意味
「前途遼遠」とは、距離のへだたりにも、時間のへだたりにも使える四字熟語です。
「遼遠」がその両方を指す語であるため、残りの道のりが長い場面にも、目標を果たすまでに時間がかかる場面にも用いられます。
「前途遼遠な計画」のように、形容動詞の形でも使われます。
- 前途(ぜんと):行く先。目的地までの道のり。
- 遼遠(りょうえん):はるかに遠く隔たっていること。
語源・由来
「前途遼遠」は、「前途」と「遼遠」という二つの漢語を組み合わせてできた言葉です。
「遼」も「遠」も、はるかに遠いことを表す字で、重ねることで隔たりの大きさを強めています。
日本語の文章では、明治期の小説『大策士』(1897年、福地桜痴)に「前途遼遠だに由て、其中またどんな変が起らうも知れませぬ」という一節が出てきます。
使い方・例文
「前途遼遠」は、始めたばかりの取り組みが目標にほど遠いと感じたときに使われます。
- 予算の半分も集まっておらず、開館までは前途遼遠だ。
- 日本語を習い始めたばかりで、自由な会話までは前途遼遠だ。
- 初日でこの進み具合では、前途遼遠な計画と言うほかない。
小説での使用例
『明暗』(夏目漱石)
分厚い本を前にして、読み終えるまでの遠さを感じる場面で使われています。
書物の厚味ばかりを苦にするように眺めた。すると前途遼遠という気が
類義語・関連語
「前途遼遠」と同じように、目標がまだ遠い状態を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 前途多難(ぜんとたなん):
目的を達するまでに、多くの困難が待ち受けていること。 - 日暮れて道遠し(ひくれてみちとおし):
期限が迫っているのに、目的までの道のりがまだ遠いこと。 - 暗中模索(あんちゅうもさく):
手がかりのないまま、解決策をあれこれ探し求めること。
「前途遼遠」と「前途多難」の違い
どちらも目標までの道のりを心細く語る言葉です。
分かれ目は遠さの理由で、「前途遼遠」は残りの道のりの長さを、「前途多難」は途中に待つ障害の多さを指します。
| 語句 | 遠さの理由 | 言いかえ |
|---|---|---|
| 前途遼遠 (ぜんとりょうえん) | 残りの道のりの長さ | まだ先が長い |
| 前途多難 (ぜんとたなん) | 途中に待つ障害の多さ | 困難が多い |
英語表現
a long way to go
目標までの残りが大きいことを、道のりのたとえで言い表す表現。
We still have a long way to go before the project is finished.
(計画が仕上がるまでは、まだ前途遼遠です。)
単独で使われてきた「遼遠」
「遼遠」は、四字熟語の一部としてだけでなく、単独でも使われてきた言葉です。
平安時代末の記録『兵範記』の仁安二年(1167年)の条に「院御所遼遠」という一節が出てきます。
これは御所までの道のりが遠いという意味で、距離をそのまま指しています。
中国の古典では『楚辞』の九章にも出てきますし、明治期の評論『真善美日本人』(1891年)には「遼遠なる域土」という言い方が使われています。









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