厳しい寒さがいつまでも続くように感じても、季節は必ず巡ります。
冷たい風にさらされ、先が見えない時間は、人生の踏ん張りどころとよく似ています。
そんな時に思い出したいのが、「冬来たりなば春遠からじ」(ふゆきたりなばはるとおからじ)です。
意味・教訓
「冬来たりなば春遠からじ」とは、今はどれほど苦しい状況であっても、じっと耐え抜けば必ず明るい幸せな時期がやってくるという教訓です。
自然界において冬の次に必ず春が訪れるように、人生の不幸や逆境も永遠には続かないことを説いています。
絶望の淵にいる人を力づけ、前向きな忍耐を促す言葉として使われます。
語源・由来
「冬来たりなば春遠からじ」の語源は、1819年に発表されたイギリスの詩人シェリーの詩『西風に寄せる歌』の最後の一節にあります。
原文は「If Winter comes, can Spring be far behind?」という一文です。
当時のイギリスの閉塞感を背景に、革命的な情熱と希望を歌い上げたこの詩が、明治時代以降に日本へ伝わりました。
「来たりなば」という古風で格調高い日本語に訳されたことで、日本のことわざの一つとして深く定着しました。
使い方・例文
「冬来たりなば春遠からじ」は、試験勉強、病気療養、不況下での経営など、出口の見えない努力や我慢を続けている場面で使用されます。
例文
- 厳しい練習に励む選手たちに、冬来たりなば春遠からじと声をかける。
- 受験生時代、机の前に冬来たりなば春遠からじと書いた紙を貼っていた。
- 事業の失敗で落ち込む友人を、冬来たりなば春遠からじと励ます。
- 怪我で休職中だが、冬来たりなば春遠からじを信じてリハビリに励む。
誤用・注意点
「冬来たりなば春遠からじ」は、精神的・社会的な逆境を乗り越える文脈で使われる言葉です。
そのため、単なる季節の移り変わりや、「もうすぐ暖かい春ですね」といった時候の挨拶として使うのは不適切です。
また、「来たりなば(もし冬が来たならば)」という仮定の形をとっていますが、基本的には「すでに厳しい状況(冬)に直面している」人に対して使われます。
類義語・関連語
「冬来たりなば春遠からじ」と似た意味を持つ、定着した言葉を紹介します。
- 一陽来復(いちようらいふく):
冬が去り春が来ること。転じて、長く続いた不運が終わり、ようやく幸運に向かうことを意味します。 - 待てば海路の日和あり(まてばかいろのひよりあり):
今は海が荒れていても、じっと待てば必ず出航に適した穏やかな日和が訪れるという意味です。 - 禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし):
幸福と不幸は、より合わせた縄のように交互にやってくるものであるという教えです。 - 石の上にも三年(いしのうえにもさんねん):
冷たい石でも、三年間座り続ければ温まる。辛くても辛抱強く努力を続ければ、必ず報われるという教訓です。
対義語
「冬来たりなば春遠からじ」とは対照的に、絶頂期の終わりや予期せぬ暗転を警告する言葉です。
- 好事魔多し(こうじまおおし):
良いことには、とかく邪魔が入りやすいということ。
順調な時こそ注意が必要だという戒めです。 - 一寸先は闇(いっすんさきはやみ):
ほんの少し先のことでも、何が起こるか全く予測できないこと。
今の平穏がいつ壊れるか分からない不安を表します。 - 盛者必衰(じょうしゃひっすい):
勢いが盛んな者も、必ず衰える時が来る。
世の無常を説く言葉です。
英語表現
「冬来たりなば春遠からじ」を英語で表現する場合、以下の定型句が用いられます。
If Winter comes, can Spring be far behind?
「冬が来たならば、春がそれほど遅れることがあろうか」という意味の反語表現です。
シェリーの詩の原文そのものであり、最も忠実な表現です。
- 例文:
Don’t lose hope. If Winter comes, can Spring be far behind?
希望を捨てないで。冬が来たなら、春はすぐそこだよ。
Every cloud has a silver lining.
「どんな雲も裏側は銀色に光っている」という直訳から、どんな困難な状況にも必ず希望の兆しがあることを意味します。
- 例文:
I know it’s hard, but remember that every cloud has a silver lining.
辛いのは分かるけれど、どんな悪いことにも必ず良い側面があることを忘れないで。
まとめ
どんなに長く冷たい夜も、明けぬ夜はありません。
「冬来たりなば春遠からじ」という言葉は、心が折れそうな時、静かに寄り添い、再び前を向くための力を与えてくれます。
今の苦しみには必ず終わりがあり、その先には耐え抜いたからこそ味わえる温かな日々が待っている。
そう信じることで、目の前の困難も、次なる成長への一歩と言えるのかもしれません。








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