注いだ愛情や教育、あるいは親自身が持っていた才能が、子供の中で開花し、さらに大きく成長したことへの感動と喜びを示しています。
世代を超えて成長が受け継がれていくことは、社会全体にとっても喜ばしいことです。この言葉には、次世代への惜しみない賞賛と、未来への明るい期待が込められているのですね。




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