意味
「多事多難(たじたなん)」とは、事件が多く(多事)、次々と困難や厄介な事態(多難)が重なり合っている状態をいいます。
- 多事(たじ):事件が多いこと。
- 多難(たなん):災難や困難、苦労が多いこと。
単に出来事が多いだけでなく、「解決すべき厄介な問題やトラブルが山積している」という、差し迫った厳しい響きがあります。
語源・由来
「多事多難」は、「多事」と「多難」という、それぞれ独立した熟語を組み合わせることで、状況の深刻さを強調した言葉です。
使い方・例文
「多事多難」は、個人の生活から組織の運営まで、問題が次々と起きて対応に苦慮している状況に対して使われます。
「充実して忙しい」という前向きな場面には使いません。
- 新規事業はトラブルが重なり、多事多難な幕開けとなった。
- 複数の計画が同時に遅延し、今の部署は多事多難な状況だ。
- 多事多難な一年だったが、家族で協力して乗り越えられた。
誤用・注意点:「多事多端」との混同に注意
「多事多難」とよく似た言葉に「多事多端(たじたたん)」があります。
「多端」は「項目(やること)が多いこと」を指し、全体として単に「とても忙しい」という意味です。
ここに「災難」や「苦労」といった悪いことは含まれません。
「多事多難」には「災難ばかりで大変だ」という嘆きの響きが含まれます。
そのため、相手が精力的に飛び回って活躍している様子を指して「多事多難ですね」と声をかけると、「不幸や災難続きですね」という意味になり大変失礼にあたります。
単に忙しいことをねぎらうなら、「多事多端」が合います。
類義語・関連語
「多事多難」と似た意味を持つ言葉には、次のようなものがあります。
- 前途多難(ぜんとたなん):
これから先に多くの困難や災難が待っていること。「多事多難」が現在直面している状況や過去の振り返りに使われるのに対し、こちらは「未来」に焦点が当たる。 - 内憂外患(ないゆうがいかん):
組織や国の内部に心配事があり、さらに外部からも困難が押し寄せていること。 - 波瀾万丈(はらんばんじょう):
変化が極めて激しく、劇的な出来事や苦労が次々と起こること。 - 暗雲低迷(あんうんていめい):
悪い状態が続き、好転の兆しが見えない不安な状況のこと。
対義語
事件や困難がなく、穏やかな状態を表す言葉です。
- 平穏無事(へいおんぶじ):
変わったことやトラブルが何も起きず、穏やかな様子。 - 天下泰平(てんかたいへい):
世の中が平和で、争いごとや騒ぎがなくよく治まっていること。 - 安穏無事(あんのんぶじ):
変わったこともなく、世の中や日々の暮らしが穏やかなこと。
英語表現
「多事多難だ(次々と問題が起きる)」を英語で表現する場合、日常会話では one thing after another、改まった書き言葉では fraught with difficulties のような表現が使われます。
one thing after another
次から次へと(厄介なことが起こる)という意味。
トラブルや困難が立て続けに起こり、息をつく暇もない「多事多難」な状況を表現する際、日常会話でよく使われる定型表現。
It’s been one thing after another this week.
(今週は次から次へと問題が起き、多事多難だった。)
fraught with difficulties
困難に満ちているという意味。
「fraught with 〜」で「〜に満ちている、〜をはらんでいる」という意味を持ちます。
状況や計画が、多くの問題や危険を抱えている切迫した状態を表す表現です。
The current situation is fraught with difficulties.
(現在の状況は多事多難である。)
『火の柱』は明治三十六年の大晦日を「多事多難」で書き出した
木下尚江の小説『火の柱』(1904年)の「十五」の章は、次の一文で始まります。
多事多難なりける明治三十六年も今日に尽きて、今は其の夜にさへなりにけり、寺々には百八煩悩の鐘鳴り響き、各教会には除夜の集会開かる、
(多事多難であった明治三十六年も今日で終わり、もうその夜になった。寺々には百八煩悩の鐘が鳴り響き、各教会では除夜の集会が開かれる。)
明治三十六年(1903年)の大晦日、除夜の鐘が鳴る夜に、過ぎた一年をまとめて言う言葉として使われています。
今も年の暮れに「多事多難の一年だった」と振り返る使い方をします。









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