意味
「膠漆の交わり(こうしつのまじわり)」とは、強力な接着剤でくっつけたように、決して離れない固い友情という意味です。
単に仲が良いというレベルを超え、利害や状況の変化によっても決して揺らぐことのない、絶対的な信頼で結ばれた人間関係を指す際に使われます。
- 膠(にかわ):動物の皮や骨から作る強力な接着剤。
- 漆(うるし):ウルシの木の樹液から作る、乾くと強固に固まる塗料・接着剤。
- 交わり(まじわり):人と人とのつきあい。
語源・由来
中国・後漢時代の歴史書『後漢書』の「雷義伝(らいぎでん)」に登場するエピソードに由来します。
同じ豫章郡の出身の雷義と陳重は若いころからの友人で、官吏への推挙を互いに譲り合うほどの親友でした。
彼らの絆の強さは周囲の誰もが知るところとなり、郷里の人々は二人を称えて次のように言いました。
膠漆自謂堅、不如雷與陳
(膠や漆は固いというが、雷義と陳重の絆には及ばない)
この郷里の人々の言葉から、極めて強固な友情を「膠漆の交わり」、または彼らの名をとって「雷陳の交わり」と呼ぶようになりました。
使い方・例文
「膠漆の交わり」は、書き言葉や改まったスピーチなどで、理想的な友情を称賛する場面で使われます。
- 学生時代から続く彼らの関係は、まさに膠漆の交わりだ。
- 幾多の困難を乗り越え、二人は膠漆の交わりを結んだ。
- 遠く離れて暮らす今も、我々の膠漆の交わりは変わらない。
類義語・関連語
- 雷陳の交わり(らいちんのまじわり):
由来となった雷義と陳重の友情を指す言葉。「膠漆の交わり」とほぼ同義。 - 水魚の交わり(すいぎょのまじわり):
水と魚のように、互いになくてはならない親密な関係。 - 刎頸の交わり(ふんけいのまじわり):
相手のためなら首を斬られても悔いはないというほどの固い友情。 - 断金の交わり(だんきんのまじわり):
心を合わせれば金属も断ち切れるほどの固い友情。 - 管鮑の交わり(かんぽうのまじわり):
利害を超えて互いを深く理解し、信頼し合う友情。
「膠漆の交わり」と「水魚の交わり」の違い
どちらも親密な関係を指しますが、結びつきの性質に明確な違いがあります。
「膠漆の交わり」は対等な友人同士の強固な結びつきであるのに対し、「水魚の交わり」は君主と臣下のような「互いを必要不可欠とする関係」を指すのが本来の用法です。
対義語
「膠漆の交わり」の対義語には、以下のような言葉が挙げられます。
- 犬猿の仲(けんえんのなか):
非常に仲が悪く、反発し合う関係。 - 水と油(みずとあぶら):
性質が合わず、決して打ち解けないこと。 - 市道之交(しどうのまじわり):
利益や打算だけで結びついた、うわべだけの付き合い。
英語表現
inseparable friends
意味:切り離せない友人
Ever since they met, they have been inseparable friends.
(出会って以来、彼らは常に一緒の親友です。)
thick as thieves
直訳:泥棒たちのように濃い
意味:非常に親密な関係、大の仲良し
Those two are thick as thieves; they go everywhere together.
(あの二人は大の仲良しで、どこへ行くにも一緒です。)
膠漆の交わりの二人は、推挙を何度も譲り合った
語源となった雷義と陳重の友情は、ただ「仲が良かった」という生やさしいものではありません。
彼らの絆の異常なほどの強さは、官吏への推挙をめぐる驚愕のエピソードとして『後漢書』に記録されています。
ある年、雷義は「茂才(もさい)」(優秀な人材を官僚として推挙する制度)に選ばれました。
これは当時の知識人にとって最高の名誉であり、出世の第一歩です。
しかし雷義は、自分よりも親友の陳重のほうが優れていると考え、この名誉を陳重に譲ろうと役人に直訴しました。
しかし刺史(州の長官)はこれを聞き入れませんでした。
訴えを却下された雷義は、なんと狂人を装い、髪を振り乱してその場から逃亡することで官職に就くことを避けたと伝えられています。
陳重のほうも、以前に太守から孝廉に推挙されたとき、雷義に譲ろうと十数回も書面を出していました。
また二人がそろって尚書郎になったのち、雷義が同僚の罪をかぶって職を退くと、陳重も病を理由に職を辞しています。
互いの立場や利益を顧みないこの行動が、「膠漆の交わり」という言い方の由来になりました。










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