突然の停電で、真っ暗闇になった部屋。
スイッチはどこか、ドアはどこか。何も見えない中で、手だけを頼りにあちこち触れて探しまわる。
そのような不安で心細い状況を、人生や仕事の難局に重ね合わせた言葉が「暗中模索」(あんちゅうもさく)です。
手がかりがなく、どうすればいいのか分からない。
それでもじっとしているわけにはいかず、必死に解決策を探し求める。
そんな状況を表すこの四字熟語について、由来となった意外なエピソードや、似た意味を持つ「五里霧中」との決定的な違いを解説します。
意味
「暗中模索」とは、「手がかりのないまま、暗闇の中で手探りするように、あれこれと試みること」です。
文字通りの意味は以下の通りです。
- 暗中(あんちゅう):暗闇の中。
- 模索(もさく):手探りで探すこと。
転じて、解決の糸口が見つからない状況で、焦りや不安を感じながらも、なんとか前に進もうと色々な方法を試す様子を指します。
「暗中摸索」と書くこともあります(「摸」は「探る」という意味で、「模」と同義)。
語源・由来
「暗中模索」の由来は、中国・唐の時代の逸話集『隋唐嘉話(ずいとうかわ)』に登場する、許敬宗(きょけいそう)という人物のエピソードです。
許敬宗は、唐の太宗(皇帝)に仕えた高官でしたが、性格は傲慢で、人の顔を覚えるのが極端に苦手でした。
ある時、人が彼に「あなたの顔覚えの悪さは相当なものですね」と指摘しました。
すると許敬宗はこう言い返しました。
「あなたのような凡人の顔は覚えにくいが、もし曹植(そうしょく)や謝霊運(しゃれいうん)のような優れた人物に会ったなら、暗闇の中で手探りしてでも(暗中模索)、決して見損なうことはないだろう」
本来は「暗闇で触って分かるほど、優れた人物は見分けがつく」という、「人物を見抜く目」についての強気な発言でした。
しかし、そこから「暗中模索」という言葉だけが取り出され、現在のように「暗闇で手探りするように、方法を探し求める」という意味で使われるようになりました。
使い方・例文
新しいプロジェクトの立ち上げや、前例のないトラブルへの対処など、正解がわからず試行錯誤している状況で使われます。
「迷っている」というネガティブな意味だけでなく、「解決しようと努力している」という前向きなニュアンスも含んで使われることが多い言葉です。
例文
- 原因不明のエラーに対し、開発チームは連日「暗中模索」を続けている。
- 新しいマーケティング手法については、まだ「暗中模索」の段階だ。
- 何もかも初めての海外生活で、「暗中模索」しながらも少しずつ慣れてきた。
類義語・関連語
「暗中模索」と似た意味を持つ言葉には、以下のようなものがあります。
- 五里霧中(ごりむちゅう):
深い霧の中にいるように、物事の様子がわからず、方針が立たないこと。 - 試行錯誤(しこうさくご):
失敗を繰り返しながら、解決策に近づいていくこと。「暗中模索」よりも「とにかくやってみる」という行動性が強く、科学的な文脈でも使われます。
「暗中模索」と「五里霧中」の違い
どちらも「先が見えない」状況ですが、ニュアンスに明確な違いがあります。
- 暗中模索:
見えないながらも、「手探りで動いている(探している)」という行動に焦点があります。 - 五里霧中:
どちらに進んでいいか分からず、「途方に暮れている(立ち尽くしている)」という状態に焦点があります。
対義語
「暗中模索」とは対照的に、物事がはっきりしている状態を表す言葉です。
英語表現
「暗中模索」を英語で表現する場合、“grope”(手探りする)という動詞を使います。
grope in the dark
- 直訳:暗闇の中で手探りする
- 意味:「暗中模索する」
- 解説:日本語と全く同じ発想の表現です。
- 例文:
We are still groping in the dark for a solution.
(私たちはまだ解決策を求めて暗中模索している。)
まとめ
真っ暗闇の中で、手探りでものを探す「暗中模索」。
先が見えない状況は不安なものですが、この言葉には「模索する(=探す)」という能動的な意味が含まれています。ただ立ち尽くすのではなく、何か手がかりはないかと手を伸ばし続ける姿勢。
今は暗闇の中にいても、手探りを続けていれば、いつか必ず何かに触れ、スイッチが見つかる瞬間が来るはずです。



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