意味
「軽佻浮薄(けいちょうふはく)」とは、心が浮ついて、言うこと為すことが軽はずみで落ち着きを欠くという意味です。
能力の不足を指す言葉ではありません。
身の処し方に重みがないことを責める言い方で、人物評として使うと強い非難になります。
- 軽佻(けいちょう):言動がうわついて軽々しいこと。
- 浮薄(ふはく):考えが浅く、あさはかなこと。
語源・由来
「軽佻浮薄」は、似た意味の二語を重ねて意味を強めた四字熟語です。
「軽佻」と「浮薄」はどちらも単独で使われてきた言葉で、並べても新しい意味は生まれません。
重ねることで生まれるのは意味ではなく強さで、これは「唯一無二」と同じつくりです。
中村正直が訳した『西国立志編』(1870〜71年)にもこの語が見え、うわべを飾ることばかりに努める態度を「軽佻浮薄」として批判しています。
使い方・例文
「軽佻浮薄」は、人の態度や世の中の風潮に重みがないことを批判する場面で使われます。
- 会うたび言うことが変わる。軽佻浮薄な男に任せられるか。
- 流行語を並べただけの軽佻浮薄な議論では、何も決まらない。
- 「肩書きで態度を変えるような軽佻浮薄な人間になるな」と叱られた。
小説での使用例
『大導寺信輔の半生』(芥川龍之介)
主人公の信輔が、日記「自ら欺かざるの記」の中で、自分に向けられた悪名の一つである「軽佻浮薄」を、役に立たない美を愛することだと言い直した一節です。
その二は軽佻浮薄也。軽佻浮薄とは功利の外に美なるものを愛するを言ふ。
読み方と書き方の注意点
「けいはくふはく」という誤読
正しい読みは「けいちょうふはく」です。
意味が「軽薄」に近いことから「けいはく」と読み違えられることがありますが、この四字熟語に「軽薄」という語は入っていません。
「軽薄浮薄」という誤記
正しい形は「軽佻浮薄」で、「軽薄浮薄」という四字熟語はありません。
「佻」が見慣れない字であるうえ、意味が近い「軽薄」を思い浮かべやすいことが、書き誤りの背景にあります。
類義語・関連語
「軽佻浮薄」と同じく、うわべだけで芯のない態度を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 付和雷同(ふわらいどう):
自分の考えを持たず、他人の意見にすぐ同調すること。 - 巧言令色(こうげんれいしょく):
言葉を飾り顔つきを繕って、他人に取り入ろうとすること。 - 八方美人(はっぽうびじん):
誰に対しても愛想よくふるまい、角を立てまいとする人。
「軽佻浮薄」と「付和雷同」の違い
どちらも芯のなさを責める言葉ですが、責めている対象が違います。
| 語句 | 責める対象 | 相手の有無 |
|---|---|---|
| 軽佻浮薄 (けいちょうふはく) | 浮ついた態度全般 | 一人でも当てはまる |
| 付和雷同 (ふわらいどう) | 同調するという行動 | 流される相手が要る |
対義語
「軽佻浮薄」とは対照的に、落ち着きと重みのある人柄を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 剛毅朴訥(ごうきぼくとつ):
意志が強く、飾り気がなく口数の少ないこと。 - 質実剛健(しつじつごうけん):
飾り気がなく真面目で、心身ともに強くたくましいこと。 - 謹厳実直(きんげんじっちょく):
きわめて慎み深く、真面目で誠実なこと。
英語表現
frivolous
真面目に扱うべきことを軽く受け流す態度を指す語。
I am tired of his frivolous attitude.
(彼の軽佻浮薄な態度にはうんざりしています。)
flighty
気持ちがころころ変わって落ち着かない様子を表す語。
She is too flighty to be trusted with this task.
(彼女は軽佻浮薄すぎて、この仕事は任せられません。)
「軽佻浮薄」の「佻」だけが常用漢字表にない
「軽」「浮」「薄」の三字はいずれも常用漢字表に入っていますが、「佻」だけが入っていません。
常用漢字表とは、法令や新聞などで漢字を使うときの目安として国が定めた表のことです。
そのため新聞では「軽ちょう浮薄」のように、一字だけ仮名に開いた形で組まれることがあります。
四字熟語の中で一字だけ見慣れない字が混じるという構えが、この語の書きにくさと結びついています。









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