身体の病気は治療できても、その人の身に染み付いた悪癖や性格上の欠点は容易には直らないという人間の性質を表すのが、
「病は治るが癖は治らぬ」(やまいはなおるがくせはなおらぬ)です。
意味
病は治るが癖は治らぬは、医師や薬の力で身体の病気は治療できても、長年繰り返して身に染み付いた性格や悪癖を矯正するのははるかに難しいという意味です。異形として「病は直るが癖は直らぬ」とも書きます。
語源・由来
古くから人々の間で経験則として用いられており、養生すれば回復の見込みがある身体の病気に比べ、人間の根深い性根や悪癖は何度痛い目を見ても繰り返してしまうという、習慣の頑固さを嘆いた実感から定着しました。
使い方・例文
「病は治るが癖は治らぬ」は、人の性格や悪癖が簡単には変わらないという事実を指摘し、諦めや批判を表す場面で使われます。
- 何度もギャンブルに手を出す彼に、病は治るが癖は治らぬと呆れる。
- 悪口ばかり言う相手を注意しても、病は治るが癖は治らぬで無駄だ。
- 病は治るが癖は治らぬと言うが、この短気な性格だけは直したい。
類義語・関連語
「病は治るが癖は治らぬ」と似た意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 三つ子の魂百まで(みつごのたましいひゃくまで):
幼少期に形成された性格や性質は、百歳になっても変わらないという人間の不変性。 - 雀百まで踊り忘れず(すずめひゃくまでおどりわすれず):
雀の歩き癖は死ぬまで直らないように、若い頃に身についた習慣は一生抜けないたとえ。 - 噛む馬は終いまで噛む(かむうまはしまいまでかむ):
人に噛みつく馬の癖が直らないように、一度ついた悪癖は容易に直らないたとえ。
対義語
「病は治るが癖は治らぬ」と反対の意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 男子三日会わざれば刮目して見よ(だんしみっかあわざればかつもくしてみよ):
努力する人は、三日会わないだけでも見違えるほど大きく成長しているという教え。 - 氏より育ち(うじよりそだち):
生まれつきの血筋よりも、育てられ方や環境のほうが人間形成に大きく影響する真理。
英語表現
old habits die hard
意味:長年の古い習慣を断ち切ることは非常に難しいという現象
- 例文:
I tried to quit smoking, but old habits die hard.
禁煙しようと試みましたが、古い習慣はなかなか抜けません。
a leopard cannot change its spots
直訳:ヒョウはその斑点を変えることはできない
意味:生まれ持った本性や悪癖は本人が変えようとしても変えられないという現象
- 例文:
He will cheat again, because a leopard cannot change its spots.
彼はまた浮気をするでしょう、持って生まれた本性は変えられませんから。
癖を断てない理由は、脳にある
人間の行動の多くは、無意識の習慣によって支配されています。
脳はエネルギー消費を抑えるために、一度身についた行動パターンを自動化する性質を持っており、心理学ではこれを「自動性」と呼びます。
身体の病気は外部からのウイルスや物理的な損傷が原因であるため、薬や手術による直接的な介入が可能です。
一方、悪癖は脳の神経回路に深く組み込まれた習慣プログラムであり、意志の力だけで上書きすることは容易ではありません。
新しい行動パターンを定着させるには、古い回路に対抗できるほど繰り返しの実践を積み重ねることが必要とされています。









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