意味
「安心立命(あんしんりつめい)」とは、天命を知って心を平安に保ち、つまらないことに心を動かさないことです。
仏教、とくに禅宗では「あんじんりゅうみょう」と読み、悟りの境地に達して真の心の安らぎを得ることを指します。
- 安心(あんしん):心が落ち着いて、乱れないこと。
- 立命(りつめい):天から授かった本性をまっとうすること。
語源・由来
「安心」は仏教の語で、安らぎを得て落ち着いた心に達した境地を指します。
「立命」は儒教の『孟子』にある言葉からの転用で、天から授かった本性をまっとうすることを表します。
「安心立命」は、もとは儒教でいう語で、仏教では読みを変えて主に禅宗で用いられます。
日本語の文章では、幸田露伴の小説『いさなとり』(1891年)に「何程安心立命の地の定まらず頼みなき身を歎けばとて」という一節が出てきます。
使い方・例文
「安心立命」は、迷いが消えて心の置きどころが定まった状態を語る場面で使われます。
- 定年を迎え、祖父はようやく安心立命の境地に至った。
- 結果は天に任せると決め、いまは安心立命の心持ちだ。
- 何が起きても動じない、安心立命の人だったと聞く。
小説での使用例
『冬のかたみに』(立原正秋)
苦労を知らずに育った人物を評する場面で使われています。
すべて親からあたえられ、安心立命の境地にいるらしい
類義語・関連語
「安心立命」と同じように、心が乱れず落ち着いた状態を表す言葉には以下のようなものがあります。
- 泰然自若(たいぜんじじゃく):
落ち着き払っていて、何が起きても動じないこと。 - 明鏡止水(めいきょうしすい):
邪念が消えて澄みきった、静かな心境。 - 人事を尽くして天命を待つ(じんじをつくしててんめいをまつ):
できる限りを尽くしたら、あとは天の定めに任せるという教え。
「安心立命」と「泰然自若」の違い
どちらも動じない心を表しますが、目を向けているところが違います。
「安心立命」は身を天命に任せた心の置きどころを指し、「泰然自若」は出来事に直面したときの態度を指します。
| 語句 | 表すもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 安心立命 (あんしんりつめい) | 心の置きどころ | 生き方・境地 |
| 泰然自若 (たいぜんじじゃく) | 落ち着いた態度 | 事が起きた場面 |
「安心」は昔「あんじん」と濁って読んだ
「安心」は今では「あんしん」と読みますが、中世から近世にかけては「あんじん」と濁る読みが広く使われていました。
室町時代の『文明本節用集』や、イエズス会が長崎で出した『日葡辞書』(1603〜04年)も、みな「アンジン」の読みで載せています。
浄土教の「安心決定」にも、明治の文章では「あんしんけつじょう」と読ませた例があります。
福沢諭吉の『福翁自伝』(1899年)で、幼いころ「喜怒色に顕さず」(喜びや怒りを顔に出さない)という一句を読み、「大に自分で安心決定したことがある」と振り返る箇所です。
「安心立命」を禅宗で「あんじんりゅうみょう」と読むのも、この濁った古い読みのほうです。











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