獅子搏兎

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四字熟語 故事成語
獅子搏兎
(ししはくと)

5文字の言葉し・じ」から始まる言葉

「これくらいなら、片手間で終わらせられるだろう」と高を括り、思わぬ失敗を招いてしまった。
そんな苦い経験は、誰しも一度はあるものです。
たとえ相手が小さく、物事が単純に見えたとしても、決して手を抜かずに全力を尽くす。
古くから伝わる知恵として、そんな姿勢を「獅子搏兎」(ししはくと)と言います。
油断が最大の敵であることを教える、力強い言葉です。

意味・教訓

「獅子搏兎」とは、容易なことに対しても全力を尽くして取り組むことを意味します。
百獣の王であるライオンが、小さなウサギを捕まえるときでさえ全力を出すという様子から生まれた言葉です。

  • 獅子(しし):ライオンのこと。
  • (はく):うつ、捕らえる、飛びかかるという意味。
  • (と):ウサギのこと。

「相手が弱いから」と手を抜けば、思わぬ反撃を受けたり、逃げられたりするかもしれません。
物事の大小にかかわらず、常に真剣勝負で挑むべきだという教訓が含まれています。

語源・由来

「獅子搏兎」の由来は、百獣の王であるライオンの習性にあります。
ライオンは獲物が巨大なゾウであっても、小さなウサギであっても、狩りの際には全く同じように全力を出し切るとされてきました。

この話は、仏教の経典である『涅槃経(ねはんぎょう)』などに「獅子王の法」として記されています。
獅子は何に対しても手加減をせず、その一撃に全ての力を込める。
その一切の妥協を許さない姿勢が、転じて「物事に対する誠実な構え」や「油断を戒める心得」として定着しました。

もともとは仏教的な「どんな小さな修行も疎かにしない」という教えが背景にありますが、現代ではより広く、仕事や学びにおける「全力投球」の重要性を説く際に使われています。

使い方・例文

「獅子搏兎」は、自分自身を律する場合や、周囲に油断しないよう忠告する場面でよく使われます。
特に「慣れた作業」や「簡単な課題」に取り組む際の心構えとして最適です。

例文

  • 算数の小テストだが、「獅子搏兎」の精神で一問ずつ丁寧に見直しをしよう。
  • 彼は町内会の清掃活動であっても、まさに「獅子搏兎」の勢いで徹底的に取り組む。
  • 弱小チームとの対戦だが、監督は獅子搏兎、ベストメンバーで挑むことを決めた。
  • 掃除当番だからといって手を抜かず、「獅子搏兎」の心で教室の隅々まで磨き上げる。

文学作品・メディアでの使用例

『吾輩は猫である』(夏目漱石)

明治時代の文豪、夏目漱石の代表作の中でも、この言葉が効果的に使われています。
主人公の「猫」が、獲物を狙う際の気構えや、登場人物の熱心すぎる(あるいは滑稽なまでの)集中力を描写する際に用いられました。

獅子搏兎(ししはくと)の勢をもってこの難関に当らなければならん」

誤用・注意点

「獅子搏兎」は「全力を出す」というポジティブな意味で使われますが、状況によっては「大げさすぎる」という皮肉に捉えられる可能性があります。

例えば、あまりにも些細な家庭内の揉め事に対して「獅子搏兎だね」と言うと、「そんな小さなことにムキになって」という冷ややかなニュアンスが含まれてしまうことがあります。
基本的には「誠実さ」や「真剣さ」を称える言葉ですが、使う相手や場面の深刻さには配慮が必要です。

また、「獅子兎」と書くのは間違いです。
「博」ではなく、捕らえるという意味の「搏」を用いるのが正解です。

類義語・関連語

「獅子搏兎」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 全力投球(ぜんりょくとうきゅう):
    持てる力のすべてを出し切って物事に当たること。
  • 牛刀をもって鶏を割く(ぎゅうとうをもってにわとりをさく):
    小さなことを処理するのに、大げさな手段を用いること。
  • 全力以赴(ぜんりょくいふ):
    ある目的のために、全力を注ぎ込むこと。中国の成語に由来する。

対義語

「獅子搏兎」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。

  • 油断大敵(ゆだんたいてき):
    注意を怠れば、必ず失敗を招くという戒め。
  • 高を括る(たかをくくる):
    相手や状況を大したことはないと甘く見ること。
  • 手抜き(てぬき):
    すべき手順や努力を省いて、いい加減に済ませること。

英語表現

「獅子搏兎」を英語で表現する場合、以下の言葉が適しています。

Use a sledgehammer to crack a nut

  • 意味:「ナッツを割るのに大型ハンマーを使う」
  • 解説:小さな物事に対して、非常に大きな力や手段を用いる様子を表します。日本語の「牛刀をもって鶏を割く」に近いニュアンスですが、転じて「一切の手抜きをしない」という意味でも使われます。
  • 例文:
    We shouldn’t use a sledgehammer to crack a nut, but being careful is important.
    (ナッツを割るのにハンマーを持ち出す必要はないが、慎重であることは大切だ。)

Take something seriously

  • 意味:「物事を真剣に受け止める」
  • 解説:対象が何であれ、真面目に取り組む姿勢を示す最も一般的な表現です。
  • 例文:
    He takes every task seriously, no matter how small it is.
    (彼はどんなに小さな仕事であっても、常に真剣に取り組む。)

まとめ

どんなに小さなことでも、心を込めて全力を尽くす。
「獅子搏兎」という言葉は、私たちの生活の中に潜む「慢心」や「油断」を鋭く指摘してくれます。
目の前の課題に真摯に向き合うその姿勢こそが、大きな成果や信頼を築くための第一歩になることでしょう。
何事にも「本気」で挑む格好良さを、この言葉は教えてくれているのかもしれません。

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