富というものは一箇所に留まることなく、社会を絶えず巡り、人から人へと手渡されていくものです。
今は手元に多くあってもいつかは離れ、逆に今は乏しくてもいずれ戻ってくる。
そんなお金の流動性を、「金は天下の回り物」(かねはてんかのまわりもの)と言います。
意味
「金は天下の回り物」とは、金銭は一か所にとどまらず、常に世の中を巡って人から人へと渡っていくものだという意味です。
今お金を持っていてもいつか失うかもしれず、逆に今貧しくてもいつか自分の元へ巡ってくるかもしれないという、お金の流動性を説いています。
執着しすぎることへの戒めや、損失を過度に恐れないための楽観的な心構えを教える言葉です。
語源・由来
「金は天下の回り物」の由来は、江戸時代の町人社会における経済観念にあります。
商業が飛躍的に発展した当時、お金が社会の血液のように循環する様子を見て、人々はそれを「回り物」と呼びました。特定の人物や書物に出典があるわけではなく、庶民の生活実感から生まれた言葉です。
「お金は天下(社会全体)の共有財産であり、個人の元には一時的に滞在しているだけだ」という、江戸っ子らしいおおらかな気質や知恵が反映されています。
使い方・例文
大きな買い物をした時や、予期せぬ出費で落ち込む人を慰める場面、あるいは景気循環を語る際に用いられます。
例文
- 盗まれた財布のことは諦めよう。金は天下の回り物だ。
- 金は天下の回り物と言うし、たまには贅沢も必要だ。
- 損をしたと嘆く友人に、金は天下の回り物だよと励ます。
- 金は天下の回り物だから、貯め込むより有効に使いたい。
類義語・関連語
「金は天下の回り物」と似た意味を持つ、お金の移ろいやすさを表す言葉です。
- 富は浮き雲の如し(ふはうきぐものごとし):
富は空の雲のように定まらず、移ろいやすいというたとえ。 - 金は湧き物(かねはわきもの):
お金は泉のようにどこからか自然と湧いてくるものだという考え。 - 地獄の沙汰も金次第(じごくのさたもかねしだい):
お金の力が絶大であることを説く言葉。※お金の影響力を語る文脈で対照的に用いられます。
対義語
お金を動かさず、自分の元に留めようとする姿勢を表す言葉です。
- 守銭奴(しゅせんど):
金銭を貯め込むことに執着し、使うのを極端に嫌う人のこと。 - 財布の紐が固い(さいふのひもがかたい):
無駄な支出を抑え、お金を使わないように節約すること。
英語表現
「金は天下の回り物」を英語で表現する場合、お金の出入りの激しさを表すフレーズが使われます。
Money comes and goes.
「お金はやって来ては去っていくもの」という、日本語のニュアンスに最も近い一般的な表現です。
- 例文:
Don’t cry over the loss; money comes and goes.
(失ったお金を嘆くな。金は天下の回り物だよ。)
What goes around comes around.
「巡り巡って返ってくる」という意味です。主に因果応報を指しますが、お金の循環についても使われます。
- 例文:
Generosity is good; what goes around comes around.
(気前よくするのは良い。金は天下の回り物だからね。)
江戸の粋と宵越しの金
「金は天下の回り物」という考え方は、「宵越しの銭は持たない」と言われた江戸っ子の心意気とも深く結びついています。
お金を貯め込むことを「粋ではない」とし、景気よく使うことで社会を回そうとする精神は、当時の都市経済を支えるエネルギーでもありました。
現代においても、一か所にお金が滞るデフレ状況を打破する考え方として、この言葉の持つ「循環」の意識は一つのヒントになるかもしれません。
まとめ
「金は天下の回り物」は、お金を単なる所有物ではなく、社会を巡るエネルギーとして捉える知恵です。
今手元にある富に傲らず、また失った富に絶望もしない。お金は常に動いているという真理を受け入れることで、より豊かで軽やかな心持ちになれることでしょう。
使うべき時に気持ちよくお金を送り出すことは、巡り巡って自分や社会を輝かせる新しい力になることでしょう。






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