「お風呂から上がるの、ずいぶん早いね! まるで烏の行水みたいだ。」なんて言われたり、言ったりしたことはありませんか?
なんとなく意味はわかるけれど、なぜ「烏(からす)」なのでしょうか。
この記事では、「烏の行水」の意味や由来、使い方、そして関連する言葉などを分かりやすく解説していきます。
「烏の行水」の意味・教訓
「烏の行水(からすのぎょうずい)」とは、お風呂に入る時間が非常に短いことのたとえです。
湯船にゆっくり浸からず、さっと体を洗うだけですませたり、シャワーだけで済ませたりする様子を指します。
カラスが水浴びをする時の様子に由来する表現で、特に深い教訓を含むというよりは、入浴時間の短さを言い表す比喩として使われます。
状況によっては、落ち着きがない、慌ただしいといったニュアンスを含むこともあります。
「烏の行水」の語源 – なぜカラス?
このことわざの語源は、実際のカラスが水浴びをする様子にあります。
カラスは水辺に降り立つと、水に浸かるというよりは、体を水面に打ち付けるようにしてバシャバシャと水を浴び、羽づくろいなどをしたら、すぐに飛び立ってしまいます。
その水浴びの時間が非常に短いことから、入浴時間が短い人のことを「烏の行水」と呼ぶようになりました。
ちなみに「行水」は、本来は神仏への祈願や修行の前に、水を浴びて心身を清めることを指す言葉ですが、このことわざでは単に「入浴」や「水浴び」という意味で使われています。
「烏の行水」が使われる場面と例文
この言葉は、主に人の入浴時間が短いことを指して、日常会話で使われます。
- 家族や友人など、親しい間柄で、相手の入浴時間の短さを指摘する時(ややユーモラスに、あるいは軽く呆れるようなニュアンスで)。
- 自分の入浴時間が短いことを自嘲気味に言う時。
- 忙しくてゆっくりお風呂に入る時間がない状況を表す時。
- (比喩的に)物事への関わり方や滞在時間が非常に短いことを指す場合(稀な用法)。
例文
- 「もうお風呂から出てきたの? 本当に烏の行水なんだから。」
- 「冬でもシャワーだけなんて、まるで烏の行水だね。」
- 「今日は忙しかったから、烏の行水ですませちゃったよ。」
- 「彼はせっかちだから、お風呂もいつも烏の行水だ。」
「烏の行水」の類義語
「烏の行水」のように、入浴時間の短さを直接的に表すことわざや慣用句は、他にはあまり見当たりません。
「せっかち」「慌ただしい」といった性格や様子を表す言葉は関連しますが、直接的な類義語とは言えません。
「烏の行水」の対義語
- 長風呂:
意味:長い時間、お風呂に入っていること。
※ 「烏の行水」とは正反対の、入浴時間が長いことを示す最も一般的な言葉。 - ゆっくり、のんびり:
※ 入浴に限らず、時間をかけて落ち着いて行動する様子は、「烏の行水」の慌ただしさとは対照的。
「烏の行水」の英語での類似表現
英語にはカラスに例える表現はありませんが、入浴時間が短いことを示す言い方はあります。
- take a quick bath / take a quick shower
意味:さっとお風呂に入る/さっとシャワーを浴びる。最も一般的で直接的な表現。 - a splash and dash
意味:(直訳:バシャッとやって、さっと行く)文字通り、水しぶきを上げて(splash)すぐに走り去る(dash)ように、非常に短い時間で何かを済ませる様子。入浴だけでなく、他の短時間の滞在などにも使うことがある。
「烏の行水」に関する豆知識
カラスが水浴びをするのは、単に体をきれいにしているだけではありません。
羽についた寄生虫を落としたり、羽の手入れをして飛行能力を保ったり、暑い日には体温を調節したりする目的があると考えられています。
短時間に見えても、カラスにとっては大切な習慣なのです。
まとめ – 「烏の行水」の使い方には少し注意も
「烏の行水」は、入浴時間が短いことを、カラスの短い水浴びにたとえた、日常的で分かりやすい表現です。
その様子を思い浮かべると、少しユーモラスな感じもしますね。
ただし、人の入浴習慣について言う言葉なので、相手や状況によっては、少し失礼にあたる可能性もあります。
「もっとちゃんと体を洗ったら?」というような、清潔さを疑うニュアンスに受け取られないよう、親しい間柄であっても、使い方には少し注意を払うと良いでしょう。
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