穴があったら入りたい

ことわざ 慣用句
穴があったら入りたい(あながあったらはいりたい)

12文字の言葉」から始まる言葉
穴があったら入りたい 【個別】ことわざ・慣用句・四字熟語

人前でとんでもない勘違いをしてしまったり、大勢の前で派手に転んでしまったり……。
そんな時、「もう、どこかへ隠れてしまいたい!」と強く思った経験はありませんか?
「穴があったら入りたい」という慣用句(ことわざとしても使われます)は、まさにそんな、身を隠したくなるほどの強い恥ずかしさを表現する言葉です。

今回は、誰もが一度は感じたことがあるかもしれない、この切実な気持ちを表す言葉の意味や使い方、関連する表現について見ていきましょう。

「穴があったら入りたい」の意味・教訓

「穴があったら入りたい」とは、恥ずかしさのあまり、その場から逃げ出して隠れてしまいたいほどである、という気持ちを表す慣用句です。

非常に強い羞恥心や、きまり悪さ、居たたまれなさ、身の置き所のない感情を表現する際に使われます。
「穴」とは、文字通り地面の穴などを指し、そこに身を潜めて人目から逃れたい、という願望が込められています。

この言葉は、失敗や恥ずかしい状況に対する人間の自然な反応を示すものであり、直接的な教訓というよりは、感情の強さを表現する比喩として用いられます。

「穴があったら入りたい」の語源

この慣用句の明確な語源や特定の出典は分かっていません。しかし、その意味するところは、言葉の表現そのものから理解できます。

人前でひどく恥ずかしい思いをした時に、「地面に穴でも掘って、その中に隠れてしまいたい」「誰の目にも触れない場所に逃げ込みたい」と感じる、強い衝動や心理状態が、そのまま言葉になったものと考えられます。

恥ずかしさから顔を隠したり、その場から逃げ出したくなったりするのは、人間の本能的な反応であり、それを「穴に入る」という具体的なイメージで表現した、分かりやすい比喩と言えるでしょう。

「穴があったら入りたい」が使われる場面と例文

この慣用句は、自分が非常に恥ずかしい思いをして、その場にいるのが耐えられない、と感じる様々な場面で使われます。独り言や心の中で呟くことも多い表現です。

  • 大勢の前で言い間違いや勘違いをしてしまった時
  • 自分の非常識な行動や失敗が露見(ろけん)した時
  • 秘密にしていたことが、思いがけず人に知られてしまった時
  • 場違いな服装や言動で、浮いてしまったと感じた時

例文

  • 会議中に居眠りしているところを社長に見られてしまい、穴があったら入りたい心境だった。
  • 得意先の前で派手に転んで、大事な書類をぶちまけてしまった。本当に穴があったら入りたい
  • 昔の恥ずかしい写真が、友人によってSNSで公開されてしまい、穴があったら入りたいと思った。

メディアでの使用例

漫画やアニメ、ドラマなどでは、登場人物がコミカルな失敗をしたり、恋愛絡みで恥ずかしい状況に陥ったりした際のモノローグ(心の声)やセリフとして、「穴があったら入りたい!」という表現がよく使われます。

「穴があったら入りたい」の類義語・関連語

強い恥ずかしさや、その場に居づらい気持ちを表す、似た意味を持つ言葉や関連する表現です。

  • 身の置き所がない:恥ずかしさや居心地の悪さのために、落ち着いていられない気持ち。どこにいたら良いか分からないさま。
  • 顔から火が出る:非常に恥ずかしい思いをして、顔がカッと熱くなり赤くなるさま。
  • 赤面の至り:この上なく恥ずかしいこと。恥ずかしさの極み。
  • 慚愧に堪えない(ざんきにたえない):自分の行いを恥じて、心が痛み、じっとしていられない気持ち。より深い反省や後悔を伴う場合に使われることが多い。
  • きまり悪い / ばつが悪い:体裁が悪く、恥ずかしい気持ち。
  • 羞恥心:恥ずかしいと感じる心。

「穴があったら入りたい」の対義語

「穴があったら入りたい」と感じる恥ずかしさとは反対の、誇らしい気持ちや、恥じらいのない態度を示す言葉です。

  • 誇らしい:名誉に感じて、得意であるさま。
  • 得意満面(とくいまんめん):成功などを非常に得意に思い、その満足感が顔全体にあふれているさま。
  • ふてぶてしい / 厚かましい:人目を気にせず、ずうずうしく、恥じる様子がないさま。
  • 臆面もない(おくめんもない):恥ずかしがったり、気後れしたりする様子が少しもないさま。平然としているさま。
  • 平気の平左(へいきのへいざ):少しも気にせず、平気でいるさま。けろりとしているさま。

これらの言葉は、「穴があったら入りたい」が示す強い羞恥心とは対照的に、自信や得意な気持ち、あるいは恥を感じない図太さなどを表します。

「穴があったら入りたい」の英語での類似表現

英語にも、強い恥ずかしさから隠れたい、という気持ちを表す表現があります。

  • I wish the ground would swallow me up. / I wish the earth would open up and swallow me.
    • 意味:「地面が私を飲み込んでくれればいいのに」/「地面が(口を)開けて私を飲み込んでくれればいいのに」。
      文字通り「穴に入りたい」というニュアンスに非常に近く、強い恥ずかしさを表す定番の表現です。
  • I wanted to disappear.
    • 意味:「消えてしまいたかった」。その場からいなくなりたい、という気持ちを直接的に表します。
  • I was so embarrassed.
    • 意味:「とても恥ずかしかった」。感情をストレートに表現する言い方です。
  • Mortified.
    • 意味:「(形容詞)非常に恥ずかしい思いをした、屈辱を感じた」。embarrassed よりも強い恥ずかしさや屈辱感を表します。

まとめ – 誰にでもある恥ずかしい気持ち

「穴があったら入りたい」は、私たちが強い恥ずかしさを感じた時に、思わずその場から隠れてしまいたいと願う、切実な気持ちを的確に表現した慣用句です。

誰にでも失敗や勘違いはありますし、恥ずかしい思いをすることは避けられないかもしれません。
そんな時、この言葉は私たちの素直な感情を代弁してくれます。もちろん、いつまでも恥ずかしさに囚われているわけにはいきませんが、「穴があったら入りたい」と感じるほどの経験も、後から振り返れば笑い話になったり、人間味あふれるエピソードになったりすることもあるでしょう。

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