恥ずかしくて今すぐどこかに隠れてしまいたい。そんな切迫した羞恥心を表すのが、
「穴があったら入りたい」(あながあったらはいりたい)です。
語源は約2200年前の中国にまで遡り、「穴」という具体的な逃げ場を想像させる表現が、時代を超えて使われ続けています。
意味
「穴があったら入りたい」は、非常に恥ずかしく、その場から逃げ出したり隠れたりしたいという心境という意味です。
穴があればその中に入って隠れてしまいたいほど、身の置き所がないような強い羞恥心を表します。
語源・由来
出典は、中国・前漢時代の思想家・賈誼(かぎ)がまとめた『賈誼新書(かぎしんしょ)』の故事です。
魯の地方領主・季孫(きそん)は、隣国・斉の侵攻に備えて町長の宓子(ふくし)に民を動員した麦の刈り取りを命じました。
しかし宓子は従わず、麦は敵に奪われてしまいます。問い質した季孫に宓子は
「怠けていた者にまで麦を与えれば、また敵が来ればいいと思う心が根付く。麦は翌年また蒔けばよいが、曲がった心は直せない」
と答えました。
その深慮を知った季孫は己の浅はかさを恥じ、「穴があったら入りたい。宓子に合わせる顔がない」と言ったといいます。
使い方・例文
「穴があったら入りたい」は、自分の失敗や失態を人前に晒してしまい、ひどく恥をかいた場面で使われます。
- 違う人の車に乗り込んでしまい、穴があったら入りたいと思いました。
- 自信満々に披露した知識が間違いだと指摘され、まさに穴があったら入りたい気分です。
類義語・関連語
「穴があったら入りたい」と似た意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 顔から火が出る(かおからひがでる):
ひどく恥ずかしくて、顔が真っ赤になるということです。 - 身の縮む思い(みのちぢむおもい):
恐縮したり恥ずかしかったりして、体が小さくなるように感じることです。 - 赤面の至り(せきめんのいたり):
顔が赤くなるほど、この上なく恥ずかしいということです。 - 慚愧に堪えない(ざんきにたえない):
自分の見苦しさや過ちを深く恥じ、耐えられない状態のことです。
対義語
「穴があったら入りたい」と反対の意味を持つ言葉には、以下のものがあります。
- 厚顔無恥(こうがんむち):
恥知らずで、厚かましいということです。 - 鼻高高(はなたかだか):
誇らしげで、得意になっている様子です。
英語表現
I wish the ground would swallow me up.
意味:あまりの恥ずかしさに、地面に飲み込まれてしまいたいという心境を表す表現です。
「穴があったら入りたい」に最も近い英語表現として広く使われます。
- 例文:
When I called my teacher “Mom” in front of the whole class, I wished the ground would swallow me up.
クラス全員の前で先生を「お母さん」と呼んでしまい、穴があったら入りたかった。
I wanted to sink into the floor.
意味:恥ずかしさのあまり床に沈み込んでしまいたいという気持ちで、同様の場面でよく使われます。
- 例文:
When I realized I had been talking to the wrong person, I wanted to sink into the floor.
まったく別人に話しかけていたと気づいたとき、穴があったら入りたいと思った。









コメント