鬼も十八、番茶も出花

ことわざ
鬼も十八、番茶も出花(おにもじゅうはちばんちゃもでばな)

16文字の言葉」から始まる言葉
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普段はあまり目立たない人が、ある日ふとした瞬間にとても魅力的に見えたり、服装や髪型を変えただけで輝いて見えたりした経験はありませんか。

鬼も十八、番茶も出花(おにもじゅうはち、ばんちゃもでばな)」は、まさにそのような、人や物が持つ「輝く瞬間」を捉えたことわざです。

「鬼も十八、番茶も出花」の意味・教訓

「鬼も十八、番茶も出花」とは、鬼のように美しいとは言えない女性でも、18歳という年頃になれば相応の魅力や美しさが備わるものだ、という意味のことわざです。

後半の「番茶も出花」は、安価で粗末な番茶でも、淹れたての「出花(でばな)」の瞬間は良い香りがすることを示します。

この二つを並べることで、「どんな人(特に女性)や物にも、その価値が最も際立つ『旬』や『盛り』の時期がある」という教訓を含んでいます。

「鬼も十八、番茶も出花」の語源

この言葉は、江戸時代の庶民の生活実感から生まれた「俚言(りげん:世間で言い習わされてきた言葉)」とされます。

「十八」は、江戸時代に女性が「妙齢(みょうれい)」と呼ばれ、心身ともに成熟し最も美しいとされる年頃でした。
また「出花」は、お茶を淹れた瞬間のことで、安価な「番茶」でもその瞬間だけは格別な香りが立つことから、二つを並べて「どんなものにも魅力的な盛りがある」ことを示しました。

使用される場面と例文

主に、思春期を迎えたり、社会人になったりして、急に大人びて美しくなった女性(娘、孫、後輩など)を見て、感心したり温かく褒めたりする際に使われます。

やや古風な表現ではありますが、対象の成長を喜ぶ温かい眼差しが込められています。

例文

  • 「あんなに子供っぽかった姪が、すっかり綺麗になって。まさに「鬼も十八、番茶も出花」だね。」
  • 「娘の晴れ着姿を見て、「鬼も十八、番茶も出花」とはよく言ったものだと、夫が目を細めていた。」
  • 「新入社員のAさん、入社当時は緊張していたが、最近は表情も明るく魅力的になった。「鬼も十八、番茶も出花」だな。」

類義語・言い換え表現

「鬼も十八、番茶も出花」と似た、女性の年頃の美しさを表す言葉です。

  • 娘十八、髪結うばかり(むすめじゅうはち、かみゆうばかり):
    18歳の娘は、特に着飾らなくても、髪を結う(身支度をする)だけでも十分に美しい、という意味。
  • 八専の晴れ間に雨が降る(はっせんの はれまに あめがふる):
    「八専」(特定の期間)中は晴れ間が続かないことから、女性の機嫌が変わりやすいことのたとえ。
    ※「女の十八」と続くことがあり、「鬼も十八」と同様に女性の不安定だが魅力的な時期を指す文脈で使われることがあります。

対義語

物事の盛りや美しさは長続きしない、という意味合いの言葉が対義語として挙げられます。

  • 花に十日の紅なし(はなにとうかのくれないなし):
    あれほど美しく咲いた花も、10日もすれば色褪せてしまう。権力や美貌など、物事の盛りは長続きしないことのたとえ。
  • 色香も一時(いろかもひととき):
    若く美しい時期も、ほんの一時的なものであること。

英語での類似表現

このことわざのニュアンス(年頃の魅力)に完全に一致する英語の決まった表現はありませんが、「誰にでも全盛期がある」という意味で近い表現を紹介します。

Every dog has its day.

  • 意味:「どんな犬にもその日がある(誰にでも一生に一度は幸運な時、全盛期が巡ってくる)」。
  • 「鬼も十八~」が(主に女性の)一時的な「魅力」のピークを指すのに対し、こちらは「幸運」や「成功」のピークを指すことが多いという違いがあります。
  • 例文:
    Don’t worry, you’ll get your chance. Every dog has its day.
    (心配ないよ、君にもチャンスは来る。誰にでも全盛期はあるんだから。)

「鬼も十八、番茶も出花」に関する豆知識

このことわざの背景には、「十八」という年齢への特別な意識があります。

江戸時代、数え年の18歳は、女性の結婚適齢期であり、「妙齢(みょうれい)」と呼ばれる最も輝かしい時期とされていました。

また、「番茶」というと現代では「ほうじ茶」を連想することもありますが、ここでいう番茶は、一番茶(新茶)の後に摘まれる二番茶や、秋口に摘まれる秋冬番茶といった、安価で日常的に飲まれるお茶を指します。

生活に密着した「番茶」と、非日常的な「鬼」を対比させることで、言葉のリズムと説得力を生んでいます。

使用上の注意点

このことわざは、女性の価値を若さや容姿に限定するような、やや古風な価値観に基づいています。

そのため、現代において、特に本人に向かって直接使うと、文脈によっては「今は良いが、そのうち…」といった失礼なニュアンスや、容姿を評価するような上から目線と受け取られる可能性があります。

主に、娘や孫の成長を喜ぶ身内での温かい会話や、比喩的に「物事の旬」を指す場合に留めておくのが賢明です。

まとめ – 物事の「旬」を見つめる目

「鬼も十八、番茶も出花」は、どんな人や物にも、その魅力が際立つ「旬」の時期があることを教えてくれる言葉です。

現代では、特に女性の容姿について使う際には配慮が必要ですが、この言葉の根底には、対象への温かい眼差しがあります。

物事の最も輝く瞬間を見逃さず、その価値を素直に認めることの大切さを示しているのかもしれませんね。

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