地位や環境の変化に揺るがず、生涯にわたって続く親密な人間関係。
このような状態を表すのが、「雷陳の交わり」(らいちんのまじわり)です。
意味
雷陳の交わりとは、地位や利害を超えて結ばれた、非常に固い友情という意味です。
一方が立身出世を遂げても相手を見下すことなく、互いを深く尊重し合う純粋な結びつきを表現する際に用いられます。
- 雷陳(らいちん):後漢時代の雷義(ちんちょう)と陳重(らいぎ)という二人の人物名
- 交わり(まじわり):人と人とが付き合うこと
語源・由来
中国・後漢時代の歴史書『後漢書』に登場する逸話が由来です。
陳重(ちんちょう)と雷義(らいぎ)は、若い頃から深い友情で結ばれていました。
ある時、陳重が「孝廉(こうれん:役人の候補生)」に推薦されます。
しかし彼は「親友の雷義の方がふさわしい」と、上司に何度も手紙を書いて推薦を譲ろうとしました。
これは認められず、翌年には雷義も推薦されて二人は揃って役人になります。
その後、今度は雷義が「茂才(もさい:より高い役職への推薦)」を受けます。
雷義もまた陳重にこれを譲ろうとしますが、上司に断られます。
すると雷義は、なんと正気を失ったふりをして逃げ出し、無理やり推薦を辞退しようとしました。
自分の出世よりも友を立てようとする、この二人の固い絆が言葉の由来です。
使い方・例文
- 卒業から数十年が経った今も、彼らは雷陳の交わりを続けている。
- 一方が大企業の社長になっても、二人の間には雷陳の交わりがある。
- 雷陳の交わりと呼べる親友に出会えた彼の人生は幸福だ。
類義語・関連語
「雷陳の交わり」の類義語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 膠漆の交わり(こうしつのまじわり):
膠(にかわ)と漆(うるし)がくっつくように、極めて親密な交友関係。 - 水魚の交わり(すいぎょのまじわり):
水と魚のように、切り離せない親密な関係。 - 管鮑の交わり(かんぽうのまじわり):
互いを深く理解し信頼し合う親密な友情。 - 刎頸の交わり(ふんけいのまじわり):
首を斬り落とされても後悔しないほどの固い友情。
「雷陳の交わり」と類義語の違い
これらの故事成語はどれも「極めて親密な人間関係」を表しますが、その「絆の性質(何によって結びついているか)」に明確な違いがあります。特に混同しやすい言葉との違いは以下の通りです。
| 語句 | 絆の性質 (何で結びついているか) | 主な対象・ シチュエーション |
|---|---|---|
| 雷陳の交わり (らいちんのまじわり) | 地位や名誉、利害を一切気にしない 「純粋な思いやり」 | 損得勘定のない、 対等で無私な友人関係 |
| 管鮑の交わり (かんぽうのまじわり) | 相手の才能や欠点、不遇な背景までを すべて許容する「深い理解」 | 互いの能力を認め合う親友や、 ビジネス上の相棒 |
| 刎頸の交わり (ふんけいのまじわり) | 相手のためなら自分の首を斬られても (死んでも)構わない「究極の覚悟」 | 命を預け合うほどの、 極限状態や強い忠誠を伴う関係 |
対義語
「雷陳の交わり」の対義語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 市道之交(しどうのまじわり):
利益や損得だけで結びついている、うわべだけの交友関係。 - 権勢の交わり(けんせいのまじわり):
権力や財産を目当てに結びつく付き合い。
英語表現
bosom friends
意味:腹を割って話せる大親友
- 例文:
They are bosom friends and share everything with each other.
彼らは大親友で、何でも互いに共有している。
Damon and Pythias
意味:利害を超えた真の友情の象徴
- 例文:
Their friendship is often compared to that of Damon and Pythias.
彼らの友情は、しばしばデイモンとピュティアスに例えられる。
郷里の人々が詠んだ「膠漆の歌」
『後漢書』には、彼らの友情が世間をどれほど驚かせたかを物語る一文が残されています。
出世のチャンスを互いに本気で押し付け合う二人の姿を見た地元の人々は、次のように詠みました。
膠漆自謂堅、不如雷与陳(膠漆は自ら堅しと謂うも、雷と陳には如かず)
これは、「最強の接着素材である膠(にかわ)や漆(うるし)は非常に強固だが、それでも雷義と陳重の絆にはかなわない」という意味です。
地位や利益といった損得を全く考えない純粋な関係が、周囲の人々に強烈な感動を与えたことがこの歌からわかります。




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