一つのトラブルを解決したと思えば、また別の問題が舞い込んでくる。
そんな息つく暇もないほど、困難が次から次へと押し寄せてくる時期があるものです。
平穏とは程遠く、翻弄される日々。
まさに「多事多難」(たじたなん)という状況に置かれたとき、私たちは自らの忍耐力を試されているのかもしれません。
意味
「多事多難」とは、多くの事件や解決すべき問題が起こり、さらに多くの困難が重なっている状態を指します。
平穏無事な状態とは対極にあり、休まる暇もなく慌ただしい状況を表す言葉です。
- 多事(たじ):事件や解決しなければならない事柄が多いこと。
- 多難(たなん):災難や困難、苦労が多いこと。
語源・由来
「多事多難」の由来は、特定の故事成語や出典があるわけではなく、「多事」と「多難」という二つの熟語を組み合わせることで、その深刻さを強調した表現です。
古くから、国家や組織の情勢が不安定で、内外に問題を抱えている混沌とした状況を描写するために使われてきました。
現代でも、個人の生活から社会情勢まで、複雑に問題が絡み合っている様子を伝える言葉として定着しています。
なお、江戸いろはかるた等の読み札にこの言葉が採用されている例もありますが、かるたが起源ではなく、あくまで有名な熟語として収録されたことでより広く知られるようになりました。
使い方・例文
「多事多難」は、主に組織の状況や社会情勢、または個人の多忙で困難な時期を表現する際に使われます。
単に「忙しい」というだけでなく、そこに「困難や苦労」が伴っているニュアンスが含まれます。
例文
- 会社が合併した直後は、システム統合や人事の問題で、まさに「多事多難」な日々だった。
- 昭和から平成へと時代が移り変わる時期は、日本にとって「多事多難」な局面が多かった。
- 引越しと子供の入学準備が重なり、我が家は今、多事多難な状況にある。
- 「多事多難」な一年だったが、家族全員が健康で終えられたことに感謝したい。
文学作品・メディアでの使用例
『虞美人草』(夏目漱石)
明治時代の混乱や人々の葛藤を描いた本作の中で、社会の複雑な様相を象徴する言葉として登場します。
此多事多難の折柄、よくもこれほどに暢気な顔をして歩けるものだ。
誤用・注意点
「多事多難」は、自分自身の状況を謙遜して伝えたり、社会的な混乱を嘆いたりする際に使われる言葉です。
よく似た言葉に「多事多端(たじたたん)」がありますが、こちらは「非常に忙しいこと」に重きが置かれています。
一方で「多事多難」は、「困難や災難」というマイナスの要素が強く含まれるため、単に仕事が忙しくて充実しているような場面で使うのは不適切です。
また、目上の人の活躍に対して「多事多難ですね」と言うと、「災難ばかりで大変ですね」という失礼な響きになりかねないため、使用する文脈には注意が必要です。
類義語・関連語
「多事多難」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 多事多端(たじたたん):
事件や用事が多く、非常に忙しいこと。 - 内憂外患(ないゆうがいかん):
組織の内部に心配事があり、さらに外部からも困難が押し寄せていること。 - 波瀾万丈(はらんばんじょう):
変化が激しく、劇的な出来事や苦労が次々と起こること。 - 暗雲低迷(あんうんていめい):
悪い状態が続き、好転の兆しが見えない不安な状況。
対義語
「多事多難」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 無事安穏(ぶじあんおん):
変わったこともなく、穏やかで落ち着いていること。 - 天下泰平(てんかたいへい):
世の中が平和で、何の騒ぎもなく治まっていること。 - 平穏無事(へいおんぶじ):
変わったことが起こらず、穏やかなさま。
英語表現
「多事多難」を英語で表現する場合、以下のフレーズが適しています。
Eventful and difficult
- 意味:「波乱に満ちていて困難な」
- 解説:多くの出来事が起こり(eventful)、かつ困難である(difficult)という直訳に近いニュアンスです。
- 例文:
It has been an eventful and difficult year for our company.
(わが社にとって、今年は多事多難な一年であった。)
Fraught with difficulties
- 意味:「困難に満ちた」
- 解説:状況が厳しく、多くの問題が詰まっている様子を強調する表現です。
- 例文:
The path to success is fraught with difficulties.
(成功への道のりは多事多難である。)
まとめ
多くの出来事と困難が重なることを意味する「多事多難」。
この言葉が使われる状況は決して楽なものではありませんが、それだけ多くの経験を積み、変化の渦中にいる証拠とも言えます。
嵐のような日々を通り抜けた先には、以前よりも強く成長した新しい自分が待っている。
そう考えることで、目の前の荒波を乗り越える一助になることでしょう。






コメント