人間関係において、人情に薄く思いやりに欠ける「薄情」な態度を示す言葉は数多く存在します。
日常的な素っ気なさから、恩知らずな裏切り、用済みで切り捨てる非情な行いまで、冷酷な心理や振る舞いを表す言葉をまとめました。
日常的な態度の冷たさ
- 素っ気ない(そっけない):
相手への関心や思いやりが言葉や態度にまるで表れない、愛想のない冷淡なさま。
挨拶や返事がぶっきらぼうな応対でよく使われる。 - 木で鼻を括る(きではなをくくる):
無愛想で不親切な態度をとること。
「くくる」は、こする意の「こくる」を誤って言った形。 - 取りつく島もない(とりつくしまもない):
冷淡で頼ったり話しかけたりするきっかけがないさま。 - にべもない:
愛想や思いやりが全くなくそっけない様子。
「にべ」は魚の浮袋から作る強力な接着剤の名で、その粘り気のなさに例えた言葉。 - けんもほろろ:
頼み事などを無愛想にきびしく拒絶するさま。
「けん」も「ほろろ」も雉の鳴き声で(「ほろろ」は羽音とも)、「けん」に無愛想な意の「慳貪」などの「けん」を掛けたもの。 - 邪険にする(じゃけんにする):
相手の気持ちを考えず無慈悲で冷たく扱うこと。
「邪見」とも書き、仏教では因果の道理を無視する誤った考えをいう語で、のちに無慈悲な意でも使われるようになった。 - 袖にする(そでにする):
親しかった人を急に冷たくあしらい相手にしないこと。 - 手のひらを返す(てのひらをかえす):
それまでの態度を一変させて急に冷たくなること。
手のひらを裏返す動作の素早さに、態度が急変する様子の唐突さを重ねた表現。 - 白い目で見る(しろいめでみる):
冷淡なあるいは軽蔑のこもった目つきで人を見ること。 - 洟も引っ掛けない(はなもひっかけない):
全く無視し相手にしない冷淡なさま。
「洟」は鼻水のこと。 - 氷のような(こおりのような):
非常に冷たい感情のこもらない目つきや態度のたとえ。
体温を感じさせない氷の冷たさに、心の通わない様子を重ねた比喩表現。 - 血も涙もない(ちもなみだもない):
温かい心や同情心が全くない冷酷なさま。
人の情を象徴する「血」と「涙」の両方が欠けていると強調し、非情さを際立たせる表現。 - 非情(ひじょう):
人間としての感情や思いやりがないこと。
「情に非ず」の字義通り、決断や仕打ちが人並みの温かさを欠く場面で使われる。 - 冷淡(れいたん):
物事や他人に対して無関心で思いやりがないさま。
「淡」は薄い意で、物事への関心や他人への情が薄いことをいう。 - 無慈悲(むじひ):
他者へのいつくしみやあわれみの心がないこと。
仏教で説く慈悲の心を欠いた振る舞いを指し、強い非難の響きを伴って使われる。 - 不人情(ふにんじょう):
人情味に欠け他人に思いやりがないこと。 - 冷血無情(れいけつむじょう):
血が通っていないかのように冷淡で情愛がないこと。
「冷血」と「無情」という似た意味の二語を重ね、非情さを強調した四字熟語。 - 冷酷非道(れいこくひどう):
冷たくむごく人としての道に外れていること。
「冷酷」と「非道」という二つの熟語を重ねた四字熟語。 - 冷酷非情(れいこくひじょう):
冷たくむごく人としての情愛に欠けていること。
「冷酷非道」と語の構成が近く、道義よりも情の欠如に力点を置いた言い回し。 - 無情非道(むじょうひどう):
人情がなく人の道に外れていること。
「無情」で心の冷たさを、「非道」で行いの外れぶりを表し、両面から非情さを描く四字熟語。
恩知らず・裏切り
- 恩を仇で返す(おんをあだでかえす):
受けた恩に感謝せず反対に害を加えること。
人の道に反することとして、強い非難をこめて使われる。 - 飼い犬に手を噛まれる(かいいぬにてをかまれる):
世話をし信頼していた者から裏切られ害を受けること。
古くは「手飼いの犬に手食わるる」などといい、今の形は江戸中期以降に定着した。 - 庇を貸して母屋を取られる(ひさしをかしておもやをとられる):
親切心につけこまれ恩を仇で返されること。
軒先を貸したはずが屋敷全体を取られる、という見立ての言い方で、古くは「片屋を貸して母屋を取られる」ともいった。 - 喉元過ぎれば熱さを忘れる(のどもとすぎればあつさをわすれる):
苦難が過ぎると助けてもらった恩を容易に忘れること。
熱い物が喉を通る一瞬の刺激をすぐ忘れる身体感覚に、忘れっぽい人の性質を重ねた。 - 忘恩負義(ぼうおんふぎ):
受けた恩を忘れ人としての道義に背くこと。
「忘恩」で恩義を忘れる薄情さを、「負義」で道理に背く様を表す四字熟語。 - 足蹴にする(あしげにする):
人をひどく軽蔑し恩人などを無下に扱うこと。
無関心・傍観
- 対岸の火事(たいがんのかじ):
他人の災難を自分とは無関係として傍観する態度。
向こう岸の火事は、こちらに燃え移る心配がないことから。 - 知らぬ顔の半兵衛(しらぬがおのはんべえ):
関係があるのにわざと知らないふりをする冷淡な態度。
そ知らぬ様子で取り合わない冷淡な者を、人名のように呼んだもの。 - 冷眼傍観(れいがんぼうかん):
物事を冷やかな目で関心を持たずに見ていること。
「冷眼」で冷ややかな視線を、「傍観」で当事者にならない姿勢を重ねた四字熟語。 - 無関心(むかんしん):
物事や他人に対して関心や興味を持たないこと。
良し悪しの評価以前に、そもそも意識を向けようとしない状態を指して使われる。 - 利己的(りこてき):
自分の利益だけを考え他人のことを顧みないさま。
周囲への配慮より己の得失を優先する姿勢を、やや批判的に表す言葉として使われる。
人間関係の希薄さ・用済み
- 他人行儀(たにんぎょうぎ):
親しい相手に対して他人のように遠慮がちで冷淡なさま。 - 人情紙のごとし(にんじょうかみのごとし):
人の情愛は紙のように薄く移ろいやすいということ。 - 澆季薄俗(ぎょうきはくぞく):
人情が薄く風俗がすさんだ世の中のありさま。
「澆」は軽薄、「季」は末を意味し、道徳が衰えた末世を嘆く言葉として使われてきた。 - 金の切れ目が縁の切れ目(かねのきれめがえんのきれめ):
利益やお金がなくなると途端に関係も冷酷に断たれること。男女の仲についていうことが多いが、一般のつきあいにも用いる。 - 秋の扇(あきのおうぎ):
男性の愛を失って捨てられた女性のたとえ。
漢の宮女・班婕妤が、君主の寵愛を失った我が身を、秋になって使われなくなった扇にたとえた詩「怨歌行」から。 - 狡兎死して走狗烹らる(こうとししてそうくにらる):
利用価値がなくなると不要として捨てられること。
『史記』に見える故事成語で、兎を捕り終えた猟犬が煮て食われる例えに由来する。 - 鳥尽きて弓蔵められる(とりつきてゆみおさめられる):
目的を果たした後は用済みとして冷遇されること。
同じ『史記』の一節「飛鳥尽きて良弓蔵められ」に由来し、「狡兎死して走狗烹らる」と対をなす。









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