人生において、地位や名声、高価な品々を手に入れる機会はあっても、それらが心の底から満たしてくれるとは限りません。
目に見える富をいくら積み上げても、わが子の健やかな成長や笑顔に勝る喜びはない。
そんな親としての深い実感を、「子に過ぎたる宝なし」(こにすぎたるたからなし)と言います。
意味・教訓
「子に過ぎたる宝なし」とは、子どもはこの世のどんな財宝よりも価値があるという意味の言葉です。
「過ぎたる」とは、それ以上のものがないという最上級の表現です。
金、銀、宝石といった高価なものをいくら集めても、わが子の存在がもたらす幸福には到底及ばないという、親心の尊さを説いています。
語源・由来
「子に過ぎたる宝なし」の原典は、日本最古の歌集である『万葉集』に収められた山上憶良(やまのうえのおくら)の短歌です。
「銀(しろかね)も金(くがね)も玉も何せむに勝れる宝子にしかめやも」と詠まれており、どんな財宝もわが子の尊さには勝らないと説きました。
病に伏せる子を想う親の切実な愛情が込められたこの歌の精神が、時代を経て簡潔なことわざとして定着しました。
使い方・例文
「子に過ぎたる宝なし」は、子どもの存在に救われた時や、家族の絆を何よりも優先すべきだと語る場面で使われます。
例文
- 子に過ぎたる宝なしと言う通り、わが子の寝顔を見れば疲れも吹き飛ぶ。
- 貧しい暮らしの中でも、子に過ぎたる宝なしを支えに懸命に働き続けた。
- 退職金よりも孫の笑顔が嬉しく、まさに子に過ぎたる宝なしだと実感する。
類義語・関連語
「子に過ぎたる宝なし」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 掌中の珠(しょうちゅうのたま):
手のひらにある宝石のように、最愛の子どもをきわめて大切にするたとえ。 - 膝元の宝(ひざもとのたから):
自分のそばにいるわが子こそが、最高の宝物であるということ。 - 這えば立て、立てば歩めの親心(はえばたて、たてばあゆめのおやごころ):
子の成長をひたすら願い、慈しむ親の尽きない愛情のこと。
対義語
「子に過ぎたる宝なし」とは対照的な意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 子は三界の首枷(こはさんがいのくびかせ):
親は子を想う気持ちに縛られ、一生自由を妨げられるということ。 - 子宝は身の毒(こだからはみのどく):
子を養い育てるための心労や苦労が、親の心身を疲れさせてしまうこと。 - 貧乏人の子沢山(びんぼうにんのこだくさん):
貧しい家に限って子が多く、ますます生活が苦しくなるという皮肉。
英語表現
「子に過ぎたる宝なし」を英語で表現する場合、以下の定型句が使われます。
Children are a poor man’s riches
意味:子どもは貧しい人の富である。
金銭的な富を持たない人にとっても、子どもこそが最大の幸福であり、何よりの資産であるというニュアンスです。
- 例文:
He has little money, but children are a poor man’s riches.
彼にお金はないが、子に過ぎたる宝なしと言うように、子どもたちが何よりの財産だ。
まとめ
「子に過ぎたる宝なし」は、時代や文化を超えて、親が子を思う気持ちの深さは変わらないということを力強く物語っています。
財産や名声など、人が一生をかけて追い求めるものはさまざまあります。
しかしこの言葉は、どんな時代においても、親にとって子供という存在がいかに絶対的なものであるかを改めて教えてくれます。
そのひたむきな愛情の深さは、親子関係を超えて、多くの人の心に響くものがあるのではないでしょうか。









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