平穏な日々の中に、ある日突然、重大な危機が持ち上がる場面を指すのが、「一朝有事」(いっちょうゆうじ)です。
意味
「一朝有事」とは、ひとたび重大な事態や危機が起こった場合という意味です。
普段の備えや心構えの大切さを説く文脈で使われることが多く、緊張感を伴う響きを持つ言葉です。
- 一朝(いっちょう):ある日、突然に。
- 有事(ゆうじ):重大な事態が起こること。
語源・由来
「一朝有事」は、特定の古典の故事に由来する四字熟語ではなく、「ある日突然」を意味する「一朝」と、「重大な事態」を意味する「有事」という二つの言葉を組み合わせた表現です。
「有事」はもともと「事有り」、つまり戦や災害など、通常とは異なる重大な出来事が起きている状態を指す言葉で、平時と対比させて使われてきました。
そこに「思いがけず、突然に」という意味を持つ「一朝」を重ねることで、備えのない状態で危機が訪れる緊迫感を強めた言い回しとして定着しています。
使い方・例文
「一朝有事」は、災害や紛争など、重大な事態が突然発生した際の対応や備えについて語る場面で使われます。
- 一朝有事に備え、避難経路を家族で確認しておく。
- 一朝有事の際は、この番号に連絡してください。
- 平時から一朝有事を想定した訓練を重ねている。
- 一朝有事となれば、地域の協力が欠かせない。
類義語・関連語
「一朝有事」と同じく、突然の重大な出来事に備える考え方を表す言葉には、以下のようなものがあります。
- 備えあれば憂いなし(そなえあればうれいなし):普段から準備をしておけば、いざという時にも心配がないという教え。
- 不測の事態(ふそくのじたい):予測できない、思いがけない出来事。
対義語
「一朝有事」とは反対に、穏やかで何事もない状態を表す言葉があります。
- 平穏無事(へいおんぶじ):穏やかで、変わったこともなく過ぎていくこと。
英語表現
in case of emergency
緊急事態が起きた場合に、という意味を持つ定型的な表現。重大な事態への対応を述べる場面と重なる。
In case of emergency, please follow the evacuation signs.
(一朝有事の際は、避難誘導のサインに従ってください。)
「一朝」に込められた“わずかな間”という感覚
「一朝有事」の「一朝」は、漢文の世界で古くから使われてきた言葉です。
『論語』の顔淵篇には、「一朝の忿りにその身を忘れ、以てその親に及ぼす」という一節があり、ほんのわずかな怒りにかられて我を忘れ、身の破滅を招くことを戒めています。
ここでの「一朝」は、実際の一日の朝を指すのではなく、「ほんの短い間」「ふとした瞬間」という意味で使われており、「一朝有事」の「一朝」も同じ感覚を受け継いでいます。
突然の出来事は、まさに「一朝」というわずかな時間のうちに訪れるものだと、この言葉は示しています。









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